進捗 互いが恋仲だったことを忘れる父水「ふむ……特に何も起きんようじゃな」
すり、と顎をさすりながらゲゲ郎が呟く。隣では、小さく「ああ」と相槌をよこした水木がゲゲ郎と共に、部屋に掲げられた看板を見ていた。
『相手のことを忘れる薬、10本飲まないと出られない部屋』
突如白い四角い部屋に閉じ込められた二人は、先程その、『相手のことを忘れる薬』とやらを半分ずつ飲み干したところである。
どうあっても出られない部屋。用意された薬。互いに自分が飲むと譲らず、妥協した結果のことだ。
仕方なしに薬を飲み干し、軽く記憶のすり合わせをしてみたものの特にこれといった問題は無さそうで、ほっと息を吐く。
……もしかしたら日常の些細な出来事を忘れている可能性はあるが。
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