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    omo641

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    omo641

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    支部に上げたヴィラホとプロヒ燈のバットエンド救いはない
    死ネタと燈が幼児退行してますのでご注意を

    救いのないバットエンドキャプション問題ない方のみどうぞ









     燈矢は、壊れてしまった。

     原因は分からない。父親に見放された事か、それとも、薬の使い過ぎによる、脳の損傷か。あるいは……いや、何を言っても今更だ。
     壊れた燈矢は何もかも忘れてしまって、稚児のように振る舞い、ある日突然青いものが嫌だと、鏡を叩き割って、自身の目玉を潰した。あまりにも衝動的な行為で羽でその蛮行を止めきれず、あの目はキレイだったから勿体無いと少し惜しむ。でも、見えなくなった燈矢は俺に頼るしかなくて、啓悟、啓悟と縋りついてくる姿が可愛かったからこれでもいいかと、そう、思っていた。



    「は、っぐ……ぅ、とう、や……」

     最終決戦とも言える戦いで、こんな絶望的な状況でも執拗く抵抗を続けるヒーロー共に手酷くやられ、血塗れの体をひきずって、燈矢のいる家までなんとかたどり着いた。どっちが勝ったのかなんて、もはやどうでもいい。ただ、燈矢に会いたい。
     AFOをエンデヴァーがなんとか倒してから、現No.1は前線に戻ることなく、どこかへ満身創痍のまま行ってしまった。その後、ヒーロー共は俺への猛攻を始めたから、ひょっとして、燈矢の居場所を知られていて、俺を戦場に釘付けにしている間に、エンデヴァーが燈矢を取り返すつもりなのかと思って、焦って色々としくじってしまった。

     その結果が、この死にかけの身体だ。

     たどり着いた家の戸は、鍵がかかってなくて壊れていた。嫌な予感のまま急いで家の中に入って、その勢いのまま玄関に倒れ込む。ガタンガタンと音がして、痛めつけられた身体が床に叩きつけられ悶絶する。

    「っぐ!」
    「……けいご? かえってきたの?」

     壊れてしまってから、随分と幼い口調になった燈矢が、廊下の壁を伝ってゆっくりとこちらに近付いてくるのが見えた。良かった、まだ、燈矢はここに居た。心底ホッとしながら、グッと脚に力を入れて、なんとか立ち上がり、近づいてきた燈矢を抱き締める。

    「ただいま、燈矢……」
    「おかえり、けいご。」

     幼子のような笑みを浮かべて、ギュッと抱き締められ、足から力が抜けて燈矢と一緒に廊下に倒れ込んだ。

    「ぅわ、けいご、つかれたの?」
    「ん、ちょっとね……」
    「けいご、血のにおいがする……ケガしてる?」
    「してないよ、ヒーロー共の返り血。」

     サラリと嘘をついて、燈矢の頭を抱えこんで撫でる。愛おしい俺の玩具。壊れたって、飽きたら捨てられるもの、ただそれだけだったはずなのになぁ。エンデヴァーさんが取り返しに来てたら、と考えたらいてもたってもいられなくなった。エンデヴァーさんに捨てられた燈矢を拾ったのは俺なのに、今更捨てたものを奪って取り戻そうだなんて虫が良すぎるだろ。いくらエンデヴァーさんでも、それはちょっと無い。

    「けいご、冷たい、さむいの?」
    「うん……ちょっと寒いかな、雨、降ってて……」
    「そうなんだ、じゃあ、おれがあっためてあげる。」

     燈矢、俺の唯一。やっと、気がついた。俺はこの人が居ないともう駄目なんだ。
     もっと早く気づいて、もっと大切にしてればなぁ。でも、今の壊れた燈矢も好きだから、それはそれでいいか。暖かくて、可愛くて、温もりなんか知らなかった俺に暖かさを教えてくれた、大事な大事な人。

    「けいご、眠いの?」
    「ん……ねむいかも……」
    「おふとんいく?」
    「……ここでよか。」

     だから、側にいて。
     俺だけ見てて。
     俺も、もう、お前だけを見てるから。
     もう、飽きたら捨てるなんて言わない、だから、ずっと、ここに居て。



    「けいご、あのね、…………けいご?」
    「……」
    「けいごねちゃったの? ……あのね、さっきへんな人が来て、おれの名前をよんで、おれのかぞくだって言うんだよ。おれのかぞくはけいごだけなのに。」

     目を包帯で覆った燈矢は、動かない啓悟の身体に抱き着いて、赤く濡れた手で抜け落ちていく羽を掴む。啓悟の姿など見えていない燈矢は、ただただ無邪気にさっき起きたことを報告した。

    「えっと、あ、そう、それでね、おれのうでをつかんで、どこかにつれて行こうとしたの。おれこわくなって、こわい人が来たら使うんだってけいごがくれたおもちゃでね、声のする方をパンって、こわい人の方に向けたの。そしたら、こわい人たおれてうごかなくなっちゃった。あれ、じゃまだから、あとでどっかすてないとね。さっきも引っかかってころんじゃった。」

     転んだせいで血溜まりについて赤く濡れた手を、ぐちゃぐちゃと音を立てさせて不快そうに握りこむ燈矢は、むすりと不機嫌そうに唇を尖らせた。

    「あの人、なんていってたっけ、とどろき、えんじ? 知らない名前だし、知らない人だよね、ねぇ、けいご。おれのお父さんだって言ってたけど、そんなわけないよね。お父さんが、かぞくが、あんなにこわいわけないもんね。…………けいご?」

     好き勝手に喋ってから、ようやく啓悟が動かず反応もない事に気がついた燈矢は、小さく微笑んで赤く染まった手でぎゅうと頭を抱き寄せ、優しく撫でる。

    「けいご、ほんとうにねちゃったの? ……じゃあ、おれも少しねようかな。こわくてつかれちゃった。」

     はぁ、と悩ましげなため息を吐いた燈矢は、愛おしそうに冷たい啓悟の頬に自身の頬を擦り付ける。

    「おやすみ、けいご。」

     何も見ないと己の目を潰した燈矢は、幸福な夢が見れると信じて眠りにつく。こんな所で寝たら身体が冷える、と羽で覆ってくれる人はもう居ないことすらも、何も見えない燈矢は知らない。


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