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    omo641

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    omo641

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    逆行とうやくんの続きというか進捗というかちゃんと続き書いてるよアピールというか、社会人編の1

    逆行とうやくんの続き「トゥワイス、衣装届いたぜ。」
    「本当か!『捨てちまえ!』」

     紙袋を被ったままウキウキと腕を上下させたトゥワイスに、ヒーロースーツを渡してやる。
     初めて会った時からはや数年、囚人のコイツに定期的に会いに行って信頼を勝ち取りつつ、刑務所でも出来るお勉強の差し入れもした結果、それなりに懐かれた。
     行く宛のない分倍河原をそのまま俺が立ち上げたこのヒーロー事務所に住まわせ、雑用をさせながらヒーローのお勉強をさせ、ようやく法的になんの問題もなく仮免受験ができるようになったので、さっそく今月末に試験を受けさせるところだ。
     ヒーロー名は面倒なので前と変わらずトゥワイスを名乗らせ、スーツの方は本人の希望通りに作ったが、まぁ前とさほど変わらない。

    「どうだ! 似合ってるか?」
    「おお、いいんじゃね?」

     早速着たスーツが気に入ったのか一人で様々なポーズを決め続けるトゥワイスに、ふ、と小さく笑う。なんだか懐かしいな、こういうの。
     
    「それですぐ動けるか?」
    「ああ! すげぇ良い着心地だ!『最悪の着心地だ!』 ほら見てみろよ!」

     見ろといったトゥワイスの手からドロリと生み出されたのは、まごうことなき俺自身で、目の前で増やされた俺と目を合わせる。

    「生成速度早くなったな。」
    「毎日お前のサイズ測ってっからな!」

     何かあった時に、戦闘能力はほぼないコイツが生き残れるよう、毎日俺のサイズを測らせては作らせたおかげで、俺を増やすことに関してはだいぶ早くなった。

    「コイツに外回り行かせたいが、理論上は俺じゃなくてトゥワイスの個性だからな、まだ仮免も持ってない一般人の個性だとバレたときに、活動分の金が発生しなくなるのは困る。」
    「そうだな、んで、俺は何をすれば?」

     増えた相手は俺自身、思考も同じなので話が早い。
     何をするか、と手を広げて首を傾げた俺に、スッとトレーニングルームまで指を指す。

    「ま、今日も接近戦の練習だな。トゥワイス、コイツとトレーニングルーム行ってこい。」
    「ああ! 今日もよろしくな!『今日こそぶっ潰してやる!』」
    「だと思ったぜ。」

     人が暮らすことを念頭に、そこそこ良い事務所にしたので、トレーニングルームもついでにつけてみたが、こうしてみるとなかなか役に立っている。基本的にトゥワイス本体にあまり戦闘能力が無いので、俺がお父さんに習った近接攻撃を教えこんでいるが、まぁ悪くはない。トゥワイスも俺の役に立とうと必死で頑張っている。そういうところ、利用しやすくて助かるよ。
     トゥワイスが頑張っているので、俺も家賃分の仕事をしなければ。人助けなんぞ心底嫌だが、活動資金及びすべてをぶっ壊すための名声上げと思えば、なんとかやれる。
     ただ、お礼を言われたりファンだとか言うのに囲まれると顰めっ面になってしまうのは許してほしい。やっぱりヒーローって言われると気持ちわりぃんだよな。

     この事務所を作るに至って、最初の資金はお父さんから借りた。最初こそ当然反対されたが、消費者金融に行くと言えばあっさりと金を貸してくれたから良かった。利子なしの大金はありがたい。
     トゥワイスが来るまでにそれなりに活動してそれなりに稼いだのでもう借りたお金は返したし、あとは養う分と経営費だけでいい。とはいえ、金というのはやはり万能であり、俺の計画のためには俺自身の名声が必須のため、それなりにヒーロー活動はしている。他のヒーロー共を妨害しながら。
     咄嗟に動けないヒーローや、個性の相性で足踏みしてるヒーロー共の横から手柄を掻っ攫ってやるのが思いの外楽しく、ヒーロー共からのヘイトを稼ぐために煽ってたらどっかの記者に言動がヒーローらしくないとすっぱ抜かれた。
     面倒だったので、他人を蹴落とすやり方は雄英で学んだと言っておいたら、ネットで雄英が叩かれていた。可哀想に、今後も悪いことで話題になったら雄英を出せばそれなりにヘイトを分散できそうだ。実際に、周りを蹴落とす雄英のやり方は、体育祭など見ていたら一目瞭然だ。
     
     そんな事を考えながら外回りをしていたら、今日はやたらと視線を感じた。良い視線ではない、困惑と訝しむ目、何なんだと鬱陶しい視線を振り払ってそこそこに仕事をして事務所に帰ってくると、突然窓から鳥が入ってきた。

    「こんちはーす!」
    「うるせぇ鳥だな、どっから入ってきてんだ、不法侵入で訴えんぞ。」
    「知ってるぜコイツ!『誰だ!』」

     ズカズカと窓から土足で入ってきたホークスを睨みつけると、自分は無害ですと言わんばかりに奴は手を上げる。

    「燈矢先輩は久しぶりで、そちらさんははじめましてですよね? どうも、ホークスって言います! 先輩の1個下で同じ雄英卒です。」

     すちゃりと臨戦態勢を取ったトゥワイスに、ホークスは図々しく近付いて握手をした。トゥワイスもオロオロと俺とホークスの間で顔を彷徨わせていたが、恐る恐る握手にこたえる。そういう流されやすくて人の良いところが利用されるのに。
     ひとまず、トゥワイスをホークスから引き剥がしてシッシッと鳥を追い払う。

    「うちの奴に馴れ馴れしくすんな公安の手先、このスパイ野郎。」
    「久しぶりの罵倒、なんか懐かしいっすね〜、いや今日は燈矢先輩に話しありまして。」
    「話?」

     どうせろくな話題ではない気はするが、こうしてわざわざ九州からここまで来るあたり、それなりに大事な話題な気もする。仕方ないのでデスクに軽く寄りかかって話を聞く姿勢を取れば、ホークスはニコリと笑って懐から新聞を取り出した。
     
    「さすが、話早くて助かります。で、早速本題なんですけど、先輩、OX新聞社から恨み買いました?」
    「あ? なんの話だ。」

     なんか聞いたことはある新聞社の話だ。ニュースはそれなりに見ているが、新聞はあまり見ない。ネットニュースで十分だからだ。

    「あー、さては新聞見てませんね? どうぞ、今日の朝刊です。」

     渡された新聞を開くと、一面デカデカと使って、『ヒーロートーヤ、犯罪者をヒーローに』というタイトルから始まり、トゥワイスの経歴と俺がトゥワイスをヒーローにしようとしていることが事細かに記載されていた。
     それで思い出した、コイツ、前にうちに来た新聞社だ。

    「ははぁ……そういや、この間売れさせてやるからただで撮らせろとか言われたな。うぜぇから断ったけど。」
    「なるほどね、いやぁ、頑張ってください!」
    「何なんだ?」

     除け者にされたトゥワイスがそわそわとこちらを覗いてくる。まぁ、この程度の記事、俺に支障はないが、当人には別だろう。せめて仮免を取るまでは、コイツが犯罪者というのは言わないつもりだったんだがな、色々と不利になるし。
     まぁ、取り終わったらこっそり週刊誌に流すつもりではいた。コイツの経歴はヒーロー全体を脅かすには効果的すぎるから、これを使わない手はない。

    「お前の経歴がすっぱ抜かれた。ついでに来週の仮免受ける事も。」
    「まー、近年の仮免の傾向としては、割と競い合いで蹴落とし合いなの多いですからね、元犯罪者なんて真っ先に狙われるでしょうね〜」
    「………はぁ!? なんでだよ!?『やってやるぜ!』」

     新聞を投げて渡すと、記事を見てトゥワイスは覆面の下で表情を歪ませた。
     なるほど、通りで今日はやけに視線を感じると思った。本当に、民衆というものは愚かしくて喧しい。自らが何かを成し遂げる力もやる気もないくせに、他者を蹴落とす事や悪いと判定したものを下げることには必死になる。
     正義を振りかぶって、悪と断定した他者を落とすことに快楽を感じる人間は多い。だから俺は以前それを利用したのだ。
     しかし、こうも害を被るようになると鬱陶しい。

    「気にすんな、どうせ社会人の仮免試験なんざ、大人になってもヒーローになれねぇ落ちこぼれ共の集まりだ。」
    「うっわ、それ外で言ったら秒で炎上っすよ。」

     ホークスのドン引き顔を無視して、トゥワイスの手から新聞を取り上げて燃やす。
     仮免の試験は流石に社会人と学生を一緒に受けさせることはしない、身体も頭も経験も社会人の方が上に決まっているし、年齢差があると蹴落とす側も蹴落とされる側もお互いに酷だ。そのため、学生は学生で、社会人は社会人で試験会場が異なっている。
     
    「安心しろトゥワイス、お前はやれる奴だ。不安に思う必要なんてない、お前は、奪う側だ。」
    「燈矢……、あぁ、任せろ……! 俺はやってやるぜ!!『俺には無理だよ!』」
    「……何か締まんないすね。」
     
     あはは、と軽く笑った鳥を追い払って、塩を撒いておく。
     ついでに設置してある家具を全部退かして、奴がこっそり放っていった羽も1枚残らず燃やしておいた。こういうときにMr.がいたら楽なんだけどな。
     換気扇の中まで確認し、部屋の中の羽を壊滅させてから、大丈夫とは言ったが、不安そうなトゥワイスに魔法の言葉を教えてやることにした。

    「いいか、トゥワイス。困ったら、俺を増やせ。俺がなんとかしてやる。」
    「燈矢……!」

     覆面の下で涙ぐむトゥワイスの肩に手を乗せて、お前ならできると洗脳のように言葉を続ける。ポジティブな言葉は時に呪いになる、俺はそれを身を持って知っているからこそ、トゥワイスに呪いをかけた。
     だが、まぁ実際に、混戦状態になってしまえば、無限増殖のできないトゥワイスに勝ち筋はほぼない。無限増殖さえできれば国さえもひっくり返せるが、今のこいつはトラウマで自らを増やせない。恨むぜスケプティック、とんだ置土産だ。
     せめて前にどうやってトラウマを治したのかさえ分かればいいが、スケプティックは絶対に教えてくれないだろうし、前のトゥワイスからは愛と勇気が塗り潰してくれたとしか聞いてないのでさっぱりだ。
     鍵はイカレ女のようだが、会っていないのでアイツがどこでどうしているのかもわからない。家は知っているが下手に近付くと、あの女はそれなりに年下のせいで、要らない噂になりそうで、触らぬ神に祟りなしと放置している。
     早いところ治ればいいが、まぁ治らなくてもそれなりに役に立つから良い。

     ひとまずは仮免に無事合格してくれればそれで良い。
     あとの事はまた追々考える。いきあたりばったりだが、案外流れに身を任せても、目的さえしっかりしていれば、上手く行くことを俺は知っている。それほどまでにこの世界は行き詰まっているから。

    「燈矢、今日もここ泊まんのか?『たまには帰れよ!』」

     トゥワイスが晩飯の用意をしようとヒーロースーツのままエプロンをつけて、お玉を手に尋ねてくる。泊まるなら一緒に作る、という意味だろう。

    「……そうだな、こんな記事がでたんだ、家帰ったらNo.2に何言われるか。」

     家には最近帰ってない、あの家は、優しい泥沼のようで、ようやく取り戻せた空元気のやる気を失いかねない。夏くんと冬美ちゃんを見ていると、どうにも、俺の望みを打ち捨てても良いかと、魔が差す。いや、この場合は良心の呵責だろうか。今更俺に良心など残っていたのかと自分自身に驚いた。

     ずっと味方だと言った約束通り、俺の味方でいてくれる夏くん。出て行きたいと思わないよう、家族を繋ぎ止めていてくれる冬美ちゃん。ヒーローになった俺を応援してくれるお母さん。いつまでも俺をヒーローだと言って、尊敬してくる焦凍。

     それから、俺を、見てくれるお父さん。

     優しくて居心地の良いあの家は、俺を鈍らせる。荼毘を消してしまう。だから、ヒーロー活動で忙しいと嘯いてここ最近遠ざけていた。
     優しい世界だ、燈矢がどれほど願っても得られなかった物で溢れている、尊い世界だ。
     それでも壊したいと思うのは、俺が、自身の遺影に手を合わせ荼毘になった亡霊だからだろう。
     今更止まれない、止まってしまえば、俺は俺自身を否定したことになってしまう。あの山で一人で焼けて、存在すらも亡きものとして、生まれてきた意味さえも打ち捨てられた燈矢を慰められるのは今となっては俺だけだ。
     そうならなかった今の理想の世界よりも、そうなってしまった過去のあの世界を、未だに俺は許せない。残りカスのような憎悪だが、それしか信じられるものがなかった。それだけを頼りに生きてきた人生を得て、今更捨てられる訳もない。

     周りに恵まれて、人に恵まれた人間が、そうではなかった人間の選択の可否を口にして断罪する。そんな世界、俺には耐えられない。綺麗なことを言うお前らだって、その恵みが得られなかった世界では、周囲に憎悪を撒き散らす存在になっていたかもしれないのに。
     絶対なんて存在しない、数多にある選択肢の中で、たまたまその道を選べただけの存在が、俺らに何かを言う資格なんて、ないはずだろう。守る価値もないフラフラと中途半端で弱く愚かな民衆も、都合が悪くなればあっさりと逃げるヒーローも、何もかも、壊してしまいたい。俺はもう、人々を守ることを、人々が笑顔でいることを尊いと思える、美しく英雄らしい心を持ち合わせていない。どこまでも自分勝手で、泥に塗れた汚らしいヴィランだ。
     覆水盆に返らず、一度起きてしまったものはもう、二度と元には戻せない。あの世界で終わりを迎えた俺は、二度と、もとの轟燈矢には戻れない。この身から溢れた憎悪は、もはやお父さんだけでは飽き足らず、全てを焼き尽くすまで止まりはしないだろう。

     だから、どうか……、どうか、俺の後ろ髪を引く何もかもを振り切って、この世界を壊せることを、他でもない俺自身が何よりも願っている。今度こそ全てを、きちんと俺自身の手で終わらせられるように。






    まだまだトゥワイス仮免編とかトガちゃん編とかMr.編とか書きかけのがモリモリある

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