煩悩撲滅「そんなことしてるうちに、一紀くんのスマホのブクマが見えちゃったんです。それがいかにも~なタイトルだったから、ついからかってしまって。――まさか、あんなに怒るなんて」
「んん……」
教え子の彼女の説明を聞いて、俺は笑いを噛み殺す。非常にバカバカしい、いや、微笑ましい? いやいや、これも不適切か。当人たちにとっては、大変な重大事件だったわけだから。
吹き出しそうなところを真面目に見えるよう必死に取り繕って、だから俺の顔は相当奇妙に歪んでいたはずだ。
ある日の放課後。いつもどおり、俺の城である「理科準備室」を訪れた小波 美奈子は、だがいつもニコニコ可愛らしく笑っている彼女とは異なり、なにかとんでもないことに巻き込まれたかのような、深刻な表情を浮かべていた。
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