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    ニシン

    @xeno_herring

    九割九分、真桐です。
    様子がおかしいのは仕様です。

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    POIPOI 26

    ニシン

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    ハロウィン真桐です。間に合わなかった上にだいぶ思っていたのと違うものができました。いつものことですが。

    #真桐
    Makiri

    ハロウィン真桐「今日何の日やと思う?」
    「知りませんけど」

    昼下がり。
    人通りの多い神室町の大通りでバットを肩に担いだ真島は、残念な子を見るような目で頷いた。

    「ほんま桐生ちゃんはイベント事に疎いのぉ…。ええか、イベントっちゅうもんは金になる。これからシノギ任された時、アホらしい祭りの波に乗れるかどうかで稼ぎが変わってくるんや。まだキリトリばかりで意識しとらんやろうけど、この先お前自身が金を生み出すことを求められる。思考と分析を欠いたらアカン。泥臭いシノギなんてそのうち時代遅れになるんや。今のうちに成功のベースロジックを構築しとかな、土地転がしの残り汁でデカい顔しとる邪魔なタヌキ共を引き摺り下ろせへんで。フィジビリティスタディは出来るか?幸い体力だけはアホほどある奴らばかりやし、たま~に脳ミソがある奴もおる。上手く使い分けることが生き残るための――……」

    桐生は神妙な顔をしながら、なんでこんな往来でヤクザ流ビジネスプランの講義を受けなきゃならねぇんだ、と思った。


    この組違いの兄貴分は、なぜかよく自分に絡んでくる。
    それは8割方暴力的な絡み方だったし信じられないくらい理不尽な(たとえば「態度が冷たくて傷付いたから詫び喧嘩しろ」だとか)ことも多かったが、お互い根に持たない性格なのがよかったのか、それなりに交流のある関係となっていた。
    今日は久々に何も用事のない一日で、家にいてもすることがないため気晴らしにサウナでも行くかと神室町のアーケードをくぐったのだが、10歩も歩かぬ内に捕まった。
    自分と真島を大きく避けるように人が通り過ぎていく。桐生は足早に去っていく人々をぼんやりと見ながら、前にこういう光景をテレビで見たな、と思った。大型の肉食魚を避ける小魚の群れに似ていた。

    「――聞いとる?桐生ちゃん」
    「聞いてますよ」

    呼びかけに意識を戻され、澄ました顔で頷く。真島はしばらく桐生の顔を見たあとに、出来の悪い生徒を前にした教師のように深いため息を吐いた。

    「嘘はアカンで、嘘は」
    「要はイベントに興味を持てってことでしょう」
    「先輩の話を要約するのもアカンで」
    「違いましたか?」
    「あっとるけども」

    真島はバットを持った手を伸ばし、桐生の肩を抱え込んだ。ずっしりした腕の重さを感じながら、真島に引き摺られるように足を踏み出す。

    「……どこ行くんですか」
    「そんな警戒されると寂しいやん。どこやと思う?」
    「ええと……墓場とか?」

    こないだの強制ドライブでは、やけにリアルな蝋人形ばかりがいる館に連れて行かれた。その前は中世の拷問器具が並んだ博物館だった。そろそろ墓場に連れて行かれてもおかしくない。真島は酷く心外ですという顔で桐生を見て、「発想こわぁ…」と呟いた。

    「じゃあどこなんですか。あと腕重いです」
    「まぁまぁ、ええやん」
    「兄さんが聞いてきたんじゃないですか」
    「まぁまぁまぁ」

    眼帯に覆われていない横顔を見れば、切れ長の目がジっとこちらを見ていた。驚いてまばたきすると真島の瞳がきゅぅと細まり、チェシャ猫のように笑った。

    「まぁ、着いてからのおたのしみや」







    「墓地じゃねぇか」

    あの後黒塗りの車に乗せられ辿り着いたのは、土葬形式の墓石が立ち並ぶ墓地だった。海外の映画で見たことがある。墓石の文字は劣化していて読めず、薄汚れた十字架が乱立しており、長いこと人々に忘れ去られている場所なのは明らかだった。最後に人が訪れたのはいつなのだろう。花の残骸すらない。すべて風化してしまったのだ。ほぼすべての墓に、びっしりと苔が生えていた。
    桐生はホラー全般が苦手だったため、本当に嫌だな…と思ったが、真島にそんなことを言える訳もない。嬉々として弄ってくる姿が鮮明に浮かぶ。
    何の理由で来たかは知らないが、少し周れば満足するだろう。足元の草に引っかからないようにしながら、ずかずかと墓地へ入っていく真島を追いかける。

    「兄さん、なんでこんな場所に……」
    「しー」

    急に立ち止まったかと思えばぐるりと辺りを見渡していた真島の手が口を塞いだ。やけに真剣な顔をしている。困惑したのも一瞬で、ずず…と重い物を動かしたような音がした。聞き慣れない不気味な音に背筋が硬直する。咄嗟に周囲に視線を巡らすと、真島のすぐ後ろ、ツタの絡まった墓石の蓋がゆっくり開こうとしていた。

    「っ、」

    兄さん後ろだ、と言おうとしたが、ガッチリと口を塞がれていて言葉が出ない。手を退かそうとしても、真島はただ桐生が怖がっているだけだと思っているのか、「しー…、大丈夫やから」と低い安心させるような声でささやくだけで手を離してくれない。
    その間にもどんどん蓋は開いていく。

    ずず……
    ずずず……

    ついに人ひとりが出入りできるほどの隙間が空いた。ぽっかりと開いた黒い闇から、生白い人間の腕のようなものがずるり…と出てきた。

    「~~っ!」
    「おっとと……どないしたんや、桐生ちゃん」

    珍しく困ったような真島の声と共に、落ち着かせるように背中を優しく叩かれる。
    違う。兄さん、後ろに何かが――

    「!!」

    腕と、長い髪。髪の毛はところどころ固まり、ごわごわとしている。黒っぽいものは血だろうか。青い静脈が不気味なほどハッキリと見える腕が這うように動き、異様な不安定さでぐらぐらと立ち上がった。
    両足に鎖がつけられた鎖が一歩踏み出すごとに耳障りな音を立てる。ぼろ布のような服が風にはためく。長い髪に隠れた顔は見えないが、確実にこちらへと向かってきていた。

    手に、錆びついた斧を持っている。

    喉の奥で悲鳴が出るが、その音も真島の手のせいで小さく消えていく。桐生はもう、両目を見開いて真島の腕の中であやされるしかなかった。ゆったりと背中を叩く手はきっと、自分の背後で何が起きているかなんて少しも分かっていないのだろう。

    ず……ずず……
    ずずず……

    音が近付いてくる。
    姿が近付いてくる。
    斧が地面に歪な線を書いている。
    こっちにくる。
    真島のすぐ後ろ。
    斧が振りかざされて――

    「――ッ兄さん危ないっ!!」

    ありったけの力で真島の腕を引きはがし、掴んだ腕を自分の後ろ側に引く。そして遠心力を利用し、目の前の死人に蹴りを食らわせた。物理攻撃が効くのか不安にだったが、上手くいった。くぐもった声と共にあっけなく飛んだ死人は、どかっと地面に倒れた。しかし。

    「くそっ……」

    普通なら起き上がれないほどのダメージを与えたにも関わらず、死人はぐらぐらと揺れながら起き上がった。落とした斧はそのままに青白い両手で顔を覆い、ゆっくりと頭を前後に揺らしている。ひらすらに気味が悪かった。一刻も早くこんな場所から出たい。
    死人を視界に捉えたまま、次の一手を警戒する。

    「おい、大丈夫なんか」

    真島の声に頷きかけて、ぴたりと動きを止める。
    声の方向がおかしい。
    全身の筋肉が強張る。
    ギギ…と錆びついたかのように動きづらい首で振り返ればやはり、真島はあろうことか、今しがた斧を振りかざしてきた死人に声をかけていた。

    「どこも怪我しとらんやろな」

    そう言いながら軽い足取りで死人の方へ向かう真島の背を、桐生は信じられない気持ちで見つめる。
    どこかが致命的におかしいとは常々思っていたが、ここまでとは。
    風間の親っさんに「嶋野のとこの眼帯には用心しろ。決して暗い場所で二人きりになるなよ」とキツく言われていたのに。真島の独特の距離感に惑わされてこんな場所までのこのことついてきてしまった。

    奥歯を噛み締め、軸足を半歩下げる。
    あの男を倒す必要があるなら、きっとこの場所だ。

    睨みつける桐生の視界の中心で、真島はいつも通りの顔で振り返った。そして桐生の姿を見て綺麗に口角を上げたかと思えば、

    「さっさと挨拶せんかい!」

    という怒鳴り声と共に死人の頭を引っ叩いた。







    「これあと何個あるんですか」
    「なんぼでもあるで」

    ガヤガヤと男達の動き回る喧騒から少し外れた木の下で、桐生はカボチャをくり抜いていた。隣に腰掛けている真島は、愛用のドスで器用に模様を彫っている。二人の周りには様々な模様のカボチャが並んでおり、真島は満足げなため息を吐いて新たに生み出した完璧なカボチャを桐生の前に置いた。

    「にしても、ほんま怖いモン苦手なんやなぁ」
    「謝罪以外の言葉はいらないです」
    「ごめんて~」
    「うるさいです」

    本物の墓地だと思っていたのは真島が企画したホラーテーマパークの一部で、死人だと思って蹴り飛ばしたのは真島の部下の西田だった。
    あの後ぼさぼさのカツラを脱いで土下座せんばかりの勢いで謝る西田とその横で腹を抱えて笑う真島を前に、桐生は騙されたことを悟り、ヒィヒィと涙を流す真島を締め上げて事の顛末を聞いたのだ。
    彼曰く。あの手この手で桐生をからかうことに命を賭けている真島は、錦山から「桐生は怖いものが苦手」という情報を引き出していたらしい。それでちょうど完成間近のテーマパークで一芝居打ってやろうと計画したらしい。ちなみに西田が桐生の蹴りを食らっても起き上がれたのは、単に真島の普段のしごきが苛烈だったためだ。真島の部下は皆、無駄に頑丈だった。

    「しゃーないやん、構いたいんやから」

    真島は咄嗟の事態で桐生が庇ったことが大層嬉しかったようで、いつになく丸っこい声で桐生の手元を覗いてきた。
    装飾用のカボチャはテーマパークの飾りらしく、どうせ暇ならこのまま手伝ってくれと腕を引かれて、桐生は流されるままにチマチマ作業をしていた。ちなみに桐生の横には潰れたカボチャがいくつも転がっている。

    「兄さんは俺をからかうのが楽しいだけでしょう」

    あの時、本当に危ないと思ったのだ。それが全部仕組まれたお遊びで、自分だけが真剣だったなんて。怒りとか羞恥心とかチョットの悲しさとか、そういうものがぐるぐるして拗ねたような声になってしまった。
    しまった、と思ったがもう取り消せない。
    真島の顔を見れないまま、手元のカボチャに彫刻刀で穴をあける。カボチャに顔を彫った物をジャックオランタンというらしい。こういう感じでお願いしますねと見本を置いて行った西田のものほど綺麗にはいかないが、今までで一番出来がよさそうだ。無心でできる作業はいい。次の線を引いたところで、黒い革手袋が手に重ねられた。

    「お前、今までずっと、そう思っとったんか」

    ふつふつと怒りの込められた声だった。
    ぱっと顔を上げれば、先ほどまでの機嫌の良さはどこへやら、煮えたぎるような目をした真島がこちらを見ていた。てっきり聞き流されたと思っていたから、予想外の反応に思考が止まる。

    「な……なんで怒ってるんだ…」

    やっと絞り出した声は不格好に掠れていて、それを正確に聞き取った真島は低く呻ったあと、ほとんど消えそうな声で言った。

    「お前に、ずっと前から惚れとるからや」







    それから。ぽかんとした顔の桐生の唇の端に口づけた真島は「そういうことやから」とうなり声のように低く耳元でささやいて、「あいつらの仕事見てくるわ」と男達の方へ歩いて行った。
    桐生は真島の背中が人の影に隠れるまで見続けて、そこでようやく、まばたきをした。
    惚れてる。誰が?
    兄さんが、俺に?
    じゃあ今まで構ってきたのは、俺に振り向いてほしかったから?

    「……」

    かさついた唇が触れた部分を指先で撫でる。
    嫌な気分はしなかった。
    ……嫌な気分はしなかったのは、マズいんじゃないか?

    「…………」

    真島は今まであらゆる手段を用いて桐生を構い続けてきた。大抵は強引だし、理不尽な言いがかりばかりだし、無茶苦茶だった。だけど、それで桐生の仕事が滞ったことは一度もなかった。
    移動手段を持っていない桐生を、色んな場所に連れて行ってくれた。おかしな場所も多かったが、目を奪われるような景色もたくさん見せてくれた。
    たまに連れて行ってくれた昼飯や夕飯では、桐生が気兼ねなく美味いものを腹いっぱい食べれる場所を選んでくれた。
    ……その時の真島はどんな顔をしていた?

    「……っぅ、わ、」

    ぶわっと顔が熱くなった。
    なぜ気付かなかったのだろう。
    真島はいつだって、心底愛おしい者を見る目で見ていた。ずっとそうだった。彼の燻る炎のような熱は、いつだって自分に向けられていた。
    きっと、最初から。

    「はぁー……」

    カボチャと彫刻刀を地面に放り、立てた片膝に額をつける。
    気付いてしまった。
    これも真島の戦略なのだろうか。
    こんなカボチャに囲まれて恋を自覚するなんて。

    「最悪だ……」







    シックな内装は無駄がなく、木目調の壁のアクセントが温かみを感じさせる。家具は黒で統一されていて、さり気なく置かれた観葉植物や小物が程よい彩りを添えていた。

    「ほな、今日はお疲れさん」
    「お疲れ様です」

    カツンと涼しい音で合わさったグラスを煽る。
    桐生は今、真島の家に来ていた。


    なぜこうなったのか。それはいたってシンプルで、桐生作の潰れたカボチャと真島作の完璧なカボチャに囲まれながら真島への恋心を自覚した桐生は、しばらく打ちひしがれていた。年上が好みだった桐生は、これから綺麗なお姉さんと恋するものだと思っていたからだ。
    それがどうだ、相手は狂犬と名高い兄貴分だ。
    数十回ほど溜息を吐いてようやく腰を上げた桐生は、真島が消えて行った男達の方へ向かった。そして派手なバイソン柄のジャケットに手を伸ばし、振り返った真島の目がスローモーションのように見開かれるのを見つめ、「俺も同じだ」と言った。
    困惑する周囲をよそに石のように固まった真島は、桐生が(そろそろ帰ろうかしら)と思い始めてきた時にようやく、「ほんまか」とちっさい声で言って、部下たちに早口で指示を飛ばしたかと思えば、痛いくらいの強さで桐生の腕を掴んで車へと押し込んだ。

    「ほんまか、さっきの」

    エンジンを掛ける前にもう一度、不自然なほど正面を凝視したまま聞かれた。

    「本当だ」

    そう言えば、無言で車を発進させた。
    真島の真っ赤になった耳が、なんだかおかしかった。
    車が見知らぬ駐車場に入り、やけに広い玄関ホールに連れて行かれ、真島が指紋認証でドアを開けるのを見てようやく、ここが彼の家だと気付いた。真島は運転中に平常心を取り戻したのか「そこ座っとき」と普段の調子でソファを顎で指し、「これ桐生ちゃんと飲みたかったんや」と高そうな酒を出してきたのだった。


    「それで、桐生ちゃん」

    グラスを置いた真島が背もたれに預けていた身を起こして、身体ごとこちらに向けた。そして両肘を膝に乗せ、下から抉るような視線を向けてきた。

    「俺のこと好きなんは嘘ちゃうよな」
    「嘘じゃないですけど…」
    「けど?」
    「こうなると思ってなかったので、なんというか……」

    真島のことは好きだ。好きだが、普通男女で好き合った時に考えるようなことは上手く想像できなかった。それをどう伝えればいいのか分からずに言葉が途切れる。

    「言うてええよ」
    「俺は……年上の女性と恋愛したいと思っていたので、」
    「そこまで言うてええとは言っとらんけど」

    剣呑な眼差しに「すいません」と断って話を続ける。

    「正直兄さんを抱けるかと言われたら、まだうまく想像できないというか……すいません、こんな話しちまって」

    真島は桐生の顔に言葉の続きが書いてあるかのように凝視してから、がっくりと項垂れて深い溜息を吐いた。肺の奥底からの溜息だった。

    「アホやなぁほんまに…」

    俯いた表情は見えなかったが、声に喜色が籠っている。なにかよくない予感がして身を引こうとした桐生の手首を、黒の革手袋がガッシリと掴んだ。ぐっと引き寄せられてバランスを崩した桐生の太ももの上にどっかりと座った真島は流れるように桐生の肩を押し、ソファに寝転がらせた。

    「そういえば桐生ちゃん、お菓子持っとる?」

    唐突な展開に目を白黒させていた桐生は、予想外の質問に頭が回らず緩慢な仕草で首を振った。自分を見下ろす真島の目が、獲物を前にした肉食獣のように光っている。

    「うん?持っとらんの?」

    恐ろしいほど熱のある視線に囚われて身動きできない桐生に甘ったるい声が降ってくる。
    真島の手袋はいつの間にか外されていて、骨ばった男の指先が桐生のシャツのボタンを開けていくのにも抵抗ができない。鎖骨を撫でられ、人肌の体温にびくりと身体が動く。

    「桐生ちゃん、今日が何の日か知っとる?」

    全てのボタンを外され、器用な指先がつつ…と肌を撫でながら下へと伝う。

    「知り、ません…っ」

    自分の行動ひとつひとつに健気に反応する桐生に喉を鳴らした真島は、愛おしい子を見るような目で頷いた。

    「ハッピーハロウィン。まさかこんなええ日になるとはなぁ」

    ク、クと喉の奥で笑った真島はスマートに桐生の唇に口づけ、髪を掻き上げた。

    「お菓子がない子にはイタズラしてええっちゅう日やけど……俺はイタズラで終わらす気ぃはないからな」

    狂犬の押し殺した声に、自分は大きな勘違いをしていたのだとやっと気づいた。
    食うのは兄さんだ。
    きっと俺の骨まで喰らうだろう。
    こんな男を前に、抱けないなんて見当違いなことを言っていたなんて。彼はそんなこと、一ミリも考えたことがなかったに違いない。
    そして自分はきっと、このハロウィンで真島にイタズラし返す間もなく今日の残り時間を過ごすのだろう。
    そう思うと少し悔しくて、一矢報いたくなった。ちょっとした遊び心……ではなく、実際は予想外の展開の連続で心臓がバクバクしていて、おかしなテンションになっていたのだと思う。

    「満足させてくれるんだろうな?」

    真島の首裏に手を当てて引き寄せ、耳元でささやいた。
    カッと目を見開いた次の瞬間には凶悪な顔でにっこり笑った真島を見上げ、やりすぎたことを察したが、時すでに遅し。

    「死ぬほど満足させたるよ。何遍でも」

    ハッキリと告げられた言葉に諦めたように目を閉じる。食らいつくような口づけとするすると下へ下がっていく手の感触に、跳ねる身体を力ずくで押さえつけられる。

    ――煽り過ぎた。

    桐生の後悔はすぐに、自分の嬌声でかき消された。

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