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    ニシン

    @xeno_herring

    九割九分、真桐です。
    様子がおかしいのは仕様です。

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    ニシン

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    心優しき男たちによる友情の話です。嘘です。ストレスでイライラしてる男たちが責任の所在を互いに擦り付ける話です。リハビリ失敗。

    #真桐
    Makiri

    ≠友情※真桐要素が薄い上に全員口が悪いです。
     何の話だか私もよくわからないです。
     なんでもいい方だけどうぞ。



    --------------------------------------



    男たちはキャバクラの個室にいた。
    スーツを着て、コの字型のソファに深く腰掛け、それぞれ愛煙している煙草や葉巻をくゆらせていた。バージニア葉とヒッコリーの木、オーク樽の香りが混ざり、揺らめく。

    「なぁ桐生ちゃん、もうウチらだけで暮らそ?な?」

    芳醇な煙の中で唯一スーツ姿でない真島は、目が痛くなるようなピンクのボディコンに網タイツを身に付け、信じられないくらい高いヒールを履いて、桐生の膝の上に横座りしていた。頭には華奢なティアラが載っている。
    絶対に動かないという意思を示すように片腕は桐生の首に回っていて、空いた片手は仔猫をあやすかのように喉を撫でていた。
    そんな真島にとろりと囁かれた桐生は、

    「……重い…」

    両腕をソファの背に乗せて、ぐったりとソファに身を預けていた。赤いシャツがしどけなくはだけ、普段よりずっと肌色の面積が多い。しっかりとマウントポジションを取った真島に「やん♡桐生ちゃんのえっち♡」と言われながらボタンを外されたのだ。
    頬にはべったりと紅いキスマーク。
    ほかにも身体のあちこちに口紅の痕があり、見事に割れた腹筋にはハートの落書きをされていた。

    「せやで、ウチの愛情は重いんやから♡」
    「いや、体重が…」
    「レディに体重の話!?デリカシーなさすぎ!」
    「ぐぇ」

    ガッと首を掴まれた桐生はしんどそうな声を上げたがそれだけで、無抵抗なのをいいことにぶちゅっと頬に新たな紅を付けられていた。
    顔の良い男が紅をつけられてぐったりしている様はとても絵になった。
    たとえそれが女装した男に好き放題された結果だとしても、だ。

    「…なんでそんなされるがままなんや、桐生は」

    冴島に呆れた声を向けられた桐生は、ピンクのラメが散らばった付け爪に撫でられながら「雨だから…」とノロノロした声で言った。
    桐生と真島の喧嘩の勝敗は五分五分で、桐生が負けるときは大抵お腹が減っているか、寝不足か、お天気が悪い日だった。光合成で生きる生命体そのもののような桐生にとって、じめじめとした雨の日はどうも調子が出ないのだ。
    だからこうして真島に絡まれても、ううん…と小さく唸るだけ。

    「ウチはそんな桐生ちゃんも好き♡」
    「重い…兄さん……」
    「チョコ食べる?」
    「いらねぇ、退いてくれ……もう足の感覚がないんだ」
    「そしたらウチがずっと面倒見たる♡献身的なゴロ実に桐生ちゃんもメロメロやな♡」
    「なんで原因があんただと分かってるのに俺が絆されると思ってるんだ……?」

    心底不可解な顔をする桐生と、後ろ手に隠したナイフがバレた殺人犯のような笑みを浮かべた真島。
    その二人を見て、冴島は黙って首を横に振った。
    真島は当然、常人が理解できる範疇の一歩外側にいるが、冴島からすれば桐生も大概おかしかったので。


    そんな問題児二人はコの字型のソファの中央に座っていた。そして呆れ返る冴島の向かい側では、黒のストライプスーツを着た大吾が脚を組み、葉巻を咥えたまま、ずっと壁の一点を見つめていた。
    女装姿の身内が部屋に入ってきた時も、真島が桐生にキスした時も、桐生がそれに弱々しい声を上げてる間も、ずっと奥の壁だけを見ていた。
    現実を直視したくないのだろう。
    これは幹部会でよく目にすることが出来る光景で、特に真島が絡む議題の時の大吾は概ねこの姿勢だった。

    「大吾、いくら身内とは言えコイツ等の阿呆な行動の尻拭いまでする必要ないやろ。自業自得や。コイツ等だけで解決さしたらええ」

    唐突に声を掛けられてビクッと身体を震わせた大吾は、その拍子に落とした葉巻の灰を億劫そうに払いながら言った。

    「…ええ、まあ、俺としてもそうしてくれると大変助かるんですけどね。ストレスも少ないし……」

    真島が片眉を上げ、わざとらしく驚いた声を作った。

    「ちょっとぉ~!桐生ちゃんはウチがしつこく絡んで渋々喧嘩してくれただけなんやから、誤解せんとってくれる?」
    「……? はぁ、では真島さんが全責任を負う、ということでしょうか」
    「はあ?あーぁ、ウチ嫌やわぁこんな責任逃ればっかりする男の下で働くの。か弱い乙女をなーんも守ってくれへん。ほんま利己主義。組織のトップとしてどうなん?山〇証券の社長のがよっぽど男として器がデカいわ。ウチあの会社に入るから、もう関わらんといて」
    「その会社もう自主廃業してますよ」

    大吾はネクタイを緩めながらソファの背に頭を預け、疲労の滲む声をぞんざいに放った。

    「どうにか抜け道はないものですかね。週に一度顔を合わせるだけでも蕁麻疹が出そうなのに。たった今しがたの会話でも苦痛で苦痛で……」

    心底嫌そうな顔でそう言った大吾に、けっと薄笑いを浮かべた真島がざっくりした声で返す。

    「失礼なやっちゃな、言われてるで兄弟」
    「お前のことやで」
    「坊がさっさと話つけて来てくれればええやろ。言うとくけど、俺かて御免やからな」
    「あんなレイシストが俺の話を聞くとでも?」
    「なんねんお前、会長やろ」
    「でもまぁ、大吾が言ったところでどうにかなる相手ちゃうやろな」
    「兄弟までそないなこと言うて……ほな呑むしかないやんけ」

    静かに成り行きを見守っていた桐生が静かに口を開いた。いつの間にか、目尻にも紅が乗っていた。

    「……俺は嫌だ」
    「俺も」
    「俺もや」
    「では、満場一致で嫌ということで」

    ぱん、と大吾が手を打った。
    まるで締め括りのような空気が漂ったが、何ひとつ解決していないことはこの場の全員が理解していた。…なので各々腰を上げることはなく、小さく舌打ちして、気を紛らわせるように煙を強く吐いただけだった。





    ……さて、一体どういう状況なのか。
    ひとつずつ整理すると、こういうことである。


    まず、なぜ真島がこんな格好をしているのか。
    それはここが真島……ではなくゴロ美の勤務先のキャバクラで、今日が『プリンセスデー』というイベント日で、仕事熱心な真島は忠実にプリンセスの役目を全うしているからである。
    顔見知りしかいない個室の中であろうと、ティアラを外すという選択肢はこれっぽっちも存在しなかった。「誰も望んでいない」なんて事実は、プリンセスの彼女には関係ない事だったので。

    次に、なぜキャバクラに居るのか。
    中央のテーブルに置かれた手紙が起因で、この場所にいる原因は真島だった。
    手紙に関して「幹部会後、早急に話し合う必要がある」と命じたにも関わらず、真島がキャバクラのシフトを守ると言って聞かなかったのだ。
    その言葉通り、真島は会議後に風のように去ってしまった。引き留める間もなかった。
    なので大吾は仕方なく、冴島を伴って真島の副業先までやって来たのだ。少しくらいその真摯な態度を本業で見せてくれてもいいのに…と思いながら。
    桐生に関しては手紙の内容に大いに関係があったため、大吾が呼び出した。

    …と、いう訳で。
    どう見てもヤクザな男が複数名。
    ぞろぞろと険しい顔で入店した男たちに、店長が我が子を守る勢いで「お、ぉおお、女の子は、ゴロ美ちゃんしか付けられませんからねっ…!」と言ったのも、マァ頷ける話である。
    それだけ怖い顔をしていたからだ。
    大吾と冴島は真島の自由奔放さに対して、桐生はなんで俺まで…という不満で、全員ちょっとイライラしていた。
    なので男たちは極道をも恐れぬ百戦錬磨のゴロ美ちゃんだけを席に付けられ、ぎゅむっと個室に押し込められたのだった。

    最後に、手紙とは何なのか。
    これは上質な和紙便箋で、菊の透かしが美しく、ほんのり白檀の香りがして、
    残菊ざんぎくの候、日々代わり映えのしない世の中に甘んじている皆々様におかれましては――』
    と流れるような文字で綴られている、東城会元大幹部からのお手紙だった。
    送り主は墓塚はかつかという男で、真島たちの世代ならば東西問わず誰もが知っていた。墓塚は全身真っ黒で、怖い目をしていて、人の嫌がることを率先して行うのが趣味のような男だった。
    ……これは決して「進んでトイレ掃除をする」とか「みんなのために汚れ役を買って出る」なんてことではなくて、「進んで人種差別をする」とか「みんなのトラウマ役を買って出る」とか、そういうことである。

    そんな墓塚からのお手紙。
    当然、脅迫文である。
    しっとりとした手触りの封筒には、法外な金額の請求書が同封されていた。


    そんなわけで。
    OBからの素敵なお手紙を読んだ一同は、「あーどうしよう」「くたばったと思ってたのに…」と、ぷかぷか煙を吐きながらぐったりしているのだった。

    閑話休題。





    だらりといつもの声音に戻った真島は、しかし頭上にティアラを輝かせたまま、長い付け爪でカチカチとスマホを操作しては大吾に見せていた。

    「こないだ水族館行ってんけどぉ」
    「はい」
    「見てこれ、イルカショーの写真」
    「へぇ、いいですね」
    「お土産売り場にぬいぐるみがあってな、でっかいメンダコ買うたんや」
    「そうですか」
    「ちょうど海鮮フェアやっとってなぁ」
    「水族館で?中々攻めた企画ですね」
    「桐生ちゃんがぬいぐるみ抱っこしとる写真もあるで」
    「え、桐生さんと行ったんですか?」

    店から借りた電卓をタタタ…と叩きながら話半分で聞いていた大吾は、向けられた液晶画面に想像の三倍デカいぬいぐるみを抱えた桐生の写真を見て、ぱち、と目を瞬かせた。
    てっきり囲っている女とのデート話だと思って聞いていたのに、まさかの身内。

    「…どこの水族館に行ったんですか」
    「しながわ水族館」

    しかもカップル御用達の水族館だった。
    思わず桐生の顔を見れば、「クッションにちょうどいいんだ」と頷かれた。ぬいぐるみはお買い上げしたらしい。
    大吾はしばらくの間、へぇ…男同士で行くんだ……と不思議な気持ちになったが、改めて二人の姿を見て、「水族館くらい行くか」と納得した。水族館とキスマーク、どちらがハードルが低いかといえば、恐らく世間一般的には水族館だろうから。

    桐生とのデートを自慢し終えて満足したらしい真島は、自分の下にいる桐生に
    「つぎどこ行こか。イルミとか見る?キレーなとこ連れてったるよ。それとも武器麻薬の密輸即売会とか行ってみる?月のない夜にやっとるんやけど……地下は明るいから怖ないよ。でもちょっと危ないから、行くならウチと手ぇ繋いでこな」
    と、悪夢のようなデートプランを丸っこい声でとろとろ話していた。


    一方冴島はというと、すでに水族館デートの話を三回聞かされていたから、ぼぉっと机の上の脅迫文を見ていた。書かれているのは時候の挨拶のようなものと、要求と、それが叶えられなかった際に発生する請求額についての説明。
    冴島はこれを見て、嫌な奴やなぁ…と思った。
    墓塚の要求は一部人間(この場合は冴島と大吾と真島と桐生)にとっては是非とも回避したい内容だったが、他の人間からすれば笑い草でしかないのだ。

    『過去累積する損壊費用とトラウマ治療費、その他諸々の費用を負担できない場合、責任者全員に共同生活の実施を要求する。社会的協調性及び責任能力を培い、相互監視という環境下に身を置くことによって情操教育の発育を――……云々』

    文面は上記の通りで、要は『他所様に迷惑かけすぎだから、シェアハウスでもして人間性を向上させろ』という、ありがた迷惑な要求だった。そして『それが嫌なら金を払え』、と。
    ちなみにこのお手紙は幹部会でも読み上げられたのだが、率先して解決に動こうとする者は誰ひとりいなかった。全員、「ではそうしていただいて…」という表情を浮かべただけ。
    唯一口を開いたのは財務関係者だったが、組織の心臓を動かす彼らは凄腕かつ決して容赦をしないので、『こんなくだらない理由で莫大な資金を遣った暁には、損失を回収し終わるまでその眉間から銃口を逸らしませんからね』というあたたかな言葉を丁寧に伝えてきただけだった。

    「はぁ……」

    冴島は相互扶助精神の欠落した会議を思い返し、重いため息を吐いた。
    こんなふざけた要求なのだし破り捨てればいいだろう…と言ってしまえればよかったのだが、そうはいかない事情があるのだ。

    まず、墓塚は東城会の事情に精通している。
    いくら外野が嗅ぎまわっても辿り着くことのできない部分まで、すべて墓塚は知っていた。それだけの地位と、それらを指揮する立場にいたからだ。
    次に、彼は警察上層部に太いパイプがある。
    彼らの時代は国家機関との癒着が珍しくはなかった。昨今では目が合っただけで逮捕されるスリリングな関係に落ち着いているが、当時は上手いこと共生していたのだ。
    なので。
    「今その引き出しを開けられると痛いな…」というのが現役極道たちの総意だった。ちょうど新しいビジネスに着手している最中で、無闇に噛みつかれたくない時期なのだ。
    そもそも極道だ。探られて痛い腹しかない。
    最悪墓塚の口を封じるという手もあるのだが、いかんせん人も金もかかる。半笑いで「まぁ呑むしかないでしょ、頑張ってくださいよ」と言っていた幹部の男たちがそんな手間を承認するわけがなかったし、その過程で芋ずる式に魑魅魍魎じみた元幹部連中まで出てきては、それこそ目も当てられない。

    …というわけで。組織の弱点を知り尽くした上に決して折れない矛を持っている墓塚の純粋な嫌がらせのような要求に、冴島たちは粛々と従うしかない……というのが現状であった。

    それでも、だ。

    冴島は絶対に嫌だった。
    少し耐えれば莫大な金額を払わなくて済むし、今後の組の発展に注力できると頭では分かっていても、嫌なものは嫌だった。

    「……なぁ兄弟」
    「んぁ?」

    金髪の毛先を弄りながら顔を上げた兄弟分に、脅迫文を見ながら言う。

    「この文面を見る限りお前が原因の8割を占めとる。幹部会でもそういう結論になったやろ。そこで桐生に絡んどらんと、何か打つ手のひとつやふたつ、考えたらどうや」
    「なんや急に。あの冷血漢のクソったれ共は、例え自分が100悪くても他人に押し付けて知らん顔して帰るやろが」

    真島は今更そんな分かり切ったことを聞くなという顔でひらひらと手を振って、「なー?桐生ちゃん」と子どもをあやすような声で言った。

    「いや、冴島の言うことは尤もだろ」
    「えっ、きりゅうちゃん…?」
    「俺としてもあんたが一人で解決してくれた方が助かる」
    「それは…俺と暮らすのが嫌ってことか……?」
    「そう聞こえなかったか?」
    「は?」
    「あ?」
    「ちょっと、喧嘩しないでくださいよ。その積み重ねでこんなことになってるんですから」

    心底面倒くさそうに仲裁に入った大吾に、真島の剣呑な視線が向く。

    「うっさいのぉただの痴話喧嘩じゃ。…ちゅーか坊、なんやその葉巻。前から吸うてたか?」

    矛先を変えた真島の言葉に「ああ、これですか」と頷く。オレンジ色のベルベットで裏打ちされた革製の箱に並ぶ葉巻は、15年熟成の高級品だった。

    「あなたのところのカシラが毎月くれるんですよ」
    「はあ?なんで」
    「いつも苦労を掛けているから、と。よく出来た部下ですね」
    「はー、アホくさ」
    「そんだけ兄さんが滅茶苦茶だってことだろ」
    「桐生ちゃんまでそないなこと言うて…」
    「なんだ……違うのか?」

    桐生が真島を見上げ、薄く口角を上げた。
    照明の橙が瞳にチラついて、海の底で輝く宝石のようだった。

    「……ううん、なんも違わん」

    その瞳に射止められた真島は、メロ…っと脳を溶かされながら緩く首を振った。桐生の瞳に囚われると、真島はいつも骨抜きになってしまうのだ。
    冴島は、そんな二人から目を逸らした。
    いつもの事だったからだ。
    代わりに、未だにカタカタと電卓を叩いては、何やらスマホを操作している大吾の手元を覗き込んだ。

    「何しとるんや。こんなん金勘定したってどうにもならんやろ」
    「あぁ、これですか」

    大吾は同封されていた請求書を顎で指しながら言った。

    「成人男性の臓器を高額で買い取るルートがあるので、何人分あれば事足りるのかと計算を……」
    「何人分あったらええんや」
    「ウチの人数では足りないのは確かですね」

    三万人の命でも足りないらしかった。
    冴島は何度目かも分からないため息を吐き、真島によって身動きの取れない桐生に顔を向けた。

    「桐生、先代として話つけてきてくれんか」
    「現行の奴が行けよ」

    長いネイルに乱されて前髪の崩れた桐生は、気だるそうに髪をかき上げながらアッサリと断った。女性用化粧品の広告のような姿だった。

    「せや、坊が行けや。桐生ちゃんはもうカタギやねんで」
    「カタギだろうと、この責任の一端は桐生さんにもあるんですからね。説得はいいにしても協力はしてもらいますよ」
    「チッ……俺は売られた喧嘩を買っただけだ」
    「そんな言い訳が通じる相手ちゃうことはお前も分かっとるやろ、桐生。手紙見たらほぼ名指しみたいなもんやったで。流石に暴れすぎや」
    「ああ?なんや兄弟、ウチの桐生ちゃんにアヤつけようっちゅうんか」
    「おじいちゃん、お静かに」
    「誰が耄碌クソジジイや」
    「おい喧嘩はやめろ」

    全員が疲労を抱えた声で、互いの顔ではなくて少し遠くの壁を見ながら話していた。これはすでに何度も言い合っていたことで、結論を先延ばしにしているだけの会話だったからだ。
    真島はゴキッと首を鳴らしながら何本目かの煙草を咥え、ピンクと黒のライトストーンでデコられたライターで火をつけた。
    深々と吸い込んで、ため息と共に煙を吐く。

    「もぉめんどいし大吾の指でも10本くらい送りつけときゃええんちゃうか。会長サマの指ならあちらさんも満足するかもしらん」

    真島は吸いさしの煙草を桐生の唇に挟んでやりながら言った。

    「妥協案を試すという意見には同意します。はた迷惑な幹部の首ひとつで済む話かどうか、送りつけて確認してからでも遅くない」

    大吾が深々と葉巻を吸いながら頷き、冴島は武骨なライターを響かせながらその言葉に鼻で笑った。真島は桐生が大人しく自分の愛煙で肺を汚すのを横目で確認しながら、薄い微笑を口元に乗せて温度の低い視線を大吾に向けた。

    「随分と偉くなったもんやなぁ、坊?」
    「ええ。お陰様で」
    「昔より可愛げがなくなったんちゃうか」
    「“可愛げ”で組が回るならあなたがとっくに会長でしょうね。はは」
    「チッ……功利主義の道徳弱者が…」
    「利己主義で無秩序よりかは道徳的かと」

    しばらくの間、静寂が部屋を包んだ。
    こういったコミュニケーションは日常茶飯事なので、誰ひとり気にした様子もなくそれぞれ物思いに耽っていた。脅迫文から目を逸らして、これがドッキリとかだったらいいのにな…という顔で。
    それだけ嫌な内容だった。
    ふー…と一際深く紫煙を吐いた大吾がぽつりと、後悔の滲む声で「今になって思うんですが…」と呟いた。

    「あの男は会長権限で殺しておくべきでした」
    「っ…ふふ」
    「ははは」

    その言葉にぱちりと互いの顔を見た男たちは低いさざ波のような声で笑い、誰もがほんの少し気分が良くなったかのように軽くグラスを掲げた。普段あまり直接的な表現を使わない大吾の、ストレートな言葉が面白かったのだ。
    この部屋に入ってから、初めての笑い声だった。

    漂う煙の中で7つの目が光る。
    その姿は暴力的でありながら穏やかで、美しい魅力に満ちており、海外の古い映画のようだった。







    さて。
    大吾の横、一番端の席に座っている男がいた。
    秋山駿である。

    「……」

    サッパリ事情の分からない秋山は男たちの会話を聞きながら、ジっと床を見ていた。この人たちホント怖いな…どこに笑うポイントがあったんだろう…と思いながら、ずっと嫌な汗をかいていた。
    桐生に「軽く飲んでるから来ればいい」と呼ばれてやって来た秋山は、扉を開けた瞬間に「あ、騙されたな」と悟った。
    気軽な飲み会ではなく、頭のおかしなヤクザの集会だった。
    口紅に彩られた桐生とピンク色の真島の姿にワ…ヮ…っ???と混乱し、恐ろしく淫靡なタイプのゴア映画を見た気分になりながら、これが夢でないことを心の底から呪った。あまりの異様な光景に呆然とした秋山は冴島の座れというジェスチャーを拒否できるだけのキャパシティがなく、大吾の隣にちょこん…と腰掛けてしまったのだ。
    秋山はこの判断をずっと後悔していた。

    会話の内容から彼らが誰かに脅迫されていて、それを拒絶できるだけのカードがない……というところまでは理解できた。あとは真島と桐生が水族館デートしたということも。
    秋山は机に置かれているお手紙を読んでいなかったし、具体的な内容も何ひとつ知らなかった。和やかになったタイミングで尋ねようにも、すぐに険悪になるのだ。なのでずっと「ぁ…」「ぇと…」と切り出しては、男たちの怖い声に搔き消されていた。


    しかしいつまでもこうしていたって仕方がない。
    自分の人生が今後どうなってしまうのか確認するためにも、事の発端らしき手紙を見ようと恐る恐る顔を上げたのだが……

    「――ぇ?」

    視線を上げた先。
    ちょうど真島に顎を掴まれた桐生が、長い爪からチョコを与えられていた。つやつやとした赤いチョコだ。服も髪も乱された上あちこちに口紅をつけた桐生は、まるで女に愛されている最中の従順なペットのようで、直視するのが憚られる雰囲気の中にいた。
    小さく開いた口にチョコが咥えられるのと、桐生が秋山の視線に気付いて緩く目を細めたのは、ほぼ同時だった。

    「っ、」

    心臓が跳ねる。
    見てはいけないものを見てしまった気分だった。
    なんでこの男たちはいちいち年齢規制のかかる空気を靡かせるのだろう。R-18とR-18Gの狭間でしか生きられない生命体なのだろうか。
    桐生の視線は次の瞬間には真島に戻されており、「おいしい?」という男の問いかけに「自分で食った方がうまい」とサラリと返して頬を抓られていた。座りの悪くなるような空気はアッサリと霧散したが、数秒前の光景が脳裏に焼き付いてしばらく離れそうになかった。

    ……ちなみにこの間冴島と大吾が何をしていたかというと、ぼんやりと煙草をくゆらせるだけだった。真横で起こっている非日常的な一コマに眉ひとつ動かしていなかった。


    秋山はドキドキした心臓を抑えてあれ?俺がおかしいのかな…?と思いながら。目的を果たすべく、隣に座っている大吾に「あの、すみません…」とちっちゃな声で話し掛けた。
    大吾はこの中で一番顔が怖くなかったし、言葉遣いも丁寧で、物腰が柔らかく見えたからだ。極道のボスだけど、なんだか物騒な事も言っていたけど、それでも一番マシ……いや、優しく見えたのだ。

    「あの、俺も手紙見ていいですか…」
    「え、あぁ……はい」

    天井に上る紫煙をぼぉっと眺めていた大吾は、今初めて存在に気付いたかのように秋山の顔を見て、「どうぞ…」と三つ折りの跡がついた手紙を滑らせた。
    なんでまだいるんだろう、という顔で。
    秋山はその顔にヘラ…っと愛想笑いして、心の距離を数キロほど遠ざけた。



    『……――寒さに向かう折、刺激のない日々に愛想が尽きる前に、快いお返事をお待ち申し上げております。』

    そう締め括られた文書に秋山は、脅迫文にも時候の挨拶ってあるんだ…と思いながら読んだ。果たしてこれが時候の挨拶と言っていいかは分からなかったが、それらしき文章が微かに存在していたから。

    「……?これは…?」
    「シェアハウスして人間性を培え、という脅迫文ですよ」
    「しぇ、シェアハウス……???」

    秋山が想像していたのは、たとえば近江連合のヤクザを一人百人殺せだとか、警察官を人質にして立て籠もれだとか、そういった命がすんなりと終わるタイプのものだった。
    大吾からの予想外の単語に目をまたたかせる。
    ……なるほど。だから全員危機感から一番遠いところの声で、しかしありったけ嫌そうな顔をして話していたのか。
    一人納得する。
    恐らく『損壊費用』と『トラウマ治療』というのは桐生と真島が原因らしかった。損壊が桐生で、トラウマが真島だろう。
    それに異論はなかったが……改めて達筆な文字に目を落とす。こんなふざけた内容の手紙に、なぜ悪夢のような男たちが頭を突き合わせているのだろうか。普段なら黒ヤギさんも真っ青なスピードで読まずに捨てるだろうに。
    最後の差出人を見る。

    「……墓塚さん、ですか」
    「ああ」
    「ええと、この方に金を払えれば済む話なんですよね?」
    「まぁそうですね。だいぶ法外な金額ですが」
    「はは、法外な請求はお宅の十八番でしょう」

    秋山は「名前がだいぶ怖いな」と思いながらも自分を引きずり込まれた理由が判明してきたため、少しずつ元気を取り戻していた。軽口を叩ける程度には回復した。何をさせられるのか分からなかった間ずっと氷のようだった指先に、じんわりと血液が巡り始めている。
    要は、纏まった金が必要なのだ。
    かつての大幹部ならどこか遠くのあたたかな土地で左団扇の生活だと思っていたが……よほど困窮しているのか。東城会の資金力は当然秋山を上回るだろうが、大金の移動はそう簡単なものではない。なるべく一撃の負担を分散させるために自分が呼ばれたのだろう。

    リスク分散の思考は秋山にもよく理解できたから、マァなんだかんだ世話になってるから協力しますよ…という親切な笑顔を大吾に向けた。
    そんな秋山の表情を見ていた桐生が少し首を傾げ、大吾に「もう一通も見せてやれ」と言った。

    「ああ、はい。こちらが請求書です」

    大吾が秋山の前に請求書を滑らせた。

    「……???」

    法外な金額は、本当に法外だった。
    ゼロが多すぎて、カンマの数を数えたところでそれが結局いくらなのか分からない。

    「…じょ……冗談でしょう…?」
    「冗談やったら俺はこんなところにおらん」
    「俺もです」

    冴島と大吾が重く返事をした。
    秋山はふたたび指先が冷たくなっていくのを感じた。自分が呼ばれた理由がサッパリ分からなくなってしまったからだ。
    こんな金額用意できるわけがない。
    大企業なら…というレベルですらなかった。大国の国庫レベルだ。
    秋山は冗談みたいな額の請求書をそ…っとテーブルに置いて、一番強い酒を頼んだ。

    「半分は嫌がらせで、残り半分は娯楽でしょうね」
    「なるほど……はは…」

    運ばれてきたウォッカを一息に煽り、軽い眩暈に首を振ってから、浮かんだ疑問を解消すべく口を開いた。
    いくらなんでも東城会のトップ相手に脅迫なんてふざけている。相手がかつての大幹部とはいえ、こんな不当な要求を呑む必要ないじゃないか、と。

    「そもそも…」
    「この男はサツの上層部と繋がっとったし、組の弱点がどこかもよう知っとる。このアホの要求を無視すんのは簡単やけど万が一そのカードを切られたらウチらは大迷惑するし、コイツはその万が一を簡単にやる理屈の通じんサディストや。理解したか?」
    「っえぁ、あ、ハイ、ありがとうございます…」

    真島がキラキラ光る爪を弄りながら簡単に話を纏めた。
    秋山は聞こうとしたことを残らず説明され、しかも自分に口を利くとは思っていなかった真島から言われて、ド…ッと心臓が嫌な軋み方をした。
    まさか人語が通じると思っていなかった悪魔が、流暢な日本語を喋っているのを見てしまった時のような気分だった。
    要するに、具合が悪くなった。
    真島の言葉により、なんとなく問題を先送りにしていた男たちの顔色も曇った。逃げ道がないことを改めて突き付けられたからだ。

    金は払える額ではない。
    無視できる相手でもない。
    ならば、要求を呑む他に道はない。

    「「……」」

    部屋を沈黙が包んだ。
    全員の気持ちはひとつだった。

    ――絶対に嫌だ。









    お通夜のような空気の中、いち早く立ち直ったのは秋山だった。
    輝かしい出世コースからどん底に叩き落されても這いあがった男は、誰よりも切り替えが早かった。
    切り替えは社会人の基本。
    秋山は基本の出来る男だった。
    重い空気に流されてしまったが、そもそも自分は関係ないじゃないか…ということに気が付いたのだ。紙に書かれていたのは『損壊とトラウマとその他諸々』に関係する人物だし、それ以前に秋山は東城会のしがらみとは無縁だ。だから神妙な顔をしつつも「なぁんだ」と内心ホっとした。なぁんだ、やっぱり自分は関係ないじゃないか、と。
    なぜ自分が呼ばれたのかという疑問は、すっぽり抜け落ちていた。過度の緊張と弛緩により、物事を理論立てて考える力が残っていなかったのだ。
    秋山は頼んだボトルワインを、「俺にもくれ」と言った桐生のために気前よく注ぎながら言った。

    「まぁでも、要求は一ヵ月ですよね。シェアハウスで事なきを得るのならサクッと終わらせてしまえばいいんじゃないですか?」
    「お前はそれでいいのか?」
    「え?えぇ、まぁ。俺は全然…」
    「いい歳した男五人だぞ?」
    「えっ?男五人……?」

    この空間にいるのが五人。
    シェアハウス強制参加者も五人…?
    ガン、と固い音が響く。
    いつの間にか桐生の上から隣に居場所を移した真島が、拷問器具のような高さのヒールをテーブルに乗せた音だった。凶器のようなピンヒールがちょうど秋山の方向に向けられている。

    「なんやお前、桐生ちゃんとシェアハウス出来るのがそないに嬉しんか。あ?」
    「え?……えっ!?いや俺は、」
    「言うとくけど部屋は別やで。桐生ちゃんと同室は俺だけやからな」
    「おい、俺も個室にしてくれ」
    「え、ま、待ってください、なんで俺まで…」
    「はあ?最後まで読んどらんのか?」
    「最後までって……ぁ、」

    真島が顎で指した請求書の裏。
    約款条項がずらりと並んでいた。

    一、実施期間は一ヶ月。
    一、共同生活区域に設置する監視カメラへの接触は如何なる理由があれど禁ずる。
    一、実施期間中の生活必需品等は当方から支給されるものを使用すること。
    一、必ず一日一度は共同生活者全員で食事を共にすること。
    一、暴力・暴言・その他器物破損行為が見られた場合、実施期間を延長する。
    一、最低参加人数は五名。
             ――云々。

    「……な…………」
    「人数の部分はこれでクリアですね」
    「そうだな」
    「え、ちょっと、待ってください」
    「こうなれば後は肚を括って耐えるだけやな。こない問題にかまけとるほど暇やない。さっさと解放されんと仕事にならん」
    「そういやお前んとこも新しくシノギ広げる言うてたなぁ」
    「シノギもそうやが、木彫りの作品を公民館に展示することになっとってな」
    「ひひ、なんやそれ」
    「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ!なんで俺まで…っ」

    自分を置いて進む話にたまらず声を上げると、桐生が目を眇めるようにして秋山を見た。ク、と上げられた顎と共に見下ろされるような視線が向けられ、思わず姿勢を正す。

    「これは軽い世間話だけれども…」
    「は、はい」
    「俺の友人の刑事がお前の個人間融資活動を知ったら、きっと興味を持つだろうな」
    「しゅ、出資法違反はしてませんよ!金利もほぼ取ってないです。なんなら過去の契約書もすべてお見せ出来ます、俺は潔白です。ささやかな報酬を得るだけの慈善活動です。なのでこんなしがない金貸しは場違いなんですよね、ええ、こんな素晴らしい皆さんと同席するなんて俺にはとても――」

    尋ねた桐生は「ふぅん」と言い、緩く首を傾けた。

    「個室で極道が手っ取り早く言うことを聞かせたいと思った場合、どうすると思う?」
    「――いやぁホント光栄だな、ぜひご一緒させてください!」

    秋山は脅迫された人間の笑顔で言った。
    脅された。湾曲な脅しを躱したと思ったら、直接的に脅された。あの人さっき自分でカタギって言ってたのに……。
    桐生はこの場の誰よりもヤクザだった。
    秋山は桐生の言葉が本当に怖かったから、ふたたび床の一点を見つめることにより心の平均を保つことにした。裏社会の人間に囲まれたか弱い一般市民にできることは、ただ時が過ぎるのを待つことだけだった。



    現役極道たちはたった今目の前で無辜の民が脅されたことに気付いてすらいない顔で、唯一真島だけが、秋山の血の気の引いた顔を見て笑った。

    「人数は最低五名。読む限りやとまぁ俺と桐生ちゃんは必須やし、あちらさんが大吾に送り付けてきた時点でコイツもおったほうがええ。ほんで俺らと生活すんのに互いにストレスの少ない人選で兄弟や。あと一人をどうするかっちゅうところやったけど、必ず東城会の人間とは書かれとらん。これが、お前が呼ばれた理由や」
    「…………あ、はい……」

    気圧された風に頷けば一転、真島の笑顔が穏和なものに変わった。

    「一ヵ月だけや。災難やけどな。どうにもならん天災かなんかやと思て、堪忍しぃや」
    「は、はい……」

    秋山は一瞬、真島が優しい人間だという錯覚に陥った。駄々を捏ねているのは自分で、真島はキチンとすべて説明した上で慰めの言葉までくれたのだ、と。
    潤んだ声で返事したあとで秋山は一から十まで理不尽なことに気付いたのだが、時すでに遅し。
    極道の手口にまんまと嵌められていた。

    「……」

    最悪だった。他人事だと思って聞いていた笑い話なのに、自分も含まれていただなんて。秋山は今こそ警察に駆け込むときでは…?と思ったが、自分の命を賭けたギャンブルをするだけの気力はもう残っていなかった。
    だから桐生に脅された時と同様、未来が真っ暗になった人間の顔でワインボトルを掴み、直接胃に流し込む作業だけに専念することにした。
    自分の未来は自分で決められるなんて、そんな台詞はただの甘い幻想だ。未来は極道に握られているのだ。こんな理不尽がまかり通る世の中は間違っている。秋山は「政治を変えなきゃ…」と強く思った。



    「さて、合意も得られたことですし、いつから開始するかを決めましょうか」

    憐れな生贄からYESを引きずり出した極道たちは、さっさと次の問題の対処に移っていた。

    「いつからやったって同じや。早いとこ済まそや」
    「そりゃそうやけどな、お前らが喧嘩したらその分伸びるんやで」
    「暴言も禁止らしいぞ」
    「はあ?俺が桐生ちゃんに暴言なんか吐いたことあるか?」
    「そういえばもう気狂いお姫様プレイはいいんですか?終わったんならその見苦しい格好もさっさと着替えていただけると有難いんですが」
    「こんなカワイイ俺に何ケチ付けとんじゃ殺すぞ」
    「俺意外には駄目じゃねぇか」

    大吾に中指を立てる真島を呆れ顔で見た桐生は、「まぁでも」と言葉を続けた。

    「期間を設けたからといって兄さんがまともになるとは思えねぇし、俺もさっさと終わらせたい。開始日はそっちの準備が出来次第でいい」
    「せやな。俺も今んとこ急ぎの用もない。合わせるで」
    「ん~俺は来週がええわ。今週いっぱいはプリンセスイベント期間で引っ張りだこやからな」
    「まだこんなイベントが続くのか…?」
    「嫉妬せんでええよ、ウチの心は桐生ちゃんのモンや・か・ら♡」
    「では来週の頭からということで」

    真島の言葉をバッサリと遮り、大吾は話を纏めた。真島と桐生に喋らせるといつまで経っても話が終わらないからだ。冴島も同意を示すように頷き、革の手帳に書き込んだ。
    喧嘩をせず、暴言も吐かず、カメラに日常を映されながら毎日食事を共にする。
    ……深く考えると地団駄を踏んで泣き喚きたくなるくらい嫌だったが、他に打つ手はなかった。

    来週から、男五人でシェアハウス。

    「では、そういうことで…」

    苦い大吾の声で話し合いの終了が言い渡された。
    こうして極道三人+カタギ二人の共同生活が、正式に決定したのであった。
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