【レノとファ】まどろむゆめの、その先にまどろむゆめの、その先に
「レノックス!!!」
行け、という意志の乗った自分の名前を呼ぶ声が、背中を押す。重心を低く落としていたレノックスは、その脚の筋肉をバネにして、大地を蹴った。最前線のその一歩先へ。
「つづけ!!!」
大きくてよく通る、まっすぐ伸びた力ある声。けれども、この声が大きくなくてもきっと自分は気づくだろう。思わずこぼれてしまったかのような小さな声だって、このひとの者であるならば決して取りこぼしたくはない。
声から連想された場違いな思考を頭の片隅におき、意識のかけらもそのひとに向けながら、メイスを大きく振った。脚からの勢いを殺さず、遠心力もかけあわせ、周囲の人間を薙ぎ払う。
揺らぎ、倒れ、起き上がろうとするものに後ろから追いついてきた仲間たちが駆けていく。陣形を崩し、道を作るのが、今回の戦場におけるレノックスの役目だった。
4757