その輝きを その頭髪と同じ色の薄群青のまつ毛が縁取る眼が薄く細められた。ただそれだけだった。
それまで、ファウストを嘲笑う、まではいかずともまだまだ従えるには力不足、我らの力を借りたくばそれだけのものを見せてみろ、と煽るかのように縦横無尽、自由自在、まるで北の大地に荒れ狂う吹雪のように飛び回っていた精霊の気配が変わる。
風のない静かな夜の闇の中、白銀の大地にしんしんと降る雪のような静けさと、冷え切った空気のような張り詰めた気配。それは、自分達を支配することを認めた者の一挙手一投足を見逃さないためか、あるいは、一歩間違えたなら牙を剥いてやらんとする臨戦体制なのか、もしくは、その両方なのかもしれなかった。
箒の上に軽く腰かけた師が、右手を揺らして魔道具であるオーブを出現させる。手のひらからはあふれるけれど、小ぶりなそれをファウストが目にするのは、彼の元で修行を始めてから今日で二度目だった。
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