クリスマスのぬすと蘭嶺 男の二人暮らしでツリーっていうのもね。
そんな風に直接言葉にしたことはなかったけれど、お互いもういい年齢だし、なんとなく気恥ずかしくもあって、同棲を開始して以来クリスマスの飾り付けにはノータッチだった。キャンドルだったりオーナメントだったり、かわいいインテリアの類は嫌いではない。季節のイベントごとも好きな方ではあるけれども、日本では恋人同士のイベント色の強いクリスマスを、より強調するような演出をすることに照れがあったのかもしれない。リアルに「恋人」として日常を過ごす部屋だからこそ。
そんな感じでささやかに過ごしていたクリスマスシーズンは、彼らの登場で転機を迎えることとなる。
『ぬす』と名乗る自分たちによく似たぬいぐるみ。驚くことに、彼らは動くし人間と同じ言葉を喋る。ぬすと人間の不思議な四人暮らしが始まったのは、まだ寒い冬の頃だった。
6815