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    はやて

    @sir0_r0

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    はやて

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    ngss
     添い寝(というよりは同じベッドで寝てるだけ)の話。
     ※展後。ngmが秩序復帰というご都合捏造ifでお送りしています。

    子守唄と目覚まし*
    *
    「お前、何でおるん?」
     バスローブを着用し、首に引っ掛けたタオルで髪を拭きながら神々廻はソファから足を投げ出して転がっている男の顔を見下ろす。
     別任務だったこの男──南雲が部屋に入って来た時から気付いてはいたが、いちいち反応するのも癪だからと疲れた体を癒すことを優先していた。
     南雲は一瞬神々廻を瞳に映したものの、片腕で視界に蓋をしたまま動く気配がない。
    「不法侵入しといて何もないんかい」
     返答がないことにはさして興味がなく、備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを一本手に取ると数口呷り喉を潤してから向かい側のソファへ身を沈める。
    「なんか疲れちゃった」
     普段ブラックだの何だのと不満を漏らすのは神々廻の方で、南雲がそれを口にするなんて珍しいこともあるものだと僅かながら目を見開いた。
    「…ま、人に隠れてこそこそ動いとったら当然ちゃうんか」
    「怒ってる?」
    「別に」
    「怒ってるじゃん」
    「呆れとるだけや」
     いくらか容量の減ったボトルをわざと顔面目掛けて放ると器用に受け取った南雲がやっと体を起こした。残りを飲み干し空になったボトルがローテーブルに置かれる。肘置きに頬杖をついて一連の様子を眺めていた神々廻がおもむろに立ち上がると、南雲は動く猫じゃらしを追う猫のような丸い瞳でその姿を追いかけた。
    「寝るの?」
    「寝る。こっちも疲れとんねん」
    「じゃあ僕も。もうちょっと詰めて」
     ジャケットとネクタイを脱ぎ捨てベッドに膝を掛けると先に寝転がる神々廻を押しやり、そうして無理矢理確保したスペースに体をねじ込んだ。
    「いや狭いねんて。さっさと帰れや、もー」
    「やだ。こうしてないと寝れないもん」
     セミダブルのベッドに男が二人並ぶのはどう考えても無理があるのだが、神々廻の肩を後ろから抱え込んでいる南雲は腕をいくら叩かれても抓られても「痛いよししば~」ところころ笑うだけで一向に離れる気配がない。
    「僕の仕事のパフォーマンスが落ちたら神々廻のせいだからね」
    「プロやろ、なんとかせえや~」
     最初こそどうにかして引き剥がそうとしていた神々廻だったが、今となっては諦めが勝ってしまい南雲が首筋に顔を埋めてこようとも無表情でスマホをいじっていた。
    「神々廻はまだ傷庇ってるけど大丈夫だったの?」
     そう口にした瞬間に神々廻の手からスマホが滑り落ち、ベッドのスプリングに跳ね返って絨毯張りの床に落下した。ゴツンと重く響く音を皮切りに全身を突き刺すような痛みが走って一瞬息が詰まる。ゆらりと体を起こした神々廻の髪の隙間から覗く冷たく深い碧とかち合えば、ますます呼吸が苦しくなっていった。
    (あ、やばい)
     そう直感したものの視線を逸らすことが出来なかった。じっとりと湿った手のひらを拭うようにシーツを握り締めて起き上がれば、僅かに震える手を神々廻の後頭部に添えて自らの方へ引き寄せる。
     しかし互いの唇が重なる寸前に差し込まれた手のひらが南雲を顔ごと向こう側へと押しやった。神々廻は深いため息を絞り出したかと思えば毛布にしっかりと潜り込んで背を向けてしまった。
    「…ししば」
     震える唇で、どうにか名前を呼んだが反応はない。長い髪に覆い隠された表情を窺うことは出来ないが、他者に負傷を悟られること──ましてや南雲に傷を庇っていると指摘されたことが神々廻の殺し屋としての矜恃を傷付けてしまったのだろう。南雲としては、ただ純粋に傷の具合を案じての言葉だったのだが逆効果となってしまった。すぐ手の届くサイドテーブルに並んでいる銃もネイルハンマーも向けられず、小言の一つも返ってこないのは正直気味が悪い。
     もう一度神々廻に触れようと伸ばした手を途中で引き戻した南雲はベッドの端で体を縮こませる。
    「邪魔しないから、ここにいてもいいよね」
     普段よりも大分弱々しい声色が静かに溶けていった。
     
     どのくらいの時間が経ったのか。疲れているはずなのに未だ寝付けないでいる神々廻は、身動ぎの一つもせず規則正しい寝息を立てて眠る南雲の丸い背中をぼんやりと眺める。
    (寝れないもん言うてたの、どこのどいつやねん)
     すっかり毒気を抜かれた神々廻は被っていた毛布を整え、お情け程度に南雲も入れてやる。そして大きな欠伸を一つ漏らしてサイドランプの明かりを落とした。
     
     ***
     
    「……ん…」
     肌寒さで意識を浮上させた神々廻は開かない瞳をそのままに手探りで毛布を探したが、一向に見つけることが出来ず仕方なく体を起こす。
    「……」
     視界を覆う髪を鬱陶しそうにかき上げつつ周りを見渡しても毛布はどこにもなく、隣にあったはずの姿もない。
    (じゃあもうここしかないやん)
     ベッドの下には案の定、しっかりと毛布に包まれた見事なみのむし状態の南雲が転がっている。
     神々廻は手に取ったネイルハンマーをくるくると回した後、躊躇いなくみのむし目掛けて振り下ろした。
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