反転世界 👹寿郎と❄柱のお話 出会い❄柱と鬼 のお話 出会い
霧雨が煙る中、猗窩座は紫黒に染まる叢林の中を足早に歩いていた。
普段なら半刻もかからずたどり着ける場所に藤の家があるとなれば走って行くところだが、どうにも今日は足が重い。
雨でただでさえ足場の悪い山道がぬかるんでいる事だけが原因ではない。
今回の任務で倒した鬼はさして強いものではなかったが、たくみに姿を隠して随分と山の奥深くまで逃げ回られ、かれこれ三日はまともに睡眠と食事をとっていない。
夜明けまではまだ随分と時間がある。雨宿りをして小休止をするべきか、全力疾走して一刻も早く藤の家で湯に浸かるかと迷う猗窩座の目の前に寂れた社が現れた。
人の足が遠のいて幾年たったのか、苔むした柱と穴だらけで半壊した屋根、こういう場所には悪い気が凝っているものだ、早々に通り過ぎた方が良い、そう思う心と、腰を下ろして一息つきたいという気持ちを量りにかけて、猗窩座は後者を選んだ。
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