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    kokotoro1

    @kokotoro1

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    kokotoro1

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    RTリクエスト企画で、花子さん(@hanagun12)からいただいたリクエスト……が特にありませんでしたので、こちらで自由にやらせていただきました。
    Z3時獄編のシャアム独白というか、シャア独白という趣味全開でごめんなさいませええええorz

    さかしまに世界へ爪立てる者――どんなに
    ――醜くて つまらなくて
    ――どうしようもなく…… ちっぽけな この世界であっても……


    ――ここは

    ――俺と お前が 出会った せかい  だから……


    ――だ から   どうか

    ――   まも って……



    「…………!!!」

    声にならない叫びが空気を揺らして、シャアは恐ろしい速さで鳴り響く心臓の鼓動を感じ取りながら目を開く。
    全身から吹き出す冷や汗の冷たさ、浅く早く短い吐息が何度も耳を響かせる音で、今までのすべてが夢であることを確認する。
    まただ、と。
    煩わしさを拭うように、上体を起こして額を拭う。
    何度も何度もこれまで見てきた悪夢を、また、今日も見た。

    「……折れろと言わんばかりに……忌々しい」

    心底。
    悪夢に忌々しいと舌打ちして、シャアは心臓の鼓動に落ち着けと命令を下す。
    悪夢の正体は知っている、わかっている。

    「私が道化になるのは 過ちを繰り返させないためだ」

    自らの決意を忘れぬよう。
    悪夢を見せる己の罪業を振り払うように、告げる。
    その口調は、とても冷ややかなもの。

    「もう二度と アムロを失わぬと 私は決めたのだ」

    あの悪夢のようにはさせない。
    絶望と恐怖をまとった闇夜の鴉よりも、まだ漆黒の闇深きそれらによって。
    全てが蹂躙された光景。
    地球を浄化し地球の民に鉄槌を下さんとアクシズを堕とそうとしたジオンのものも。
    地球を汚染しようとするものから地球の民を守らんとしたZEUTHのものも。
    みな等しく、恐怖と絶望の前に蹂躙しつくされた。
    ……最後まで生き残るのは、決まって、二人。

    シャアとアムロ、黒歴史の始まりを告げる二人だと、かつて告げられた。
    絆で結ばれたはずの、二人。

    止められないほどに地球に近づいたアクシズを、それでも止めようとするアムロのνガンダムを。
    その翼をもぎ取り、武器を使う四肢を破壊し、諦めぬ意思を示す頭部も消し飛ばされ。
    ……残った胴体を、高々と持ち上げるのだ。

    黒歴史のはじまりを言祝ぐ 生贄かのように。

    そしていつも、シャアは。
    エネルギー砲によって撃ち貫かれるそれを、止められない。
    同じように膾切りにされ、無力化されたサザビーでは、それを止められない。
    アムロの懇願と祈りは。 優しさに満ちた心は。

    黒に蹂躙されて いつも 宇宙に散華する。


    ――――それを果たして何度 見てきた のか。


    「……そう。この悪夢と同じようには、させない」

    今はアムロすら欺かねばならない。
    Z-BULEと名乗って、再び、巨大な闇に立ち向かっているアムロを誇らしく思う気持ちは、秘さねばならない。
    彼とともに戦いたいという思いは、今はまだ秘めねばならない。
    再び、アムロを失う苦しみと痛みを回避するためには、まだ足りないのだ。
    全てが揃い、宇宙の運命を弄ぶ者たちへの反撃の矢を撃ち放って。
    ともに愛する者と宇宙を駆け抜け、その隣で暖かなぬくもりを分け合うそのために。

    「私はそのために……今、ここにあるのだから」

    最期の最期まで、醜いと憎んだ世界を愛し。
    いつまでも飛び立てぬ人の矮小さを赦し。
    同じ過ちばかり繰り返す、生命のつまらなさをいとしいと。

    己が死にゆくその時まで、ほほ笑んだアムロを今度こそ。
    守りたいと願った思いは、決して揺らぎはしない。

    「だから。 かつての私よ  邪魔をするな……」

    悪夢という形で決意に水をかける、かつて、このような光景の果てに絶望に堕ちた己自身への怒りを口にして。
    シャアは決意する、手繰り寄せる運命は、決してこのようなものにしない、と。
    愛している彼を失わぬために、改めて誓うシャアを。
    夜だけが静かに見つめていた。
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