燕青召喚記念SS 某日、カルデアにて。
「水着の人だ」「前の方で横たわってる人だ」
「実物も半裸なんだ」
「普段はポニーテールじゃないのか」
先程召喚されたばかりの燕青が、初めて訪れた食堂で耳にしたのは、先住サーヴァントたちが口にする謎の言葉の数々であった。
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謎と言えば、こちらもだ。
「燕青! 随分待ったのだわ!! あたちは天微星を冠する、九紋竜エリザ!一緒にカルデア梁山泊で頑張ろうね!!呼延灼にも早く来てほしいのだわ!」
プリテンダーとして、九紋龍史進の力を借りるサーヴァント、九紋竜エリザ。
その事情も未だ知らず、『九紋竜を名乗る謎の幼子』から親しげに話しかけられた燕青は、何と返せばいいかわからず、思わずその隣にいたサーヴァントに助けを求める視線を向けた。
その意を汲んだサーヴァント・黄飛虎は、九紋竜エリザというサーヴァントの成り立ち、彼女がカルデアで『梁山泊』を結成していることなどを簡単に説明してくれた。
「某も実際に体験したわけでは無いが、ハロウィンに特異点で色々あったらしくてな。
詳しく知りたければカルデアスタッフに声をかければ特異点での記録も見ることは出来るが……。まあ、そう急くこともない。カルデアに慣れていけば自ずと知ることになるだろう」
新入りを気遣う黄飛虎の声音と眼差しは優しく、これからのカルデア生活に一抹の不安を抱いていた燕青は肩の荷を下ろした。
「ここのサーヴァントたちは皆親切だ、何かわからないことや困ったことがあれば周囲に声をかけると良い。声を掛ける相手に悩んだときは、いつでも某を呼んでくれても構わない」
先程から、九紋竜エリザが黄飛虎に懐いた様子を見せている理由は、聞かずとも明らかだった。
その後、燕青自身も黄飛虎と仲を深め、カルデア内で共に過ごす姿がすっかりお馴染みの光景となる。
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召喚から数週間経ち、カルデアにもすっかり慣れた頃。マイルーム番というものに選ばれた。
普段は黄飛虎が務めているマイルーム番だが、新しく来たサーヴァントも一度は任命されるのが習わしだという。
その役割を務めるために訪れたマスターの部屋。
今やっと、召喚初日に聞いた言葉の数々の意味を理解した。
白を基調とした部屋に、いくつか細々とした小物や写真立てが飾られている。
その部屋の中で一番目立つ、大きなタペストリー。
「なあ、マスター、それって……」
それに向かって指をさす。
そこには、青い空と海のもとで水着姿になって横たわる燕青のイラストが飾られていた。
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マイルームに飾られているタペストリーは、C102で販売された燕青と黄飛虎の描き下ろしイラストB2タペストリーです。