あめやさめ「ふっ!」
刃を振るい、肉を断つ感触。消滅音と共に相対していた敵の存在が塵となり消えるのを確認してからひとつ息を吐く。曇天も重く雲行きが怪しい天候で、本格的に降り出す前に帰還しようというところで時間遡行軍が湧いて出たのはつい先程のことだった。そこそこに数が多く散り散りに戦わされ、数体を屠ったものの疲労の芽が顔を出し始めた。その上この狭い山道だ、戦いにくさが立ち回りを鈍らせる。早めにかたをつけようとすぐに次の標的へと向きなおろうとした時、死角から敵の刃が迫った。脳では気づいたが体の伝達が間に合わない、一太刀は浴びる覚悟をした、瞬間。ひとつの影が五月雨の前に躍り出た。ギィン!という鈍い金属音が響く。
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