かなり影響を受けてるミカアダミカエルは激怒した。必ずかのアホな弟を叩きのめさねばならぬと決意した。
「ミカエル、お久しぶりです。突然の呼び出しをしてしまいすみません。急を要するもので」
「あぁ、別にいいよ?どうせアイツだろ?
今度は何をやらかしたんだ?あの愚弟は」
ミカエルは、久しぶりの休暇で鍛錬しようと思っていた矢先に呼び出され。不機嫌に言葉を返した。
その様子を見たがセラは、変わらぬ凛とした態度で問題の原因について話し出した。
「確かに、ルシファーの事よ。
彼は今エデンに居ます。」
「エデンって、君が任されている所だろ?
君たちで解決してくれよ。俺は別にエデンを任されていないし、天使は創作物とあまり関わるなと言われている。」
「えぇ。確かにそうなのだけど」
エデン。確か人間という主の傑作が居るはずだ、あのバカルシファーがずっと話していたな。やはり今回はそれにご執心ということか。
「ルシファーがリリスという主からの命令で妻になるはずだった人間となんだか仲がいいらしいの…夫のアダムより。」
「待った。つまりはアイツは、そのアダムって子から妻を寝取ろうとしてるの?!ウッソだろ。
主からの命令に背くようなことだけはって教えたのに…っ!」
「そう。あの子も熾天使です。そしてあなたが兄だから止めてきてちょうだい。」
「あぁもうわかったよ。エデンへのゲートを開けて。」
「頼みましたよ」
セラは、少し不安気な顔でエデンへのゲートを開いた。
ミカエルはゲートが開いた瞬間6つの美しい羽を出し、自然の美しいエデンの青く澄み渡った空を飛んだ。
はぁアイツ、気配を消してまで
ココに留まっているのか小賢しいな。
少し遠くの方で草木の揺れる音を拾い、その方角へ羽を進めた。
「ルシファー!ここなのか?!」
「わぁっ!?えっ?!」
目の前でどちんッと尻もちを着く音と確実にルシファーでは無い者。
「す、す、すまない!早と…ち…りを……」
ミカエルは、忘れていた。エデンにはルシファーだけでなく人間がいた事を、そしてルシファーとミカエルは同時に作られた双子であること。
ミカエルは、手を差し出した状態で固まってしまった。
「?天使…様??あのお手ありがとうございます。えっと…あの?」
人間は、突然現れ、手を差し伸べて顔を真っ赤にして固まってしまった天使に対し少し困惑していた。
「エッ⤴︎︎?!アッ⤴︎︎⤴︎︎!いやっ?!
初めまして!私はミカエルだ!君の名前は?」
ミカエルは、声を裏返しながら人間に語り掛けた。
なん、なんだかゾワゾワする。
なんて美しいんだ…わっ…うごいてる…しゃべってる…喋りかけられてたっ!?
混乱極まれりである。
「私はアダムです。ミカエル様ですか!
いつもくる天使様と似ていらっしゃいますね!」
あぁ、そうだ。忘れていた。
ルシファーを探していたのだった。
いや、もうアイツよりコッチだ。
「あ、あぁ、そうだね。きっとソレは私の弟だ。
だから似ているんだろう。私はソイツを探しに来たんだ。場所を知らないかい?」
アダムは、一瞬顔を曇らせたが何事も無かったかのように話し出した。
「えぇ、知っていますよ!
先程見掛けたら湖のほとりでリリスと共に居ましたよ!」
「そうか。ありがとう!でも私はここに来るのは初めてで…案内してもらっても良いかな?」
「えっ…あ…分かりました!」
アダムはまた顔を曇らせ少し悩んだが快く了承をした。天使相手だからだろうか…
少しムリを言ってしまったかな…
いや、コレは多分アイツが原因だろう…主から賜った妻が奪われかけているのだから。
そりゃそうか…助けなきゃっ!
でも、今はこの子との時間を楽しもう。
「ねぇ、アダム。少し聞いていいかい?」
「もちろんですよ」
「愚てっ……弟は…ルシファーは、ここでいったいどう過ごしているんだい?」
「天使様ですか?
あの方はお優しいですよ。色んな美しい魔法を見せてくれたり、天国についても教えてくれます!お兄様についても喋っていましたよ!」
「へぇ?例えばどんなことを言っていたんだい?」
アダムは、天使に対して楽しく話をしていた。
ルシファーが前に作って持ってきたものや、主の話、美しいエデンの動物たち、たくさんの話をにこやかに語ってくれた。
とても可愛い
語らい歩いていると、ほとりに近づくにつれ楽しそうな話し声が聞こえてきた。
そしてアダムは歩を止めた。
「?アダム?君は行かないのかい?」
「私は…はい…行きません…」
声が聞こえた途端、先程までの楽しげな顔とは一転し複雑で寂しそうな面持ちになってしまいミカエルは元気づけようとアダムをソッと抱き空へ舞い上がり原因であろうルシファーからかなり離れた位置でアダムを羽で包み込んであげた。
「ここならルシファーにもリリスにも主にも聴こえないよ。」
不安気な顔のアダムが更に泣きそうな顔になり、コレまで溜め込んでいたであろう、不安をミカエルにポソポソと喋りだした。
「天使様…私はリリスが来てから1人になってしまいました……。リリスが来る前はルシファー様がよく話に来てくれたのに今はリリスにばかり…」
「リリスも私が命令に従い支配しようとして以来…ルシファー様と…ズビッ
リリスは、私を捨てたのでしょうか…
でもリリスは…うぅ…」
「グスッ…私はいまだに2人共大好きです…
置いていかないでっ、…欲しい…」
そして、初対面の天使様にこんなこと…と目を赤くしふにゃふにゃと泣きながら笑うの痛々しく
心を締め付けるような思いであった。
ルシファーはこんなに可愛い子にこんな仕打ちを?
ここで冒頭のシーンである。
やはりアイツは愚かだ。必ず除かねば
しかしこの子はきっとまた1人になる気がする…リリス…という子が戻ってくる可能性は低い…
「ねぇ…アダム、」
ミカエルは美しい羽を1本抜いてアダムに差し出した。
「え?」
「この羽に少しの魔法をかけた。
この羽に向かって私の名前を呟いてくれれば主の命で居ない時以外は現れるよ。」
「でも、大事な羽が…」
「いいよ。もうちぎっちゃったし!貰って!
私は君の味方だ。」
こくんっとアダムが頷きその手に美しい羽が握られた。たったこの数時間。
アダムにとってもミカエルにとっても忘れられない時間である。
その後ルシファーは、ミカエルに天国に連れ戻され、こっ酷くセラとミカエル叱られるのである。