雀百まで　私と夫どちらとも似ていない真っ白な容姿。2人共金髪で瞳も違う色だけれど、きっと神様からの使いだわ。こんなに愛らしいんですもの。気にせず沢山可愛がるつもりよ。それにしても、手の掛からない子供だわ。3歳になっても魔法の暴走もないし、少し心配ね。嫌な予感が当たらなければ良いのだけれど。
　息子が5歳になった。やっぱりこの子は魔法が使えないのかもしれない。いいえ、そんなはず無いわ。私達は純血ですもの。夫にも相談してみたけれど、もう少し様子を見ようって言うだけで特に焦ってる様子も無いの、私は心配よ。
　夫の書斎で日々勉強している様で、魔法の知識だけは増えて行くみたい。私に沢山知識を話してくれるし、実践しようとしてくれる。でも唸るだけで魔法の流れさえ感じ取れ無い。
　友達と遊んでる時に喧嘩して、泣いちゃったんだけど、涙が川みたいになって他の子を流しちゃったんだよ！と興奮し嬉しそうに話して来る息子が目の前で魔法を再現しようとしているらしい。何も起きないじゃない、嘘をつかないでちょうだい。どうしてそんなウソがつけるの。


　息子は魔法が使えないらしい、要はスクイブだ。妻には不倫を疑われたが私がそんな事するはずが無い。するなら君の方だろう、とは口が裂けても言えない。愛の言葉さえ、聞き届けてもくれやしない。息子の前ではせめて、優しい君でいてくれと願っている。
　どうやら息子に、私達の喧嘩の原因を勘付かれてしまったらしい。当たり前だろう、こんなにも2人で息子に当たってしまったのだから。今では言い過ぎたと思っている、許してくれ。お前のせいでも妻のせいでも無い、誰の所為でも無いと言うのに。次は3人でちゃんと話そうな。
　最近息子に避けられている、それもそうか。あんな事があった手前会い辛いだろう。居場所を屋敷僕妖精に聞くと湖に居るらしい。いつもは家で友達と…そうか、もう話は広がってしまったのか。そんな事を考えつつ湖へ向かうと妖精と戯れている息子が見える。お前、魔法生物は見えるのか？じゃあやっぱり魔法が使えるのか？いやでも、と次々と浮かんでくる幻想を払いのけ、夕御飯だぞと声を掛け手を伸ばす。心なしか息子が微笑んだ気がする、そう言えば最近見ていなかった顔だ。忘れていた、そうだ私の息子だ、間違い無く私の息子なのだ。


　また、2人喧嘩してる。今日は一段とヒートアップしてる、大丈夫かな。僕はリビングの扉を開けて2人の様子を見てた。もう少し近付いてから声掛けようかな。ママは前より怒りっぽくなった、パパは前よりちょっと優しくなった。ママとパパ2人で居る時はどっちも怒ってる、3人で居る時は静か。もっと一緒に喋って遊んで欲しい、でもそれをするとママが機嫌悪くなるから我慢しなきゃ。パパとはお外でたまにお喋りできるんだ、妖精さんとのお喋りよりずっと楽しい。親戚のお友達は居なくなっちゃったけど、1人だけ手紙のやり取りはしてるの。とっても優しいお兄ちゃんみたいな人なんだ。たまに意地悪言って来るけどね。あ、ママが杖持ってる、何するの？パパ大丈夫かな。ママ！パパ！


ママ？パパ？
あれ、さっき何してたんだっけ、ママとパパが真っ赤な床に倒れてる。寝ちゃったの？そんな所で寝たら風邪引いちゃうよ？で、何だっけ、2人が喧嘩してて、僕が止めようとして、風？窓開いてたっけ。ああでも今日はもう静かになったね、いつもはもっと話してるのに。あれ、屋敷僕妖精さんどこ行ったの？

コンコン。

誰だろう。僕しか居ないから出なきゃ。






魔法省の話によると、魔法の痕跡は見られるが誰が使ったか分からず犯人は分からない。恐らく、闇の魔法使いの仕業だろうと推測。子供の死体は発見されて居ないので連れ去られたと見て捜査を行なっている。


　一家殺人事件、当時8歳の少年が行方不明になり役2年近く経ってしまった。本日は森を捜査している。深くまで来たがまさかこんな所には居ないか。いや、万が一の為だ。たしかこの奥に湖が有ったはず、そこまで行って今日は引き返そう。ん、あれは、妖精か？一緒に居るのは、まさかな。真っ白い彼はまるで…。
　天使の様だったと見つけた捜査員は言っていたがそうは見えない。薄汚れた少年だ。小さな傷があるが大きな物は無いように見える。監禁されていた時何もされなかったのだろうか。少年に聞いてみてもあまり覚えていない様で返答が曖昧だ。兎に角病院へ行って診察をしてもらおう。

　検査を受けさせた、がどうやらダメなとこは無いらしい。精神もだ。こんな小さな少年が無事だとは思え無いが案外強い心を持っているのか、犯人が何もしなかったのか分からないが、専門家が言うなら大丈夫だろう。しばらくは様子を見て親戚か孤児院に引き渡す事になるだろう。