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    少し不思議なお話でシリアスな話にしたかったけれどどうしてもシリアスは難しいという罠。
    さいぼぐ風味ただの妄想

    #psyborg
    #PsyBorg

    電気羊は甘い夢を見るか?こんばんは、今日の月は良い三日月ですねぇ。まるで笑っているかのように。おや、ここの店はハジメテ?ええ、ええ、この薄暗い地区ではお見かけしない格好良さ。おっと、お待ちください。全く興味が無さそうですねえ…困ったなあ。今日は世界に一つしかない物をようやっと並べられるようになったんです。お客様はタイミングが良い。どうです?興味が出ましたでしょう?さあどうぞ中へ。

    ーーーいってらっしゃいませ。



    ーーおや、珍しい。こんなところにお客様が。来るつもりは無かった?なるほど表の者が大変失礼なことを。けれどウチを見る価値は有るかと。きっと貴方にとって忘れられない物と出会えるはず。どうぞ店内をご覧になって。ーーー色々な物があるでしょう?今日はとっておきを仕入れたんです。まだ販売できる状態ではありませんが…はい?ああ、はい、はい、表の者は購入できるとは一言も言っていなかったでしょう?ふふふ、冗談ですよ。貴方がもし気に入って直ぐにでも持ち帰りたいとご購入頂けるのであれば、急ピッチで調整いたしましょう。

    さあ、奥の部屋へどうぞ。本日の目玉はーーー

    どうでしょう珍しいでしょう?この時代には到底遅れている珍品ですけれど、エレキで動く電気羊でございます。ん?なんだこの反応…失礼、こちらの話です。え?羊じゃなくて人型?ええ、ええ。この電気羊、エレキを充填しても動かないんですよ。先ほどからこの…見えますか?首の後ろ。ここにエレキを送るケーブルを繋げているでしょう。そしてこの液晶にエレキの充填率が表示され………おやおや。いえ失礼。ここが100になって目を開くのですが直ぐに閉じてスリープモードになってしまって…いたのですが…なるほどなるほど、この電気羊は貴方を気に入ったようです。見てくださいこの液晶、心電図のように波打っている。もうすぐ目を開けますよ。なぜ私が詳しいのか?

    ーーーーそれは秘密です。

    ニタリと笑った店主が自分の手を引き、その電気羊の直ぐ目の前に連れ出す。さあさあと背中を押され、じっくり観察するように視線を滑らせた。


    目の前で椅子に座らされ硬く目を閉じている人型はそれはとても美しく、微かに店内へ流れ込む風が人型の髪をさらさらと遊ぶ。だらりと下がった腕は電気仕掛けだと主張するように紅く赤い義手。椅子の背もたれに背をつけて座っているが、顔は少し俯いている。目にかかった前髪の分け目から覗く同じ銀糸の長いまつ毛。それを際立たせるように引かれた赤いライン。薄く白い唇は薄く開き今にも口を開きそうだ。生を感じる。それもそのはず。エレキで動くとは言え元はニンゲン。もうこの時代では見られないような古い形だがそれを感じさせない。

    どうでしょう?気に入りました?コレも貴方のことをとてもとても気に入ったようです。なぜ分かる?そりゃあもう。貴方がこの部屋に入ってきてからコレは息をし始めました。鼓動を動かし始めました。まるで貴方が酸素だと言わんばかりに。どうでしょう、一品物ですよ。今ならなんと貴方の言い値。ほんのお気持ちを頂戴できれば。持ち帰って目覚めないガラクタのままなら返品ください。もちろんクーリングオフ。全額返金。目覚めたならば貴方の側近として使えるでしょう。秘書のように仕事の側近として、ハウスキーパーとして。おっとコレは料理が壊滅的に下手ですのでそれ以外ならば使えますよ。そうそう、余談ですが貴方の趣味趣向はどうであれ、コレは被虐趣味がありまして。そう言う"使い方"も可能です。


    ーーーーお買い上げ、誠にありがとうございましたァーーー

    は、と気が付くといつもは通らない裏通り。先ほどの店の名前を確認しようと振り返るがそこには何も無い朽ちた無人の雑居ビル。ぞわりと背筋を強張らせ、無意識にこぶしを握りしめるとくしゃりとした紙と何か硬い物の感覚。

    先ほどの店で購入の段取りをした書類、そして古びたアンティークの鍵だった。


    朧げな記憶の中、けれどはっきりとあの美しい人型は覚えていて。店主の話では二日ほどで届くと言ってただろうか。今日がその日だ。

    驚くほど早く目覚めて充電コードに繋いでいたスマートフォンの日付を見て瞬く。その日だと自覚して、よくわからないそわそわとした感情に下唇を噛む。ベッドから抜け出してリビングのソファへコーヒーを片手に腰掛けけ落ち着こうとコーヒーを一口。

    「あっつ…」

    冷ましたと思っていたコーヒーは驚く程熱く、覚醒していなかった脳が急速に目覚める。舌を冷ましていると来客を告げるチャイムがなり、勢いよく立ち上がって足が絡まりそうになりながら玄関へ走る。

    「ハジメマシテ、マスター」

    扉を開けて視線を上げるとそこには鮮明に焼き付いていた銀糸を揺らした青年が薄く微笑んで立っていた。

    「はじめ、まして。」
    「マスター、貴方のお名前は?」

    「うき、浮奇・ヴィオレタ…」
    「良い名前だ、貴方に相応しい綺麗な響き。とても良い。俺はファルガー・オーヴィド。旧式のアンドロイド。貴方の生活をサポートさせてください。」
    「と、とにかく入って…詳しい話はそれから…」

    美しい人型、ファルガー・オーヴィド。アンドロイドやヒューマノイドは昨今ニンゲンと同じような肌や思考を持つ最新型が主流だ。彼のような義手や義肢は珍しい。
    部屋へ通してソファへかけるように促すが、ファルガーは頑なに座ろうとしない。首を傾げて浮奇の言葉を、命令を待っているようだ。じ、と見つめられる髪と同じ色の瞳にうっすらと紫色が見え、思わず同じような色をした自分の毛先を弄る。人見知りなんだと告げれば、彼はゆったりと笑みを見せて片手を前に出した。

    「握手をしよう。そうすれば少しは緊張が解けるかもしれない。」

    ニンゲンと同じ思考を持つ最新型と同じく、彼の言葉からは温かみを感じる。そっと彼が出した片手に自分の手を重ねると彼はそのまま片膝を付いて恭しく自分の手の甲へ唇を寄せた。

    「え!?ちょ、ちょっとまって!」
    「何かおかしいことが?困ったな、今の時代はどうするんだろう。自分の主人への最高敬礼だと思ったんだが…」
    「主人って…」
    「違うのか?アイツはそう言っていたんだが…」
    「あいつって、あの店主さん?」
    「そう、名前はレガトゥス。俺をスクラップ寸前で拾い上げてメンテナンスをしてくれた。」

    片膝をついたままこちらを見上げてまた首を傾げるファルガーに落ち着かないからとにかく座って欲しいと告げる。それは命令か?と問うて動かない彼に、浮奇は命令!と返した。クスクスと笑いながらソファへ腰掛けるファルガーを見て浮奇は大きくため息を吐いた。まったくよくわからない状態で彼を購入したのは確認しなかったこちらにも非が有るが混乱が脳を占める。

    「アイツ、碌な説明をしていないんだな。」
    「気が付いたら、こうなってた…」
    「OK、クーリングオフは何時でも適用される。まずは俺の説明からしようか。」

    ソファへ腰掛けたファルガーは足を組んでどこから話そうかと呟く。その前にマスターも座ったらどうだと提案され、ぎこちなく頷いて隣に腰掛けるとファルガーはその初心な反応に特徴的な笑い声で大きく笑った。


    「つまり、君は最近のヒューマノイドと一緒で…俺たちニンゲンのサポート機能が備わっている、と。」
    「そうだ。家事、洗濯、清掃から仕事のスケジューリングやセックスの相手まで。」
    「は!?セ!?え?!」
    「俺は男型だからマスターの趣味に合わないのであればそれ以外でマスターをサポートしよう。」

    センシティブな事を呆気なく話すファルガーに浮奇は猫が全身の毛を逆立てるように驚きを見せる。その様子にまたファルガーは大きく笑ったのだった。

    「それで、どうする?俺はクーリングオフか?」

    ひとしきり大きく笑った後、ファルガーはすと真剣な表情をして浮奇を案ずるように見つめる。返却されることを恐れているような瞳の揺らぎに、浮奇は思わず彼の手に己の手を重ねた。

    「それは、しない。あの日最初に君を見た時から、俺は君に惚れちゃったみたい。」
    「良かった。…惚れた?なるほど、それはセックスの相手も望まれていると。」
    「してくれるの?」
    「マスターが望むなら。」
    「命令はしないよ。君も俺たちニンゲンのような思考を持っているなら、したいって思ってくれるまで待つよ。ニンゲンはそうやって色々な時間を共有して、深い愛情を持ってからするんだから。」
    「OK。じゃあ改めてよろしく。マスター浮奇。」

    「よろしくね、ふーふーちゃん」
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    DONE少し不思議なお話でシリアスな話にしたかったけれどどうしてもシリアスは難しいという罠。
    さいぼぐ風味ただの妄想
    電気羊は甘い夢を見るか?こんばんは、今日の月は良い三日月ですねぇ。まるで笑っているかのように。おや、ここの店はハジメテ?ええ、ええ、この薄暗い地区ではお見かけしない格好良さ。おっと、お待ちください。全く興味が無さそうですねえ…困ったなあ。今日は世界に一つしかない物をようやっと並べられるようになったんです。お客様はタイミングが良い。どうです?興味が出ましたでしょう?さあどうぞ中へ。

    ーーーいってらっしゃいませ。



    ーーおや、珍しい。こんなところにお客様が。来るつもりは無かった?なるほど表の者が大変失礼なことを。けれどウチを見る価値は有るかと。きっと貴方にとって忘れられない物と出会えるはず。どうぞ店内をご覧になって。ーーー色々な物があるでしょう?今日はとっておきを仕入れたんです。まだ販売できる状態ではありませんが…はい?ああ、はい、はい、表の者は購入できるとは一言も言っていなかったでしょう?ふふふ、冗談ですよ。貴方がもし気に入って直ぐにでも持ち帰りたいとご購入頂けるのであれば、急ピッチで調整いたしましょう。
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