「ん……」
瑠璃色の夜明け前。
静寂で満ちる涼しい一時。
自然と持ち上がった瞼を好きにさせ、あくびをひとつに体を起こした。
「……」
意識はまだ輪郭がはっきりせず、思考も遠い。
そもそも今は何時かと、ふわふわ、ぼんやり、ただ座っているだけでいると、隣で身じろぐ気配を感じた。
逞しい肩を寒そうに寄せ、穏やかに寝息を立てる大男。
何かの夢を見ているのか、それとも見ていないのか。起こさないように柔らかい髪を撫でて夢の先を促した。
ふと、気付けば。
腕も、胸元も腹も赤い痕だらけ。確認はしないが、恐らく腰や太もも周りも悲惨なことになっているだろう。ロージャは私を食べるかのように噛んだりキスマークをつけたりするのが好きらしく、夢中になればなるほど私は服の着方に気を付けなければならなくなるのだ。
亜麻色から手を引き、腕の入れ墨の上に一つ付けられた痕を眺める。
指摘されてからかわれるのが照れるから抑えて欲しい、と願い出たのが少し前。それでこの有様だから、もうこちらで調整した方が早い。
何度も鏡でチェックしたり、朝から気を遣う身にもなってほしいものだ。
——本当のところは、抑えられないくらい私を愛してるって分かるから、ちょっとだけ嬉しかったり、して。
自覚する本音と甘い切なさに痛む胸を無視したくて、もう一度ベッドに潜る。
起きる気配の無い胸に額を寄せて。
朝陽が今日を連れて来るまで、この温度と、夢の続きを。