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    syunenmei

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    syunenmei

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    ⚔ムルグレ

    雨中烈火最初の接吻は、はっきりと覚えていない。
    剣戟の最中だったか。
    妓楼の中だったか。
    こんな雨の日では無かったはずだ。

    「ぼんやりしてっと死ぬぜ!」

    眉間目掛けて突き出された剣先をはたき落とす。
    弾かれたことで開く胴に躊躇無く踵をねじ込んだ。

    「ぐ、ぅ!」
    「……隙だらけだ」
    「ぅ……はっ! 蹴りの一発で満足なのかぁ? お安い野郎だ!」

    赤い唾を吐き捨てながら笑う男。
    薄暗く濡れ、傷も増え、着物も髪も重さを増してなお隻眼は烈火を宿していた。
    口端を吊り上げ、呼吸が整うとすぐ切りかかって来る。

    何度、何十度、星霜を重ねるかの如き剣戟。
    今日が初めてでは無い交剣で、弾ける火花に垣間見る烈火から、いつしか、目が離せなくなっていた。

    数歩の間合いで見え隠れしてしまうその色を。
    迫る白刃、雨を裂く一閃よりも荒く、澄む色を。

    「!」

    ぬかるむ足元で僅かに隙が生まれる。
    好機を逃さず大きく踏み込み、襲い来る横凪ぎを腕ごと弾いて奴の首へ。
    その後ろの雑な髪束を掴んだ。

    「は」

    間抜けな声と、冷えた唇。

    ——嗚呼、確かにこんな雨に濡れていなかった。

    半開きのそこへすぐに舌を刺し入れて呼吸を貰う。
    状況に気付いた舌が逃げようとするので追いかけて絡めた。
    刀を掴む手は力づくで抑え込み、比較的自由な逆側が何度も何度も背中を叩く。
    殴打で骨が軋む。それでも、いつかの夜を再現するように接吻を続けた。

    やがて、意識が遠のき始めたらしく、膝から崩れた体を支えて漸く唇を離す。

    「はぁ、はぁ……っ何なんだよお前!」
    「……」
    「はぁ、っくそ、ほんと、なんなんだよ……」

    途方に暮れたように落ちる声。

    降りしきる雨の中。
    支える体に押し返されるまで、情けない罵倒を受け止め続けた。
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