丸みのある頬に触れる。
指が届く寸前ひくついた肌。
怪訝そうに見上げて来る黄昏の瞳。
煙草の煙が私に当たって溶けていく。
「ロージャ?」
お気に入りの声は少しの戸惑いに揺れ、ただ見降ろして肌に触れただけで何も言わない私に疑問を向けていた。
「触りたかったから」
不安を放置して逃げられても困るので正直に言う。
嘘じゃない。なんとなく、グレッグに触りたいと思ったから、触っただけ。
乾き始めた頬の返り血を指先でなぞって拭き落とす。
「疲れたぁ」
「確かにな。もう片付いたし戻ろう」
周囲にまき散らされた何かだった塊。最早興味も価値も無いそれらに背を向けて二人で歩きだす。
他の面子は先に戻ったようで、立っているのは私たちだけだった。
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