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    syunenmei

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    現パTSロジャグレ
    朝定食の話

    ロジャ兄 俳優兼モデル
    グレおば 事務OL
















    蒼い黎明。
    一番鳥たちが遠くで鳴き、駅に向かう人、駅から来る人のまばらをぼうと眺める。
    二十四時間営業の定食屋ですする味噌汁が二日酔い気味の体に良く染みた。

    あのクソ上司め。いくら私とはいえ、女を朝まで連れまわしやがって。
    突発的に強制参加が決まった飲み会。ただでさえげんなりしていたのに、やれ二次会、やれ三次会と古き悪き風習のまま連れまわされてこんな時間だ。世間的には夜でもあり朝でもあるが、そろそろ常識のアップデートをしたらどうか。
    大切な後輩達を逃がせただけでも良かった。トーマからは何かあったらすぐ連絡するように、と真剣に心配されてうっかり涙が出そうになった。
    まあ私は頭数合わせみたいなもの。飲むのが好きな女性社員も他にいたし、特に実害を被るようなことは無かった。こんな時間まで無駄に付き合わされたのが不服なだけだ。

    今日はこのまま休み。
    食べて、帰ったら寝よう。
    温かい白米に心を満たされながら、感じる眠気を漬物で誤魔化す。

    「あれ、グレッグ?」
    「ぶっ」

    甘めの厚焼き玉子を味わい、水で休憩していた時、聞き馴染みのある声が私の愛称を呼んだ。

    「ろ、ロージャ?」
    「偶然~! グレッグも朝ごはん?」

    テーブルの向いに座りながら荷物を置く恋人。
    全く予想していなかった事態に思考が追い付かない。

    「何でここに」
    「んーと、あんまり言えないんだけど……本当は早朝撮影だったんだけど、いろいろあって少し余裕ができたから朝ごはん食べちゃおって思って」

    苦笑するロージャの手元には大盛定食の半券。
    こんな時間からよく入るものだ。

    「そっか、おつかれさん」
    「あは……でも、むしろよかったかも」
    「うん?」
    「朝からグレッグに会えたからね」

    苦笑から一転、うっとりと微笑むロージャ。
    人気俳優の笑顔はこの距離かつ不意で受けるにはやや眩しすぎる。

    「……疲れた顔してる」
    「え? ああ、まあね。さっきまで飲み会に付き合わされてこんな時間だよ」
    「飲み会? は、女性をこんな時間まで?」
    「そ。まあ私なんて女にカウントされてるか分からないけどさ」

    笑顔を作って肩をすくめて見せる。
    色気は皆無。チビ。
    そもそもおばさんだし、そういう相手として見られていないだろう。

    「グレッグは女性として充分魅力的だよ。それが分からない阿呆なんて放っておけばいい」

    瞬間、刺すように冷たくなった視線に射貫かれる。

    無意識に飲む息。
    それも一瞬のことで、何かあったら遅いんだよとむくれるロージャはいつもの調子。
    今後は自分か、頼れる人をちゃんと頼ること。と約束させられたところで丁度呼び出しの声がかかり彼が席を立つ。

    ——別に、職場で異性から好意を向けられても興味は無い。
    私はロージャ以外、見る気無いんだから。

    持ってきた大盛定食に笑顔満開な彼を眺めて箸を進める。
    気のせいか、じゅわりと甘い厚焼き玉子がもっと甘くなったような気がした。
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