~映画の一虎について感じたこと~ 映画は千冬と一虎が対照的に描かれてると思った話。
決戦の予告観ると、「信じぬく、この仲間を。守りぬく、あの誓いを」とテーマが流れる。
いろんなキャラに当てはまるテーマだと思ったし、私は一虎と千冬に当てはめて、色々考えてしまった。
千冬はたとえ踏み絵にされても「場地さんを信じた」けど、一虎は稀咲の言葉に惑わされて「場地さんを信じきれなかった」のが、エグい対比になっているのが良かった。
決戦冒頭、千冬は武道に「タケミっちを信じる。場地さんも信じる」と言っている。最初は「ふ~ん」て思ってたけど、後に稀咲が一虎に「場地がオマエを裏切ったぞ」と言ったことで、場地を刺すまでに至る。ここ、「バルハラ」じゃなくて「オマエ」て言ってるのが稀咲の人心掌握術の上手いところ。
「人は裏切る」という負の感情は、原作一虎の父親からのDV、母親のネグレクト、友達の裏切りが原因。その後初めて出来た心からの親友たち創設メンバーを大切にできると思いきや、大切にする方法を間違えてしまったばかりに壊してしまう。一虎は壊すしか能がないんじゃなくて、大切にする方法が人とちょっと違う子なんだな~と思ってる。
場地さんは一虎に「オレは最後まで一緒だから」と約束してる。
(場地さんが運命の時に神社の階段を下りているシーン。階段下にいる一虎。「地獄」まで一緒に行こうとしているのを表現していると言ってる方いて、英監督の技量に脱帽。)
場地さんは一貫して、一虎の事は裏切っていない。稀咲が裏で暗躍しているから、アイツを出し抜くことはしでも、バルハラの場地として一虎と一緒にいるつもりだったと思う。
場地さんが一虎と一緒にいたのは罪を背負うのもあるけど、チームとして一虎を一人にさせられなかった。「一人一人がみんなの為に」精神。一虎を見放すこともできたけど、そんなチームはトーマンじゃないって場地さんが一番分かっていたから、マイキーたちを裏切る形になっても、一虎の傍にいたのかな。
結局一虎は裏切られていない。にも関わらず、場地さんを信じずに稀咲の言葉を信じたから、親友を刺してしまったわけで。そもそも、一虎は場地さんどころか誰も信じてなかったのかもしれない。あの事件の夜からずっと。
一虎の「人は裏切る」だけど、結局自分もマイキーを裏切ってしまった。けどそれを認めると自分は殺人犯になるから、「敵だったから殺した」に置き換えて、裏切った側になったことも、殺したことも正当化することで心を守っていたのでは。
運命観た時には、一虎がマイキーに縋るようにしていたシーンを「許し」とか「殺してやる」の気持ちで観ていたけど、決戦観た後だと「裏切ったオレを殺してくれ」という気持ちで縋っているようにも見えた。
「裏切ったオレを罰してくれ」と縋る一虎が、キリスト教のユダのよう。キリストは裏切り者であるユダに対して、「生まれなかった方が、その者のためによかった」と言っている。映画の中で一虎は、敵を殺せば英雄になる、そうしたら「間違えてるなんて言われない」的なことを言っていた。罪を犯した一虎は、もしかして母親に「産んだことが間違いだった」とか言われたのかな……とかだったら切ない。
無意識化では「自分が裏切る側になっていた」「マイキーの大切な兄を殺した」「オレは殺されたい」と思っていて、だから最後に「殺せよ」と強要したのか。
一虎が両親から愛情を与えられなかったことで、誰かを信じること、大切にすることができない一方、千冬は母子家庭でもきちんと母親から愛情受けて育っていたと思う。その描写が場地さんとの出会いのシーン。
漫画ではないけど、場地さんが「ダブれねーんだよ。おふくろが泣く」と言ったすぐ、千冬アップで窓の外を一瞬見るシーンがある。これ、母子家庭の千冬だからこそ、母親を泣かせたくない場地の気持ちがわかってしまうシーンだと思った。
そんで助けにきてくれた場地さんに憧れ、その強さと優しさに惹かれて今に至るわけで。千冬と一虎は対人における地盤が違う。それが結局、親からの愛だったのが親ガチャ過ぎてどうにもならんから、マジで心抉られた。
そんじゃ一虎は最後、ぐちゃぐちゃの感情のまま壊れてしまったのかと思えばそうじゃない。
映画の一虎って心情描写もなければ、泣く姿もぜんぜんない。だからこそ、余計に何を考えているのか分からない。分からないのなか、最後、マイキーがトーマン結成の思い出を語り終えたところ。天井を向いた一虎が一筋だけ涙を流していた。圧巻、虹郎さんの演技力あってこその表現に、ぞわっと鳥肌立った。
あの時、ようやく一虎が昔の一虎に重なった。みんなでバカやって、笑い合っていた一虎に戻れたんだと伝わってきた。
そんで最後なんだけど、ドラケンと話すシーン。ここで一虎は原作と違って泣かない。その代わりに瞬きする、一回だけ。そん時初めて「一虎って瞬きするんだ」と謎の親近感が湧いた。たとえどんなに強くてカッコよく人間離れしている人でも、ふと見せる人間らしさに親近感が湧いたりするのですが、私はここで初めて一虎に親近感湧いた。一虎って今まで瞬きしてたかな?と思ったので、今度行った時に確かめようと思います。
(たまに人間離れしたキャラを表現したくて、演者さんが瞬きしなかったとかいう役作りあったりする。普通に瞬きしてたけど、私が気づいてなかった可能性大なのでここらへんは、私の個人的な感想でした。)
千冬が陽であるように、一虎は陰。
映画ではこの二人にまったく接点ないけど、場地さんを通して陰陽が上手い具合に表現されているなと思いました。
終わり