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    みなとくん

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    みなとくん

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    「ムーンライト・ボールルーム」の後日談です。フィンレオですがレオはいません。クリスがいます。

    ##フィンレオ

    スイートツイート「で。最近どうよ」

     そう声をかけられて、口元にドーナツを運ぼうとしていた手を止める。運転席のクリスが、視線は前に向けたままで俺に声を掛けてきた。

    「どうって。何がだよ」
    「レオと。ちゃんとやれてんの?」

     レオと、か。ちゃんとやれてるのかと聞かれれば、まぁ、やれていないだろう。件のパーティーの日にこれからの事を話して以降、とりあえず諸々考えようというふうに落ち着いたけど、それからは特に進展はない。いつも通り、小さいことで喧嘩をしてばかりの日々が続いている。
     しかし、クリスはもちろん、支店メンバーの誰にも、俺とレオの関係は明かしていないので──今クリスが言っている「ちゃんと」というのは、「ちゃんと恋人としての関係を築けているのか」という質問ではないだろう。ここで詳細を伝える必要はないように思える。

    「別に、見ての通りだけど。毎日毎日何かと因縁つけてきて、よく飽きねぇなって感じ」
    「ふぅん──なぁ、フィン」

     俺の言葉を受けたクリスは、視線は前に向けたまま、意味ありげに少し間を空けたあと、

    「今の俺は『恋の相談窓口担当』のお兄さんよ?」

     と、そう言った。
     予想もしていなかった言葉に、手にしていたドーナツを落としそうになる。適温のはずの車内にいるのに、どっと汗が噴き出した。

    「なッ……」
    「あっはは!気付かれてないと思ってた?」

     面白くて仕方がないというふうに、軽快に笑うクリス──俺は今そんな気分にはなれないんだけど。何でバレてるんだ。まさかレオが?

    「あぁ、言っとくけどレオも何も言ってきてないよ。どちらかと言うと『2人とも隠そうとしてるな』って感じ。お前ら隠し方が露骨すぎるんだよ」
    「ま、マジでか……」
    「マジマジ。ま、レオは比較的上手くやってたけど、フィンは露骨ねー。意識的に距離置くようにしてたでしょ──っと」

     信号が黄色くなったことを捉えたクリスが、ポンピングブレーキで緩やかに停止する。

    「──でも、それが最近は元に戻ってきたから。何かあった?」
    「……よく見てんな」
    「まーね。伊達にレディのお相手してないよ」

     一旦前方を注視する必要がなくなったんだろう、クリスはこちらにウインクを飛ばしてきた。いちいち鼻につく振る舞いをする奴だ。

     それにしても、まさかバレてるとは。そこそこ上手くこなしてるつもりだったのに、なんだか情けない。この分だとヴィジャイ辺りにも気付かれてそうだ。ウェンディは──まぁ、大丈夫か。

    「黙ってた理由は想像つくし、別に詮索するつもりはないけどさ」

     クリスはドリンクホルダーのカフェラテを少し飲んだあと「弟分の隠し事無理やり暴くほど無粋じゃないよ」と続けた。

    「弟分って。今はお前の方が後輩だろ」
    「そうだった!いやぁ、フィンさんには敵わないなぁ!」

     俺の苦し紛れのリアクションにも、いつもの調子で返してくるクリス──まぁ、変に真面目なテンションで来られるよりは、この方が助かる。こいつの事だから、俺のそんな心理もわかった上での態度かもしれない。

    「フィンさ、前に言ったじゃん。ハイカードは家族だって」
    「言っ……たかな……」

     言った。言ったけど、改めて確認されるとかなり気恥ずかしい──あの時は、クリスを止めるために必死だった。素面であんな恥ずかしいことは、とても言えない。

    「俺らが家族としてさ、フィンは俺の弟みたいなもんなわけ。もちろんレオもね」

     いつの間にか、前方に見える信号はゴーサインを出している。停止した時と同じように、クリスは緩やかに車を発進させた。

    「弟、ねぇ……」
    「そ。そんでさ、きょうだいの幸せを願うのが兄ってもんじゃない?」

     横顔だけでも、クリスが穏やかに笑っているのが分かる。きっと、ミシェルのことを思い出しているんだろう。

    「さっきも言ったけど、別に詮索する気はないよ。ただ、相談窓口はいつもオープンしてるよって話」
    「その言い方がな〜んかムカつくんだよなぁ……」

     そう返せば、また楽しそうにけらけらと笑うクリス。なんか、今日は機嫌がいいな。

     隠しているつもりのことがしっかりバレていたうえに過去の恥ずかしいセリフまで反芻されて、居心地が悪くて仕方ない。誤魔化すように、手に持ったドーナツを少し齧った。

    「──俺がレオとそうなってるかもって気付いたとき、どう思った?」
    「どう、って……まぁ、流石にちょっとびっくりしたよ。喧嘩するほど仲がいいとは言うけど、まさかって」
    「ふーん……そっか」

     ドーナツに持っていかれた水分を補うように、自分のドリンクホルダーからカップを手に取って、中のアイスココアを一気に吸い込む。色んな言葉を投げられてごちゃごちゃになった頭が、ドリンクの冷たさで少し整理出来た気がした。

    「──じゃあ、そのうちもっとびっくりするかもな」
    「なにそれ。どういう意味?」
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