ファーストキスは甘いものだと思ってたけど、そんなことはなかった話「キスしてええか?」
少し緊張した面持ちでウルフウッドが尋ねてきた。
三日前に、彼から交際を申し込まれていた僕は「あ、うん」と答えるに留めた。
この三日、ウルフウッドから特に何のアクションも無かった為、もしかしたら、彼の言う「好き」は僕の思う「好き」と少し違ったのだろうかと、思い始めていた僕は内心ほっとしていた。
「………」
肩を掴まれてから、しばしの沈黙。僕は薄目を開けて、ウルフウッドの様子を窺った。
ウルフウッドは眉根を寄せ、への字口で──およそ、今からキスをするような甘い雰囲気を一切纏っておらず、親の敵を睨むような顔をしていた。
「あの…」
「トンガリ、目ぇ閉じ!」
「う、うん」
恋人の形にも色々ある。何も情交を交わすだけが恋愛じゃない。ウルフウッドが嫌なら無理にキスをしなくても良いんだよと伝えたくて、声を掛けたら彼にキッと怒られてしまった。
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