木こりの心臓 閉ざされていたガラスのドアが開く。
酸欠に霞む目を瞬かせ、新鮮な空気を取り込みに外へ出る。足がふらつく。綿を踏んで歩いているようだった。頭が痛む。耳鳴りの向こう、背後でどさりと人間の体が落ちる音がする。
「アンビューバッグを持って来い!」
私の声を聞いても尚ニヤニヤと笑う渋谷の隣で、天堂の担当行員が即座に後ろへ駆け出した。オーディエンスの拍手の中、司会者がゲームの結果を明るく伝えている。
後ろを振り向く。腕を下敷きにして前のめりに倒れたため、頭部外傷はなさそうだ。意識は混濁しているがまだある。酸素濃度6%はもちろん危険な水準だが、一口吸っただけで人間が即死する濃度ではない。猶予は数分。
まだ間に合う。
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