帰郷 早朝の冬空には真っ白く光る雲がいくつか浮かんでいた。
人を詰め込んだ新幹線がトンネルに入る。途中駅で乗り込んできた家族連れの頭の上からひとつ飛び出す、白っぽい髪の毛を生やした顔が窓に映り込み思わず目を逸らした。車内はデッキまで、大量の荷物を持った客でごった返している。
駅に行く道すがら取った自由席のチケットをコートのポケットに突っ込み、あとはひとつの財布しか持っていない大男はある意味で目立っていたかもしれない。
着の身着のままで来た、と言うと自分がまるで大慌てでここまで来たようで抵抗がある。実際、猶予は数日もあったのだ。
しかし、よく考えてみればマフラーくらいは持ってきてもよかっただろう。自分の腰あたりに頭のある子供のふくふくに膨れたダウンジャケットを見ながら、ぼんやりとそう思った。
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