あなたを愛して祝いたい(高誕お祝い企画、ちゅんたか甘々ギャグ)
テレ日にある会議室の一室に、錚々たるメンバーが集まっていた。そのひとりが、東谷准太だ。
「………高人さんのお祝い企画、ですか」
准太の発した言葉に返答はない。皆、それぞれが手元の資料を見ていたのもあるが、今回の企画を発案したプロデューサーの言葉を待っているからだ。
「そうだ。やるからには高視聴率を目指す」
そう言い切るのは今回の発案者──鬼ゼネラルプロデューサーこと、卯坂和臣。彼は、高人とは腐れ縁でもあり、彼の価値をよく知っている。
「だから東谷君と綾木君を事前に呼んだ、と」
冷静にメンバーを見渡し、独りごちるのは西條高人の敏腕マネージャー、佐々木拓。もちろん、彼も高人の価値を理解し、生かすことに長けた人物である。
「かっは…東谷はまだしも、俺も呼ばれたのは何でっすか」
「綾木君! 言葉遣い気を付けてっ」
卯坂に臆することなく、軽い言葉遣いで問いかけるのは綾木千広。彼も准太と同じく高人の後輩で、彼に想いを寄せるひとりだ。
そんな軽い綾木を慌てて注意するのは、彼のマネージャーの三田丸一。愛称はマルさん。
「東谷君も綾木君も、企画を聞いたら断らないと思ったからだ」
いけしゃあしゃあと言い切る卯坂に、名指しされたふたりは唖然とした。つまり、断らないとわかっていて、なおかつ高視聴率を狙えるからと、この話が直接ふたりに来たのだ。
「さっすがウサだよなー。あ、ちなみに俺もふたりのライバルだから」
そこに、ケラケラとした笑い声とともに、これまで黙っていた人物──在須清崇が、爆弾を落とした。
「ライバル…?」
准太が呟くと、彼のマネージャーである田口守が何かに気付いたようで、声を上げた。
「もしかしてこれのことですか?『芸能人枠の参加者は、西條高人が逃げるのに一番役に立った者を優勝とする。なお、優勝商品は一般枠と同じく、西條高人を祝えるものとする』…っていう」
「そーそー!つまり、勝った奴は番組内で合法的に猫ちゃんお祝いできるってわけ!」
「祝うくらい普通にできますよね…?」
「ばっか!テレビで祝うのはまた違うだろぉ!」
綾木の言葉に反応したのは在須で、ぐりぐりと綾木の頬に飴を押し付けながら、特別な場でたったひとりだけが西條高人を祝えるのだ、と愉しげに言った。
もちろん、その言葉に反応しないわけもなく、准太も綾木も、気付けばやります、と声を上げていた。
「芸能人枠は5名を予定している。その内の3枠は決まった。残り2枠、楽しみにしていろ」
「ウサ、顔怖ぇ」
「ざっくりと資料から掻い摘んで説明をさせてもらう」
そうして皆、指定されたページを開き、資料を見る。
まず、『一般枠は抽選で20名、芸能人枠が5名。一般枠の人にはカメラマンなどがつかず、エリア内に設置されたカメラで様子を伺えるようにする。そして、芸能人枠の人にはカメラマンがそれぞれつく。』
そこまで説明して、卯坂は一度周りを見回す。
「何とも言えない企画ですね……リアル鬼ごっこですか」
「ああ、そうだ」
次いで、『一般枠の人は西條高人を捕まえるのが勝利条件であり、捕まえた者が西條高人に直接お祝いを言える。そして、芸能人枠の人は西條高人を守るのが勝利条件であり、より活躍した人が西條高人をお祝いできる』と言われて、複雑な顔をするものが多い。リアル鬼ごっこということは、一般参加者と直接触れ合う機会がある。トラブルなども想定しているとは思うが、何故こんな訳の分からない企画を……、と准太が口を開きかけたところで、卯坂が口を開いた。
「そもそも、この番組のメインは高人と東谷君だ」
「えっ」
「は!?」
准太と綾木の声が重なる。佐々木と在須だけが笑っていた。
「抱かれたい男1位と2位だしねえ。何より、東谷君ならハンデを感じさせない働きしてくれそうだもんね〜」
というボツネタ供養。