たこパしよう!そうしよう!※擬似家族※
「…………久しぶりにたこパがしたい」
「は?」
夏の猛暑が去り、少しずつ過ごしやすくなるこの時期。リビングでコーヒーを飲んでいた休日のふたり──充と高人は、会話のないまま隣り合わせでそれぞれ好きなことをしていた。
そんな中で、ふと言葉を発したのは高人だった。たこパがしたい。たこ焼きパーティー。ごく稀に、マネージャーの家で愛娘の奈々ちゃんとするそれが、高人は大好きだった。けれど、最近はそんな些細なこともできていない。
「たこ焼きパーティー、うちでするか」
「……誰が作るのかな?」
名案だとばかりに立ち上がった高人を制止する充の顔は、どこかげんなりとしていて覇気がない。そんな充の反応も当然といえば当然で、この屋敷の中の家事全般を担うのが充ひとりであるせいだ。
買い出しは誰がするんだとか、誰がたこ焼きを焼くための生地や材料を用意するんだとか、言いたいことは沢山あったが、とりあえず飲み込んだ。代わりに吐き出した溜息は高人を止めるほどの威力をもたず、気付けばこの屋敷一の問題児である長男への連絡を終えたところであった。
「あのね……」
「あ、チュン太達も呼んでいいって」
「は?」
ついに頭を抱えてしまった充などには目もくれず、高人は東谷に連絡すべく部屋を出ていった。
☆
……普段は五人で過ごしている屋敷は、常であれば静かな空間である。そこまでベラベラと喋る人間もいなければ、そもそも仕事や用事で家を空けている者も多いからだ。
しかし、今日このときばかりは賑やかとしか言いようがなかった。昼を少し過ぎた時間帯なため、末っ子のティケトはまだ学校の時間でいないが、連絡をうけた死と、東谷、ジュンターヌ、酒呑、月が集まってしまえば、視界的な意味でも、聴覚的な意味でも、賑やかとしか言いようがない。
なお、一ノ瀬と経若もまだ仕事中のため不在ではあるが、仕事が終わり次第駆けつけると双方から連絡が入り充の目が死んだのはここだけの話。
「充〜買い出し行かないのかい」
「どう考えても早いと思うんだけど、そんなに言うなら行ってきてくれないかな?」
「嫌に決まってるだろう?」
いつも通りウザ絡みしてくる死を躱しながら、リビングに集まった面々を一瞥する。東谷は高人を早々に引きずってどこかへ行ってしまったようだが、それはどうでもいい。
充にとって問題なのは、ただじっと端っこで佇んでいるジュンターヌと、勝手にキッチンを漁り酒を飲みだした酒呑、そして喋りはしないものの、死の周りをうろうろしては視界の端にチラついて仕方がない月であった。
このまま数時間過ごさなければいけないのかと内心辟易しながらも、温くなったコーヒーでこぼれそうな溜息を飲み込んだ。
そこから2時間ほどして、戻ってきた東谷と突っ立ってるだけのジュンターヌに買い出しを託し、一ノ瀬に帰りに末を拾ってくるようメールを入れ、充はたこ焼きプレートの準備を始めた。
現在、時刻はゆ17時を過ぎた頃。一番に帰ってきたのは経若で、ずっと酒を飲み続けていたらしい酒呑を叱り付け始めたのでうんざりした充はふたりをリビングから追い出した。買い出しを頼んだふたりは、まだ戻らない。
ちゃんと続き書きますの尻叩き用に
。