七夕飾りと兄弟達※若干の不穏…?
「よし、七夕の準備をするぞ!」
「……タナバタ?」
兄弟達の集うリビングで、四男・高人が声を上げた。曰く、明日は七夕だから折角なら七夕の気分を皆で味わおうと。笹の葉とやらを既に東谷に持って来るよう頼んでいるらしい。根回し済みなところを見るに、初めから七夕をやるつもりだったのだろうと思う。
「ほら、短冊。これに願い事を書いておけ!」
「願い事……?」
「ティケト。七夕について教えてやろう、こちらへ」
三男・経若がソファーに腰かけたまま振り返って言う。末っ子・ティケトが元気よく駆けて行くのを見つめながら、高人と次男・充はその表情にほんの少しだけ憂いを見せた。
七夕。織姫と彦星に、年に一度だけ訪れる逢瀬の日。……とされる伝説がある。難しいことは割愛するが、とにかく笹の葉に願い事を書いた短冊を飾るお祭りだ。
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