後天性女体化5総受けハーレムの続き書いてるよアピール(トウ壮)「トウマ、今日はよろしく」
「おう」
一織が持ってきた雑誌の企画は、壮五が気圧されて頷けばすぐにはじまった。
壮五はロケのプランをまったく知らされない状態で、指定された服に着替えて撮影が始まるのを待っていた。最初のロケ日の相手は狗丸トウマだ。
同じく衣装に着替えて小走りに壮五に駆け寄ってきたトウマに、壮五は嬉しそうに笑った。壮五が女になってしまっても、2人の仲は変わっていない。
「トウマが最初で良かった」
指定された衣装は白いワンピースだ。春風に吹かれてスカートの裾がふわりとひろがる。満開の桜の下でそれはとても絵になっていた。
「よろしくな。壮五」
トウマの衣装は黒のインナーに、細身のジーンズ。薄いグレーの柔らかい素材のロングジャケットを羽織っていて、普段の衣装よりも柔らかい雰囲気だ。
「アイドル達のとっておき。秘密のデートコーデ」という女性誌の企画は、デートプランを彼氏役のアイドルが考えて、実際にそのルートを辿りながら撮影していくというものだ。
5月号から彼氏役が変わりながら半年間続き、10月号で終了したあと読者投票が行われて1位になったアイドルは新春特大号の表紙を飾ることになっている。
デートを実際にしながらスナップショットを撮るため、彼女役ももちろん必要で、その槍玉にあげられたのか壮五だった。
3年前に性転換症で女性になってしまった元男性で、彼氏役のアイドルたちとも気心のしれている彼ならば、ファンたちの反発も少ないだろうというのが、一織のセールストークで、実際その通りになってしまった。
もちろん、それについては嘘ではないが、抱かれたい男たちとの写真集での濃厚な絡みに嫉妬した一織の執念が取った仕事でもあった。
「じゃあ、撮りますね」
デート中はスナップショットが中心であるけれど、最初の待ち合わせ時点ではしっかりと紙面用の撮影をする。
「それもかっこいいけど、デートだからもっと恋人らしくして欲しいな」
アイドルである2人は、カメラを構えられて、自然と背中合わせのポーズになってしまった。音楽、特にロック関係の仕事で2人の共演は多く、カッコイイポーズを求められることが多かったからだ。
「あっ、すみません」
謝ってはみたものの、トウマはぎこちなく体を近づけてくるだけだ。首を捻るカメラマンの様子に、壮五はそっとトウマの手を握った。
「うわっ」
「ごめん。汗かいてるかも」
4月のはじめではあるが、天気も良く暖かすぎるくらいの陽気だった。
「いや……、全然、それは、……俺もだし、大丈夫……。なんか壮五とこういうこと、恥ずかしいな」
手を握りられながらもトウマの視線が壮五を見ることはない。けれど、しどろもどろになんとか言葉を重ねて、ポリポリと頬をかいた。
「……ごめんね。僕より可愛い女の子がいいよね」
「違う違う、そういう意味じゃない!壮五はめちゃくちゃ可愛い!」
そんな様子をみて自嘲した壮五にトウマは慌てて弁解する。あまりにも大きな声だったから、カメラマンやスタッフからくすくす笑い声が漏れた。
「可愛いっつっても、あれだ、安心して大丈夫だから!……トラとか、ミナみたいに下心がある訳じゃないし」
「えー狗丸くんも下心出していいんじゃないの。逆に失礼だよ」
カメラマンがケラケラと笑いながらそんなことを言うと、トウマの顔が赤くなっていく。
「ふふっ、今日はよろしくね」
「おう」
ワタワタと慌てるトウマにスタッフに吊られるように壮五も笑いだした。トウマはようやく手を握り返して、真っ赤な顔のトウマと、笑う壮五の写真が撮られた。