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    sgjubt

    @sgjubt

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    マホロアがマルクにハルカンドラに連れてってもらうところまで
    2人の出会いは多分こんな感じ、というヘッドカノン

    「ほら、見えたのサ。あれが、お前が行きたがってたハルカンドラって星だろ?」
    道化師は、翼をきらきらと輝かせながらスピードを上げた。背には青いフードの魔術師と大量の書物を載せて、はるか銀河の彼方からひとっとび。長い長い旅路の果てに、ようやっとこの惑星に辿り着いた。
    「コレが、ハルカンドラ……!」

     星の表面に広がっているのは、荒廃した岩肌と、川のように流れるマグマ。一部には永遠に動き続ける機械工場の跡地があり、何のものかもわからない何かを作り続けていた。
     星の中心に聳え立つハルドラボ火山の火口からも絶え間なくマグマがあふれ出し、機械工場の一部をも飲み込んでいる。上空では工場から排出される煙と、ハルドラボ火山から上がる噴煙が混じりあう。地表は未だ熱を帯びたマグマと冷たいコンクリートで覆われ、枯れかけた草木がわずかに生えているだけ。
    文明の跡はあるものの、はるか昔に滅び去り、今や守り神だけが住んでいるといわれる星。ハルカンドラという惑星は、自然と科学に支配されていた。

    「ほい、到着。こんな長距離飛行はもうこりごりなのサ!帰りは絶対迎えに来てやらないからな」
     道化師はそう言いながら、魔術師をこの未開の星に降ろした。魔術師は彼が全く疲れていないことに気がついていたし、道化師も嘘をついたのは一言だけで、その後は疲れた様子も見せなかった。
     上空からも感じるほどの温度を保つ地熱を帯びた地面ではなく、冷えたコンクリートを着地点に選んだのは彼なりの優しさなのか。それともこの後受け取る報酬にひびくと考えたからか?持ち込んだ書籍の山を整理している魔術師を眺めながら、どうやってか出現させたボールに乗って玉乗り遊びに興じ始めている。
    「マホロアもたいがい物好きだよな~。あんな伝説、眉唾物にもほどがあるぜ?こんなに荒れた環境じゃ、何も残ってないかもしれないし」
    「デンセツとして遺されるくらいなんダカラ、何かしらのコンキョはあるデショ。それで、マルクはもう行っちゃうノ?」
    「少し休んだらな。だから早く!お前が見つけた中でもとびっきりなアイテムを教えてちょーよ!」
     マホロアと呼ばれた魔術師は、マルクと呼ばれた道化師にハルカンドラへの移動手段を依頼していた。代金として要求されたのは、マホロアが今調べている伝説のひとかけら。眉唾物と評してはいるが、マルクも興味深々なのだ。
     マホロアは持参した書物の一冊を開き、マルクに差出した。
    「ハイ、コレがボクからのお礼ダヨォ。本は貸せないカラ、今アタマにタタきこんデ覚えてヨネ」
    「なになに……『大彗星ノヴァ』?」
    「ギンガを飛ぶ、キカイじかけの星ナンダ。なんでも、星々をツナグことで召喚できるアイテムらしいヨ。呼び出すコトができれば、なんでもヒトツだけ、ネガイを叶えてくれるんダッテ!」
     マルクは興味深く召喚の手順を読み込んでいる。数ある伝説のアイテムの中からマルクにぴったりのものを探すのは、とても骨が折れた。なにしろマルクは気まぐれで、彼にとってのとびっきりは予測不可能だからだ。ならば彼自身に願いを決めさせればいいと考えて選んだのが、ギャラクティック・ノヴァ。どんな願いも叶えるという、機械仕掛けの神様だった。
     しかし、悪戯好きなマルクのことだからろくな願いをしないに決まっている。例えば、ハルカンドラを彼の足元で弾むボールに変えてしまったり。しかし、幸いギャラクティック・ノヴァを召喚するために必要な星々はハルカンドラとは違う天体系にある。この後早速マルクが何かを企んだとしても、マホロアが巻き込まれる心配はない。
     それに、すべてが終わった後に気まぐれを起こして顛末を報告しに来てくれたら一石二鳥だ。伝説が真実であると確かめられるし、どんな願いも叶えるというそれこそ眉唾物のアイテムが実在するのなら、その他の伝説のアイテムも存在する可能性が高まる。マルクの悪戯に巻き込まれることになる星々には不運だが、マホロアにとっては損がない。
    「面白そう!気に入ったのサ!」
    「ソウ?ならよかったヨォ!キミにとってのとびっきりは、ソレ以上ないだろうカラネェ……」
    「でも、これ……結構面倒そうだな。7つも星を巡らないといけないんだろ?」

    そういうと、翼に付いたするどいツメで書物を揺さぶって、いかにもかったるいと言わんばかりにいやそうな表情を浮かべた。慌ててマホロアは書物を取り返し、大事そうに傷がついていないか確認した。
    「モウ、何してるんダヨ!この本はかなり貴重なモノで……!」
    「知ってるって、飛んでる間に何度も聞いたっつの。だって面倒だもんよ〜……。星を巡って?その星にある『夢の泉』とかいう場所を探して……あっ、そーだ!カービィにやらせりゃいいんだ!」
    大きな目を輝かせてそう言うと、マルクはすぐにボールを片付け、飛び立とうとした。
    「チョット待ってヨ、その、カービィっテ?」
    聞き覚えのない名前に、マホロアは首を傾げた。
    「知らないのか?お人よしな正義のヒーロー、ひと呼んで、星のカービィ!かなりの腕ききで、悪いヤツを懲らしめてまわってるらしい。ポップスターにある『夢の泉』に取り憑いた悪夢も追い払ったってウワサだぜ」
    「フーン、星のカービィネェ……」
    「で!そいつ、今はちょうどポップスターって田舎星にいるらしいのサ。あそこはノヴァ伝説と同じ天体系だし、夢の泉も知ってるし。上手いこと騙して代わりに……」

    おっほっほっほ、と特徴的な笑い声を上げながら、マルクはさっさと飛び立って行ってしまった。
    ひとり残されたマホロアは、カービィの名を頭の片隅にとめながらも未知の惑星への興味が勝り、別れの哀愁など微塵も感じぬまま、まずは目の前の工場地帯に歩みを進めた。



    意気揚々と飛び立っていったマルクがハルカンドラに戻ってくることはついぞなく、マホロアが事の顛末を知ることになるのはかなり後。他ならぬ星のカービィの口から聞くことになるのだった。
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