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    まえにし猿棚

    @ooops_sartana

    一次創作BLの超短編を置いています

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    POIPOI 19

    まえにし猿棚

    DOODLE2024年度ルクイユほの怖いBL準備号に見せかけた脇役達のスピンオフ。ボンデージ・アーティスト見習い×ポルノスター
    美しい年齢達 ”ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。”
     そう書いた小説家は、35歳の時にフランスの浜辺で戦死してしまったそうだ。15年余分に生きた暁には、その傲慢さも少しは悔い改められていただろうか。

     少なくともシャハブからすれば、彼の考えは全く傲慢なように思えた。世間が20歳の人間を美しいと定義付けるなんて、無邪気に信じていたのだから。
     この業界だと、20歳にもなればそうそう新人とは見做されない。高校を中退するや、国中からニューヨークへ、ロサンゼルスへ、マイアミへ、グレイハウンド・バスの片道切符を買ってぞくぞく押しかけてくるポルノスター志願者は後を経たない。例え古い肉が腐ろうと、新鮮な肉のお代わりは幾らでも。動画サイトのプロフィール欄を検索してみるがいい。この国中の19歳が登録しているのかと思うほどの人数が現れる。明らかに盛っている人間もいれば、その容姿で名乗るのは幾ら何でも肌が弛んでいるだろうと思える者まで、19歳の示す射程範囲は様々だった。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】恐るるべき子供 知り合ってすぐの頃、と言うことはまだリグレーが高校生の頃だが、マルボロが写真集を貸してくれた事がある。
     友人達と釣りに出かけた帰り道、とっぷりと日も暮れた森でオーバーヒートした車の中、アレと遭遇したらどうしようと震え上がっていたところに現れた救世主。初めてまともに会話をした時から、リグレーはすっかりハンサムなおまわりさんに首ったけだった。
     マルボロはリグレーが法定年齢に達するまで手を出さない代わり、色々な知識を授けてくれた。例えばモータウン・サウンドの素晴らしさとか、コミックが原作ではない映画の面白さとか。

     半世紀以上前に活躍したカメラマンの業績についても、学びの一環として教示しようとしたのだろう。当時のリグレーが知る女性のポートレイトといえば、スポーツ・イラストレイテッドに月替わりで掲載される裸体が関の山だった。どれだけページを繰っても、淑女達はビキニのトップスすら外そうとしない。と言うか、そもそも水着写真がない。この乙に澄ましてオートクチュールの服を身につける、鶴のように細い淑女達の一体何が良いのだろう。ショッピングモールまで車で3時間走らないと詣でられない田舎のティーンエイジャーがそう考えるのは、ある意味当然の話だった。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】オールドファッションを喰らう やる事をやって良い気分。交換した清潔なシーツに潜り込んで心地よい微睡へ身を浸そうとしていたら、場違いなほど張り詰めた声と共に肩を揺さぶられる。「今外で変な音がしなかった?」
     低く呪詛の呻きを放ちながら、マルボロはベッドから身を起こし、クローゼットからTシャツとジャージのズボンを引っ張り出した。
    「俺も行きます」
    「良いからベッドで大人しくしてろ、まだ足腰もまともに立たない癖して」
     先程まで男に体を暴かれて乱されたリグレーはすっかり疲労困憊。あれだけ泣き咽んでいた顔はまだ目も頬も幾分腫れぼったい。明日は日勤だが、この調子だと2人とも一日中欠伸を連発しなければならないだろう。

     今夜は2人でWWEの中継を観た後、もっと穏やかな、せいぜい触り合いっこ位で済まそうと思っていた。けれどこの若い情人がひしとしがみつき、甘えた様子で肩口に頬を擦り付けて来たのがいけなかった。男の四十路とはまだまだ枯れるなんて言葉とは無縁の存在だと、誘惑を受ける度にマルボロはつくづく実感する。年下の恋人を作れば若返ると言う都市伝説は、案外間違っていないのかも知れない。
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    まえにし猿棚

    DOODLEイチャイチャ×ヒルビリー×都市伝説。アメリカのど田舎のお巡りさんコンビ、40代の自分をおじさんって言うタイプの先輩×20代のスカした後輩
    【スリーピング・デューティ】ここはヒルビリーのビバリー・ヒルズ「これは焼きもちを妬いてるんじゃ無いんですが」
     そう前置きし、リグレーは懐中電灯のスイッチをカチリと押す。濡れたような黒髪と、ハッとするような青色の瞳が人目を惹く青年は、自分の強みを嫌と言うほど理解していた。だからいつも制服のズボンはワンサイズ小さめ、こうしてしゃがみ込めば、ぱつぱつになったカーキ色のスラックスが破裂しそうになっている。
    「ただ、気になったんです。昨日の晩、あんなに熱心に話し込んでたので」
    「話だって?」
    「しらばっくれたって無駄ですよ。ブロンドで、アイシャドウをコッテリつけたヤク中丸出しの女」
     ああ、と頷く代わりに、マルボロは咥えていた紙巻煙草を指でつまみ、前歯についた刻み葉を舌先でちっと跳ね飛ばした。その仕草に何を想起したのだろうか。リグレーの耳と言えばトマトスープよりも真っ赤だった。本人も状況を分かっているのだろう。殊更真面目腐った表情を浮かべて顔を背けると身を屈め現場検証に戻る。
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    まえにし猿棚

    DOODLEこちら https://fujossy.jp/books/26959 (本編は18禁です)にて掲載している作品のパロディです。その名の通りポメガバース。アメリカの架空都市の市長と彼を取り巻く側近達の逆ハーレムもの、BLですのでご注意下さい
    【So help me God!】ポメガバースパロディ 結局、輿に足は生えていないと言う事に尽きた。人間、地位が上がれば上がる程、誰かに担いでもらわないと、どこへも行けなくなる。

     トーニャが執務室へ顔を出した時、ハリーは文字通り身動き一つ取れず、おしっこだらけの絨毯でへたり込んでいた。膝の上に抱えた小型犬を手当しようとしていたらしい。ただでも不器用に包帯が巻かれた尻尾は、ぶんぶん振り回される事で邪魔な布を弾き飛ばしそうな勢いだった。

     彼の膝に乗っている以外にも、ポメラニアンは3匹いた。横倒しになったゴミ箱へ頭を突っ込み、中身を全て掻き出した挙句、抜けられなくなってしまったのだろう。きゃんきゃんと悲壮な鳴き声を上げて助けを求めているのが1匹。今にも死にそうな訴えなどものともせず、ハリーがここのところ気に入ってよく身につけているヒューゴ・ボスの上着へくるまって眠っているのが1匹。このジャケットへ絡みつく凄まじい抜け毛はカーペット・クリーナーでも使えば取れるだろうが、スラックスの方は壊滅的だ。おねんねしている友達とハリーの間を行ったり来たりしている1匹は、市長の元へ来るたびスラックスの裾を噛んで力任せに引っ張り、遊んでくれと誘っている。
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