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    ボッキディウム

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    ボッキディウム

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    🎷🥁

    バカみたいな名前の安いラブホテルの、1番安い部屋。それでも生活に余裕のない身分には大層な出費に変わりはなかった。
    玉田はネットで見た事あるエアシューターの実物をこの目で見る事になるとは思ってもいなかったと記念にその写真を撮った。


    ガチャリと音がして振り返ると大が立っている。
    濡れた黒髪は水の重みでぺたりと垂れ、シャワーを浴びていた体はほかほかと桜色に色づいている。頬の血色もよく健康そのものを表した体を腰に巻いたバスタオル一枚で隠し、バランスの取れた筋肉を惜しげもなく晒している。
    「遅ぇぞ大!」
    ビッと指を差し大を非難する玉田も髪の毛こそは乾いているものの白いバスローブ一枚を身に纏っただけの姿でベッドに横たわっていて、いつものベッドといつもの部屋着じゃない姿がこれから行う行為を色濃く匂わせた。
    「悪ぃ悪ぃ、尻の準備してたら時間かかってよ」
    「えっ?」
    「え?」
    シャワーの熱をまとったまま玉田の寝転ぶベッドに笑顔で腰をかけたものの玉田から溢れた声は驚を示すもので、大もオウム返しのように同じ言葉を返す。
    時が止まったように会話が停止するが大の頭の中では瞬時に様々なパターンの展開が繰り広げられる。
    中でも最悪なのは「セックスまでする気なんてなかった」と言われるパターンだ。こればかりは避けたいとシャワーであたたまっている筈の額に冷や汗が流れる。

    「オレ…、オレもお前に抱かれるつもりで準備してたんだけど…」
    先に口を開いたのは玉田で、探るようにぽつりと呟く。
    「大はオレに抱かれてえの?」
    ベッドの上でうつ伏せになり頬杖をついたままサイドにいる大を見る。丁度目線の先にバスタオルが巻かれた腰があって、玉田はそれを見ながらちょっと指を引っかけて外してしまいたい衝動と戦う。
    「やぁ、別に!全然!何となくオレがそっちかな〜?なんて思ってただけっちゃ!」
    大袈裟に首を振り否定する大にほんとかぁ?と疑いの眼差しを向ける。
    ごく稀にだが、たまに大はウソをつく。しかもこの素朴な見た目に似合わずウソが上手い。玉田は薄く肉が乗ってる脇腹に手をのばしてギュッと力任せに抓ってやった。
    「ウソだったら承知しねーぞ」
    「おひ!?ウソじゃねーっちゃ!痛えって!玉田!」
    力加減なく抓る悪い手を掴み、離させるとそのまま体重をかけて玉田の体をごろりと仰向けに押し倒し体の上に乗り上げる。
    「尻の準備はしたけど、玉田の事抱きたいのもウソじゃないっちゃ。オレは玉田とエッチな事したい」
    大の一重の割には大きな目から伝わる欲情が上から降りかかる。言ってる事はアホのようだとわかっていながらも下半身がズンと重くなるのを感じた。
    ポタリと、乾ききってない髪の毛の先から重力に負けた雫が落ちて頬にあたる。
    その冷たさにとりあえずドライヤーかけてこいと言おうと口を開いた瞬間に、大の唇が襲いかかってきた。
    「ん!?」
    何の前触れもなく舌が入り込み、玉田の口腔内を性急に荒らしまわる。舌を絡めとりぬるぬると擦ると驚きに見開いていた目がギュッと閉じられた。至近距離すぎて視界のピントは全く合っていないが、微かにわかる表情の変化に嬉しくなる。右手でまるい頭を軽く押さえてから何度か角度を変え、さらに深く唇を重ねて玉田をシーツに沈めていく。2人の間から漏れる吐息とたまに合う視線が愛しくて気持ちいい。
    ずっと唇を合わせてこの緩い快感をあじわっていたいと思っていたがもう舌の動かし方の手数がないのも事実で唇を離そうとした瞬間に玉田から強く胸を押されて顔が離れた。
    大が唇の端についたどちらのものかわからない唾液を舌で拭う。
    「ッはぁ…髪!ずっと水落ちてきて冷たいからまずちゃんと乾かせ!」
    されるがままになっていた玉田の頭元に何個かの水滴の跡が落ちていて大はようやく自分の髪の毛が濡れてる事に気づいた。
    「あ、悪ィ」
    大した悪いと思ってなさそうな軽い謝罪をしたものの目の前にあるあたたかい体温から身を離すのは勿体なく感じる。正直、髪の毛なんてもうどうでもいい。
    「玉田、これ貸して」
    ハッと顔を輝かせた大がそう言うと返事を待たずに玉田の着ていたバスローブの紐をほどき、ガバッと前を開ける。突然追い剥ぎに遭った玉田がうわあと声をあげて目を白黒させた。昔から行動が突飛な奴ではあったがベッドの上でもそれは申し分なく発揮されていてこちらの思考が追いつかない。
    目の前を疑問符で埋め尽くしていると大が玉田の脇腹に顔を寄せる。ごくりと唾を飲みそんな強引に?と唇を結んだのも束の間で、大は剥いだバスローブでガシガシと頭を拭いていた。
    「……おまえなぁ!?」
    バシッと大の濡れた髪の毛を叩きしっとりと濡れてしまったバスローブに溜め息をつく。対して満足気に笑みを浮かべる大の髪の毛は無造作に拭いたせいでいつもよりピョンピョンと跳ねていて玉田の心臓がキュッと高鳴る。

    「まあ、どうせ脱ぐからいーけどよ…」
    「そう、どうせ脱ぐんだべ」

    にこにこと機嫌良さそうに大が笑う。
    この嬉しそうな顔にどうも弱い。自覚があるからタチが悪いなと思いながら玉田が唇を大に突き出す。

    「はい、じゃあ続き」

    とびきりの笑顔を期待して。
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