かわいいアトのお話。まだ気だるさと熱が残りぽーとする頭で、シャツで隠されていく広い背中を眺める。
先程まで両手いっぱいに触れていた肌がもう名残惜しく、指先で叶わぬ願いを足掻くようにラハはちょいちょいと裾に触れた。
とたんにボタンを留めていた彼は振り向いて、ふわりと大きな綺麗な手を赤毛に優しく触れる。
撫でられた頭が気持ちよくて思わず、ねだるように耳を押し付け、尻尾はゆらゆら揺れた。
少し乱れた前髪をかき揚げられると少しむくれた表情で赤い瞳は桃色の瞳を見つめた。
そんな可愛い恋人の姿に、いつも凛と伸ばされた背中が小さなため息とともに少し丸くなる。
「はぁ...行きたくないなぁ」
お花は珍しく億劫そうに言った。
本来なら今日は何もないゆっくりと過ごせる休日だった。
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