きらきら星変奏曲 静まり返った教会の廊下を、ヴァッシュはゆっくり歩いていた。この教会を訪れるのはもう何度目か分からないが、前回の訪問から随分と間があいたような気がする。
盛夏の陽気に浮かされた街筋の賑やかな喧騒とは違い、相変わらず静かだ。ここだけ外界と切り離されていて、まるで別世界に迷い込んでしまったとさえ思えてくる。
自分のブーツの底が石の床を打つ硬い足音だけが、外界から転がり込んで立てた音のように響いては消える……いや、そうだった、それだけではなかった。
澄ませた耳が遠くから僅かに聞こえてくる音を聞き取って、自然と口許が緩む。よくよく聞けば、音調を強くしたり弱くしたりしながら、ひとつひとつの音を確認するように。
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