生誕 いつもと違う靴音が聞こえてくる。ややふらついていて、まるで酔っ払いのような靴音だ。誰のものだろう。侵入者か、と警戒を深める中。現れた姿に、僕はすぐに納得した。
「あにうえ、こんばんは、調子はどう?」
ふにゃふにゃな声色で、檻越しに声をかけてくるヘレル。腰の鍵束から錠の鍵を探す手すら覚束ない。どうやら……かなり、酔っているらしい。扉を開けて鍵束を掴んだまま、ふらふらとこちらへ歩いてくる。
本を閉じて、本棚へと戻して。椅子の側に座り込んだヘレルを見る。顔どころか耳まで真っ赤だ。吐息も荒く……酒臭い。
「ぇへ、へへ……きいて、あにうえ。僕ね、誕生日のお祝い、してもらったんだ……」
……誕生日? ……僕が知る限りでは、まだ先のはずだ。何せ双子なのだから、当然のことだけど。不思議そうにする僕の視線で気がついたのか、ヘレルは僕の膝の上に頬を乗せながら彼は言う。
3284