捌 一人の少年がガードレールに寄りかかって人通りをぼう、と眺めていた。
車が通り過ぎる度に、赤褐色が交じる白い髪が揺れる。
気の強そうな鋭さを持ち合わせている目元は、数年も経てばその辺にいる破落戸程度であれば視線だけで退けることができそうではあるが、今はあどけない丸みを帯びていた。
何かを待っているのか、手持ち無沙汰に珈琲の缶を手の中で転がしながら、目の前を歩いている人を眺めている。衣類量販店で売っている汎用的なデザインの服やスニーカーも併せて、友人との待ち合わせか、将又、約束を反故にされ唐突に空いた時間をどうするか考えているのか。
そんなありふれた姿である為に、誰も少年を気に留めては居ないようだった。
週末の間もなく夜に切り替わる時間は殊更、人の往来も多く、主張を初めたネオンの下を歩くのは帰路に着くために駅に向かう者、呑みに行くために繁華街へ向かう者、塾や習い事に向かうであろう学生、買い物の為に商業施設へと入っていくものとバラバラでありながらも、どこか統一されているかのように混ざり合い、同時に別れていく。
暫くそれを眺めていた少年であったが、それに飽きたのかガードレールから見を話してあるき始めた。
人の流れに乗るのに失敗したのか、一人の男性と肩が打つかるもこの人混みでは気にすることもない。互いに一瞬だけ視線を併せて会釈をして再びあるき始めるだけのこと。
そのまま歩いて、幾つめかの角を曲がればそこは表通りとはかけ離れ、一気に人の気配がなくなる。そこで少年はズボンのポケットから一枚の写真を取り出した。そこに写っているのは先程肩が打つかった男性。
「今日の目標はこれ」
声変わりをする前の声で呟くのと同時に写真を握りつぶす。
瞬間、表通りから悲鳴が聞こえてくるがそれに興味を持たずに携帯を取り出すと、帰宅の胸を連絡するのであった。
その日、駅前の表通りでは歩いていた一人の男性が突然、見えないなにかに押し潰されたかの様に歩道にのめり込み、圧死するという事件が発生。
被害者男性は異能者であり、最近、連続で起こって居た放火および窃盗の犯人であったと、夜の報道番組で読み上げられるのであった。