捌 一人の少年がガードレールに寄りかかって人通りをぼう、と眺めていた。
車が通り過ぎる度に、赤褐色が交じる白い髪が揺れる。
気の強そうな鋭さを持ち合わせている目元は、数年も経てばその辺にいる破落戸程度であれば視線だけで退けることができそうではあるが、今はあどけない丸みを帯びていた。
何かを待っているのか、手持ち無沙汰に珈琲の缶を手の中で転がしながら、目の前を歩いている人を眺めている。衣類量販店で売っている汎用的なデザインの服やスニーカーも併せて、友人との待ち合わせか、将又、約束を反故にされ唐突に空いた時間をどうするか考えているのか。
そんなありふれた姿である為に、誰も少年を気に留めては居ないようだった。
915