侵入者誰に何を言われても、誰かに負けても、誰かに勝っても、卒業式を迎えても、泣かなかった。笑い転げて泣きそうになったことは何度もある。自分の頬に涙が伝っていく記憶はもう久しくない。
兄弟子に褒められても、師に褒められても、呆れられても、泣かなかった。
そうしてこうして、今日までなんとなく生きてきて、二十数年間。
泣きたくなったことは何度かある。その原因は全て初恋の相手、牛島若利にある。
兄弟子に夜を誘われて、断る理由もなく遊んでみた。西洋人の体の作りに惚れ惚れしたものだが、やはりあの全身バネのような筋肉が恋しくなる。牛島若利のあの体で遊べたことはない。遊ぼうだなんて思ったこともないのだが。体で遊んでくれるようなタイプでもない。健全な高校生をしていたのだ。
4020