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    HQ_kazu613

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    HQ_kazu613

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    ラブレターとビデオレター、そして

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13847403
    の二人のその後。
    家の鍵を渡していいのか迷う侑と、帰国してきた日向のお話

    #侑日
    urgeDay

    関西空港の国際線到着ロビー。電光掲示板の前で一人、目的の飛行機が無事に到着したことを確認し、少しホッと胸を撫で下ろす。あとは入国審査と荷物をピックアップすれば、かれはこの自動ドアの向こうから出てくるはずだ。
     実に一年ぶりの再会。しかし一年前とは違うのは、あの時言えなかった言葉を伝えた後だと言うこと。自分の気持ちも、相手の気持ちもわかった後の、なんともむず痒い気持ちを抱えたまま、顔を合わせるのはやはり緊張するものだ。
    「あーはよ来て、いやでもなんて言うん」
     昨日から、同じ調子だ。早く会いたい、でも会ったら何を言えばいいのかわからない。でも、会いたい。その繰り返し。何度もメッセージの交換はしているが、会話をするのも実に想いを伝えあった日以来だ。時差十二時間はやはり生活という意味ですれ違うものだ。
    「……あかん、緊張してきた」
     うろうろと到着ゲートの前を行き来し、もはや不審者だろう。落ち着くためにベンチに腰掛ける。
    「やっぱ、鍵とか重いか」
     一人で住んでいる一軒家の合鍵。まだ想いを伝えあっただけで、友人以上恋人未満といったところだろう。そんな状況の相手に合鍵もらうとか、重い男やと思われるかもしれない。だが、あの家は翔陽くんと暮らす為に買った家であり、二人で暮らす想定で家具も部屋の数もボールを常に触れるようにと小さな庭があるから、あの家に決めた。冷静になって考えると、重いわ。
    「やっぱあかんかー」
    「何があかんのですか?」
     項垂れている頭上から、声が降ってきた。がばりと顔を上げると、そこには俺を見下ろすオレンジ色の髪。太陽のようだ、と瞬間頭に浮かんだ。
    「しょ、翔陽くん」
    「ただいま、侑さん!」
     にかっと眩しい笑顔を向けるは、まさしく太陽。眩しすぎてサングラス欲しい。
    「おかえり、翔陽くん」
     ベンチから立ち上がり、いつものように彼に見上げられるとすごく懐かしい気分になった。肌は記憶よりも少し焼けている。でも俺の知っている翔陽くんや。
    「あれ、荷物それだけなん?」
     遠路はるばる地球の裏から帰ってきた割りには、リュック一つというバックパッカーのような少なさだ。
    「来年もあっちなので、必要最低限だけ持って帰ってきました。お土産もありますよ」
    「そうか、まぁそうやな」
     彼が来季もブラジルでプレーするのは、メッセージのやりとりでも教えてもらった。スポーツニュースでも見たぐらいや。ほんま世界のショーヨーになったんやな、と誇らしさとちょっと寂しさもあった。
    「とりあえず行こか。車やねん」
    「買ったんですか!」
    「サムに借りた」
     車貸してと頼むと嫌そうな顔されたけど、翔陽くん迎えに行くねんと言えば渋々鍵を渡してくれた。ゆくゆくは自分の車を持ちたいが、今はそれほど困っていないので今じゃなくてもいい。
    「どっか行きたいとことかある? あーでも疲れとるか」
     乗り換え込みで約二十四時間の長旅は、体調管理の鬼である彼でもさすがに疲労が溜まっているだろう。
    「美味しい日本食食べたいです!」
     元気に右手を上げて主張する翔陽くんの元気に、思わずぷはっと噴き出してしまった。
    「どうしました?」
     急に笑い出した俺が不思議に思っているようで、首を傾げている。
    「いや、なんでもないよ。せやな、米恋しいやろ」
    「はい。美味しい米と味噌汁が飲みたいです」
    「それやったらサムの店やけど、明日車返すついでの行くしな」
     他にも店に当てがあるから、家までのドライブがてら立ち寄ればいいだろう。駐車場へ向かう道すがらも、メッセージでやりとりしていたような会話を続け、まるで今日久しぶりに会ったとは思えない感覚に、携帯の偉大さを噛み締めているとすぐに車に辿り着いた。
    「荷物、後ろ乗せ」
    「はーい」
     四人乗りの普通の軽自動車の後ろドアを翔陽くんが開け、俺も運転席に乗り込みエンジンをかける。助手席には荷物を置いた彼が乗り込んだ。
    「そういや、どこ泊まるん?」
     一週間ほどこっちで、その後地元に帰るとは聞いていた。しかし、宿がどことか聞いていなかったと今更思い出す。人気者の彼には帰国後の予定もびっちり詰まってるやろう。
    「えっ」
     シートベルトを締めようとしていた翔陽くんの手が止まる。いや、えってなんやねん。
    「もしかして、決めてないん?」
     今からでも宿は取れるやろうけど、ちょっと行き当たりばったりすぎるなぁと思っていると、彼の顔や耳が何故か真っ赤に染まっていく。
    「ど、どないしたん。熱あるんか!?」
     やっぱ疲れとったんかもしれへん、これは早く宿見つけて休ませなあかんやろと考えていると、翔陽くんが俺の服の裾をきゅっと握ってきた。
    「お、俺……侑さんと一緒に家に帰れると思ってたんですけど」
    「家? 実家ってこと?」
     彼はふるふると首を横に振る。じゃあ家って、まさか。
    「侑さんが、言ったんですよ。俺の暮らしたいって、帰ってきて欲しいって」
     かぁっと熱が上がっていくような感覚に、思わずハンドルに凭れ掛かる。確かに言うた、今思えばめっちゃ恥ずかしいこと言うたな、なんなん俺少女漫画みたいなことしてたやん。
    「だから、初めて俺達の家に行けると思って……緊張してました」
    「そんな感じ、全然せえへんだけどな」
    「本当ですよ! でも侑さんに会えてちょっと緊張がどっか行ったみたいです」
     もうなんなんこの可愛い子。俺がもろてええんやろか、誰にも渡す気ないけど。
    「だめ、ですか?」
     ここで首を振るのは男ちゃうやろ。
    「あんな、俺翔陽くんに渡したいもんあんねん」
     ずっとポケットの中で暖めていた、バレボールのキーホルダーを付けた家の鍵。翔陽くんはモルテンよりミカサやろ、という謎のこだわりもある。
    「もろてくれるかな」
     それを目の前に差し出した瞬間の翔陽くんの笑顔を、俺は一生忘れないだろう。
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