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    まりも

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    まりも

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    ##恭ピエ

    意気地なしの二人 例えば視線を感じてそっちを見るとさりげなく顔を逸らされた時とか、カメラの前ではしないような、ボクにだけ見せる目を細めた微笑みだとか、証拠は揃っていた。恭二が、ボクを好きな証拠。ボクは困っていた。だって、気持ちには応えられない。きっといつかは国に帰って、決められた人と結婚する日が来る。それなのに、恭二の気持ちが嬉しいのも、困る。
     そんなボクたちを隣でにこにこ見守るみのりに、一回だけ聞いたことがあった。「みのりは、反対しないの?」と。主語のないそれは正しく伝わったらしい。「片思いだったらもう少しわかりにくくやりなよ、って言ったかもしれないけど、ピエールも満更じゃなさそうだし」と笑顔で言われてしまっては、否定もできない。みのりにはなんでもお見通しなんだ。悔しい。自分の中で答えを出さないようにしてたことさえ言い当てられてしまった。
     バレンタインデー、ボクはみんなにチョコレートのお菓子を渡した。どこのお店でも売っているようなものだけど、みんな喜んでくれて、笑顔が見られて嬉しかった。
     その日は仕事がなかったから、それだけですぐ帰ろうと事務所を後にした。いや、しようとした。事務所のドアの前、階段の踊り場で手を掴まれた。それが誰なのか、振り向かなくても、なんとなくわかっていた。
    「恭二、どうしたの?」
    首を傾げたら、恭二は言葉に詰まる。本当は、何が言いたいのかもわかっている。
    「いや……気をつけて帰れよ」
    まだ外は明るい。それにSPのみんなもついている。そんなことが言いたいわけじゃないくせに。意気地なし。本当は、コートのポケットにきれいに包装されたチョコレートを持っているのに、渡せないボクも。
     でも、そんなことはおくびにも出さず、にこりと微笑む。
    「うん、ありがとう」
    背を向ける。目が熱い。ボクを見つめる恭二の視線も痛いくらい感じていた。でも、ボクたちにできることは、何もない。互いの気持ちを隠したふりして、仲のいいユニットメンバーとして振る舞う以外には。そう思いながら、急いで階段を駆け降りた。
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