桜さくらさんの話
妾の昔話など…あまり面白くは無いと思いますよ、ただ長く生きただけですから。
それでも構わないと仰るのでしたら、お話致しましょう。
妾は元はと言えば違う場所におりました、甲斐国…今で言う山梨県のとある山に咲いておりました。
妾がこうして人の形を持つようになったのは1500年程前、あの地で咲いて500年ほど経った時でした。
今でこそ神秘的だのなんだと言われておりますが、あの頃の妾の名は『魍魎桜』でした。
妾とて妖ですから…力をつける為に他者を喰らい、己の糧としていた時期もございます。
妾の見てくれは人も妖も惹き付けるものらしく…街灯に群がる虫のように湧いていたものですから、己の養分にするには充分でした。
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