千冬の私服でファッションショーする一虎 銀行の用事がスムーズに終わり、怪しくなる雲行きを心配しながら早足で歩いていたところで開店したばかりの唐揚げ屋を見つけた。いい匂いに誘われて十個入のパックをテイクアウトし、コンビニでビールを調達して上機嫌で家に戻ると、一虎クンが鏡の前でファッションショーを繰り広げていた。オレの服で。
「あーっ何やってんすか?! 似合ってるけど! 似合ってるけど!」
「ズボンの丈、短くね?」
「確かにそれはクロップドパンツですけど、一虎クンの脚が無駄に長いんですよ」
「青系多いなー、あと細かい柄好きな」
「一虎クンは顔派手だからデカい柄が似合いますよ」
「このシャツは?」
クリーニングから戻ってきたそのままでハンガーにかけておいた一張羅のカッターシャツを手にとる。ボタンを一番上まで止めて、スタンドミラーの前でくるりと一回転してみせた。
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