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    暖(はる)

    @Haruon1018

    パスワードがかかっているものの設問は、18↑Y/N

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    暖(はる)

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    セクピスパロの長晋本にしたいなでリメイクした
    熊樫のmrくんと蛇の目のtksgさん
    半重種説明するとくどくなるのでtksgさんも重種にしたり、流れを少し変えた。
    3月までには完成できたら良いな

     高校生活も残すところ半月後の卒業式となった。
     きっかけが思い出せない項の傷を隠そうと、何度も髪を伸ばそうとしたが隠してはならないと誰かに囁かれるように無意識に髪を切ってしまっている。
     大学では伸ばそうと、入学前に渡された課題を進めていると親戚のおばが乗り込んできた。
     ブリーリングを斡旋する会社に勤めている彼女は親戚からは距離を置かれている。
     高杉家、滅多に彼女を家に入れることはないが、今日はなかなか引き下がらなかったので、とりあえず、応接間に案内するといきなり「お見合いしない」と持ちかけてきた。
    「お見合い?」
    「そう、晋作が良いと話を持ってきたの」
     ふかふかのソファーに座りながらお気に入りのマグカップに口をつけていた晋作はその言葉を口にすると紅茶を吹き出した。
     お行儀が悪いと親に注意されて、晋作が口を拭っている最中もおばは話を続けている。
     猿を祖先にもつ「猿人」と猫、犬といった哺乳類、蛇やワニなどのは虫類を祖先にもつ「斑類」がいる世界で、晋作は斑類として生を受けた
     所謂エリート階級に属している斑類だが、衰退は激しく今では猿人に対して三割と少ない。
     猿人との結婚、元々子孫を残し憎い体質もあり斑類は徐々に数を減らしていったが、それではいけないと、より強い子孫を残すために斑類は、モラルを捨てた。
     腹違い、種違いの兄弟は当たり前、結婚と恋愛は別物とスキャンダルに満ちあふれている。
    「晋作はまだ一八歳、高校だって卒業していません、」
    「あら、四月からは大学生でしょ、こういうのは早いに越したことはないの」
     ふふっと笑うおばに両親の怒りのゲージが上がるのを晋作は黙って見ていた。
     軽種が重視に敵うはずがないのに
     斑類は、強い動物の魂を持つ斑類から順番に、重種、中間種、軽種に分かれている。
     猫又であれば、ライオン、ハイエナ、イエネコといったように明らかな差があり、敵うことは滅多にない。
     動物界なら猫と犬の組み合わせはあり得ないが、斑類はよほどの家柄でない限り気にしない。
     晋作の両親も、父は重種の蛇の目、母は半重種の猫又で、晋作は父の蛇の目を、妹たちは、猫又を受け継いだ。
    おばの云うとおり絶滅寸前の斑類のことを考えるなら、結婚は早い方が良い。
     力の強さと反比例して、重種の人間は繁殖能力が低く、同種も少ない。
     だから、中間種以上は幼いうちに婚約者を定めてと、晋作の年の近い妹が読んでいる悪役令嬢小説のように相手を決めている重種の家が殆どだ。
    「いや、大学に行くのなら勉学に励んで貰わないと、それに今時親が決めた相手なんて、」
     だが、重種であっても晋作の家は好きな相手を娶ってくれと長男の晋作や妹たちにも自由な恋愛を望んでいた。
    「でも、相手は熊樫の森様の次男、」
    「男? えっと待って、その」
     黙って聞いていた晋作が初めて口を開いた。
     熊樫の森家なら晋作も知っている。斑類のトップに君臨する織田が贔屓している一族で、そこで産まれた蘭丸の寵愛ぶりは斑類で知らない者はいない。
     彼ら自身、動物から逸脱している織田を除けば、肉体的強さ、権力の強さは斑類最強だ。
     だが、そんなことよりも晋作は気になることがあった
    「勿論、番って貰いますよ。なにせ一億も貰っているのだから、」
     ならば見合いではなくブリーリングではないかと晋作が口に出すとおばは、あちらが見合いと云ってきたから、お上品な方なのねと笑っている。
     ブリーリングとは種付を意味する。
     それを生業にしている重種もいるくらい、斑類にとっては珍しくもなんともない。
     種付けだけなら一千万から、出産する側であればその五倍。
     一億という数字は、前者であれば異常な、後者であればそれほどまでに晋作の胎を欲しているのだ。
    「心配しなくても、懐蟲は用意しておきますよ、生きの良いのを選ばないと」
    「……、ッ」
     やはりと晋作は項垂れる。
     子孫を残すため男性でも妊娠できるように、間桐が開発した「懐蟲」。
     懐とあるように体内に取り込むと、あとは間桐お得意の蟲たちが体内で子宮として定着する。
     森家との見合いと云いながら、一つ下の妹に話を持ってこない時点で可笑しいと思っていた。
     重種同士で子どもを生した方が重種の子が生まれる確率が高いが、繁殖率は低くなる。
     晋作は蛇の目の重種、妹たちは猫又の半重種。
     半重種はほぼ重種だが、繁殖率の高さ、ゲイミックスの着床率を考えるなら妹たちを娶った方が早い。
     だが重種とはいえ、大臣の秘書官と斑類の中では上の中である高杉家と最高ランクの森家では差がある。
     下手にお家騒動を起こすよりも男で、しかも重種の晋作を孕ませた方が早いと踏んだのだろう
    「けど、そんな一回で出来るかも分からないし……」
    相場の二倍でのブリーリングにおばは興奮するが、晋作のプライドはチョモランマよりも高く蛇の目の習性かシベリア大陸より他者の対する評価は冷たい。
     いい加減帰らないかと晋作が魂を蠢かせようとすると、
    「一度でダメなら何度でも。一億貰ってしかも、種付けして貰えるのだから、ありがたいことよ、なにせあちら、」
    「おばさま、すっかり紅茶が冷めてしまいましたね」
     紅茶を淹れ直そうと母が立ち上がるが、今にも雫が垂れそうな持ち方をしている。
    「玄関はあちらですよ」
    ハブとユキヒョウに睨まれた哀れなパピヨンが悲鳴を上げる。
    「ひっ……」
     上流階級と繋がれると膝を叩いて顔を震わすおばに晋作よりも先に両親が魂現を前に出し始めた。
     斑類は動物の魂が入っているため感情が高ぶればその魂が露わとなる。
     これを「魂現」というのだが、これを普段人前に晒すのは裸を見せるのも同じだ。
     だが同時に威嚇 としても使える。
    「そもそも本当にあの子がブリーリングしたいと云ったのですか」
     魂現を止め、おばに詰め寄った。
    「お見合いと云ってたけど、斑類の見合いなんて繁殖で、待って……!」
     我慢の限界だと母が雫を落とす。猫舌の晋作が飲み干せるほど温くなっているが、圧力のせいでおばは震えている。
    「あちらが見合いと云うなら見合いですよ、晋作、どうする」
    「本当に見合いだけなら、」
    威嚇されるおばが可愛そうだから、という優しさではなく一億払ってでも晋作に会いたいと思う森家の次男に晋作は興味を持った。
     *
    「お竜さんが来てやったぞ、」
    「連れはどうした、」
    「リョーマは接触禁止と云われた、」
     縁談が持ち込まれてからは忙しかった。
     翌日には、蛟のお竜と雄虎最強の武田が揃って高杉の家を訪れた。
     高校教師をしている、坂本の伴侶のお竜は、庶民派だと茶菓子を啄んでいるが、坂本の実家は太い、西の蛟の中ではトップクラスの財力だ。
     なぜ教師をしているのかは不明だが、なんでも幼なじみと就職先を合わせたかったからだと話していたことがあった。
    「独占力の強い奴だ、先に本題に入ろう」
     武田は手触りの良い和紙で書かれた釣書と守り袋を晋作に渡した。
    「本来なら毛利が動くべきなのだろうが、小僧とゆかりのある俺が選ばれた、許せ」
     武田は頭を下げたが、晋作は頭を振った。
     武田に関しては牝の長尾もそうだが、家格は織田や森家と並ぶ。
     晋作はなぜか、二人に可愛がられていたので親戚の兄、姉のように振る舞う。
    「信玄公が謝ることではないはずだ、そもそも」
     今時珍しい釣書を受け取ると、やけに熊臭い袋に目をやる。
    「当日、これを持ってホテルに行くようにと云っていた、」
    「マーキング?」
     牝が他の牡に靡かない手段はいくらでもあるが、殆どが接触しなければ出来ない。
     だからだろうか、会ったことのない森は晋作に自分の香りの付いたものを贈ってきた。
    「だろうな、なぁ高杉喰われる覚悟はあるか」
     お竜がじっと晋作を見る。彼女の真剣な眼差しに晋作はまごつく。
    「逃げるって、どうした見合いだぞ」
     ブリーリングではないとハッキリ云われたわけではないが、上級階級を巻き込むような見合いなのだ、無体はしないはずだ。
    「ああそうだった、」
     お竜はパンと晋作の目の前で手を叩く。
    「……ぁ」
     ガラスが割れた音が耳に響いたかと思えば、遠くで鈴の音が鳴る。
     さざ波のように何かが押し寄せてくるのを感じていると、ふと心地の良い匂いが鼻を擽る。「……香水変えた?」
    「変えてない、アンジは解いてやった」
    アンジとはなんだろうか、まだ微睡みから醒めてないのか瞬きするがお竜は微笑んでいるだけだ。
    「イゾーの読み聞かせの練習でこんな話があったな、確か眠り姫だったか」
     坂本の幼馴染みである岡田はひげ面ではあるが、子どもの扱いは得意なのでそれを生かして、晋作の末の妹が通う幼稚園で働いている。
    「魔法使いが出てきて姫を祝福するがが一人だけ呪って、たしか追放されて林檎を食べるあれ? とにかくハッピーエンドだ、」
     晋作も妹に強請られてよく童話を読んでいるので覚えているが、末の妹のお気に入りは白雪姫なのでもしかしたら話が混じっているかもしれない・
    「そうしないといけない理由があった、お前達も同じだろう」
     茶を啜っていた武田が話に入り込む。
    「お竜さんは頼まれただけだ、あとは好きにしろ」
     帰ると自由気ままなお竜は席を立ち、帰り支度をする。
     艶めかしい黒髪から匂いがするかと思えば、何も感じない。
     武田の香水だろうかと首を傾げていると、武田がテーブルを叩く。
    「俺も帰るとしよう、もしアイツに会ったら気をつけるのだな」
     武田の指先に目線を動かせば、守り袋があった。
     熊臭いと感じていた守り袋を手にのせると甘く何時までも嗅いでいたい香りが鼻に広がる。
    「もしかしてお竜さんはやぶ蛇だったか」
    「さぁ、帰りも乗せていこう」
    「その必要はない、」
    玄関まで二人を案内していると、チャイムが鳴った。
    「高杉なにがし、お久しぶりです、毘沙門天の加護を授けに来ました」
     長尾は挨拶もそこそこに晋作の目の前で手を叩く。
     いくら晋作が猫又のハーフであっても猫だましは効かないと目を瞑っていると長尾が笑う。
    「アンジ切れかかっています?」
    「さっき、お竜さんの分は解除した」
    「ではほころびが出来たのか。まぁいいでしょう、晴信?」
    「今日はこいつを送らないといけないからな」
    「イゾーが迎えに来るから心配するな、」
    「岡田君は来られるのだったら、」
     坂本と岡田は、「先生」と呼ばれる仕事に就いているが、それは表向きの仕事で裏では、斑類のもめ事を解決する坂本が言うには、「探偵」も行っている。

     釣書を貰ったとは云え、書面だけでは人となりが分からないので調査を頼もうとしたが、三人揃って首を振った。
    「やめておいた方が良いと思うぞ、大人しくしてろ」
    「イゾーが動いたらリョーマも動く、お竜さんは反対だ」
    「馬に蹴られたくないですからね」
    「ねぇ、一体どんな人なの」
     晋作の問いかけに皆微妙な笑みを浮かべると、すぐに帰って行った。

    「森長可くんね」
     三人が帰った後、晋作は釣書を開いた。
     微かに残る梅の匂いは墨の香りでかき消された。
     斑類の釣書は血統書のようなで親は勿論、4代前までの婚姻関係が書かれている。
     どこまでも熊が続くので読み飛ばし、達筆に書かれた文字を追っていく。
     年齢は晋作の一つ下、義塾にも帝大付属にも通わずに留学していたのだという。
     そのくせ趣味や資格に、書道や剣道があるのだから面白い。
    「仲良く出来るのか」
     男子高校生同士話題はありそうであるが、縁談で話すような内容はない。
     坂本達のように顔見知りならどうにかなったが、そもそも彼が晋作を求める理由が分からない。
    「ヒグマ? どっちかといえば、グリズリーだろ」
     添えてきた写真はなぜか魂現姿だった。
     面白いと晋作には受けたが、魂現はヌードと一緒なので本来は送るべきモノではない。
     重種の魂現を撮るにはそれなりのカメラが必要なので、本人が送った来たもので間違いない。
     変え魂でないのを証明するためだろうか。
     魂魄を偽ることは斑類にはよくあることだが、それは強者が弱者を演じるときだ、無駄にすり寄ってくる軽種から逃れるため、子どもの頃なら誘拐されないように、軽種や他の斑類を装う。
    「……どうしようか、」
     最重種の子種などいくら払ってでも欲しがる斑類は多くいる
    だが晋作は男で、恋愛感情も今までノーマルだった。
     興味半分で引き受けたがもしかしたら相手を傷つく行為だったかと悩んでいるが、断れば次は妹たちに縁談が持ち込まれるかもしれない。
     それはなんとしてでも避けたい。
    「……匂いだけは好きなんだけどな」
     晋作が知っている森の情報は、ヒグマ、良い匂いがすることだけだ。
     どうなることか考えながら晋作も、森へ送る釣書を用意した。

     縁談前日。
     女性のように煌びやかに着飾るための準備がないとはいえ、縁談ともなると男でもそれなりに支度がいる。
     中学までは斑類の交流会に参加していたが、高校に入ると一気に結婚話を持ちかけられるため勉強を理由に逃げていた。
     それでも、それなりの家柄なのでスーツはある。
     三月なのだから冬仕様ではなく、こざっぱりしたスーツにしたいのだが、蛇の目や蛟といった水中系動物は自律神経が弱く、寒がりで夏でも長袖が手放せない、室温管理もまめに行わなければならない。
     寒がりだけなら良いが暑さにも弱いので、年中生きづらさを感じている。
     蛟でカヌー部顧問の坂本はそれを乗り越えられたが、晋作は蛇の目の特性が強く、また母の猫又の血を引き継いで少々厄介な体質を持ち合わせていた。

     昼間、昼食を兼ねての見合いならそこまで畏まらなくてもいいが礼儀があると、無難な焦げ茶のスーツにすべきか、白のスーツに赤いシャツを加えて春らしさを演出するか、
    どちらが森の好みだろうと選んでいると、晋作の手がピタリと止まった。
     なぜ顔も知らない森のために自分は喜んで準備をしているのだろうかと首を傾げていると、末の妹が眠り姫の絵本を抱えて呼んで欲しいとせがんできた。
     どうせ落ち着かないのだからと膝に乗せて読んでいると、晋作はそのまま寝落ちしてしまった。
     眠り姫の結末は何だったか思い出せないまま晋作は見合いの朝を迎えた

     幾何学的左右対称のテラコッタタイル重厚なホテルの左右を眺める。
     着慣れないスーツを着た晋作よりも深紅のスーツの似合う紳士や愉悦な神父が相応しいが、今日の主役は晋作と、彼を招いた森である。
     入口の噴水から零れる水滴が輝いていると目を向けていると、スタッフが話しかけてきた。「高杉様、上の階で森様がお待ちです」
     スーツは無難な焦げ茶のスーツにした。動くごとに模様が透けて見えるスーツは晋作の髪色と合わさると梅の花のようにも見える。
     釣書の残り香から感じた梅の香りに晋作は森の好ましい香りだと感じ取ったのだ。
    「どうも」
     両親もそばにいるがあくまでメインは晋作だと、今日はあくまでも脇役に徹するようだ。
     昨日まで散々、イヤなら断るってもいい、まだ早いと駄々をこねていた父はどこかブスっとした態度だが仕方がない。
     案内されている間行き交う人々の声がイヤでも耳に入ってくる。
    「この匂い……」
     言いつけ通り持ってきたお守りは相当熊の匂いがするのか、それだけで軽種の斑類は震えている。
    「もしかして、先ほどの」
    「それなら仕方がない」
     親に連れられ、分かりやすくスタッフに案内される晋作はブリーリングに来たとしか思われていないのだろう、ねちっこい視線が纏わり付く。
     早く抜け出したいとぎゅっとつい躯を丸めていると、心地よい香りに包まれる。
     森の匂いだけが晋作の支えであった。

     形式上はお見合いなのだから二階のラウンジで顔合わせをすると思ったが、まさか最上階のすべてを貸し切り、蛇の目の快適温度に空調を合わせ、それでいて暑さに弱い猫又の母にはきちんと専門のスタッフを付けているのだから、相手がどこまで晋作の躰を求めているかが窺えた。
    「待っていたぞ、高杉」
     シャンデリアの輝きよりも眩しいオーラーを放つ美少年が君臨している。
    部屋に入る前から感じる威圧感は彼からだと晋作はふっと詰まっていた息を漏らすと、悟られまいと、笑みを浮かべる。
    「……この部屋、いや見合いのセッティグは君たちの仕業?」
    「うちも少しは動いたが、ほとんど勝蔵」
     ポニーテールを揺らしながら吉法師がざっくばらんに話す
     斑類最強の織田には信長、吉法師、魔王信長と三人いる。
     本人達曰く本当はもっといるようだが、表に出ているのは彼らだけだそうだ。
     吉法師は少年らしく付き合いやすいが、中身はどの信長とも変わらない、底知れぬ何かがある。
     ただ、晋作は同級生だけあって親しみやすい。
    「勝蔵……?」
    「ああ、うちでの呼び名だ気にするな。釣書キチンと読んできたのだな」
    「まあね、人型の写真も添えてくれれば良かったのに」
    「一発勝負したいから送らないと云っていたが、必要だと思って贈った」
    「なんで?」
    「そりゃ、干物になるのはごめんだろう」
     斑類は魂現を表に出さないように躾けられているがそれでも、無防備なときは戻っているときが多い。
     万が一に朝寝を迎えた場合、潰されることを覚悟せねばならないのだ。
    「そう……ところで今日は君だけ」
    「信長は勝蔵を押さえつけている、なんだそのまぁ頑張れ」
     どんな猛獣なんだと晋作が森を想像していると、とにかく会えばわかると吉法師が晋作の肩を叩いた。
    「彼に怒られない?」
     この一週間、父親以外の男と接触を許されなかった晋作が吉法師に訊ねると、そうかもと吉法師はあっけらかんとした態度を取る。
    「それくらい可愛い、よぉ高杉、久しいの」
    「信長公、」
    「こっちに来て大丈夫か」
     部屋の一角にある重い扉から出てきた信長に吉法師が話しかける。
    「あれはもう儂の手には負えん、鬼武蔵だし仕方ないよね」
     今から熊に捕食される魚を見るように晋作を見つめると、美少女の可愛さを最大限に生かした態度を取る。
    「むしろすぐと攫おうとしなかっただけ偉い、男も女も、自分以外に触れさせたくないと云っておったからの」
     ようやく添い遂げられるのだ良かったと軽快に笑う信長に、晋作の父は何か云おうとしたが、口を開く前に息を殺した。
     信長の覇気もあるが、部屋を満たす雄熊の威圧に耐えられないと晋作の母は部屋から抜け出した。

    重い扉が開いた瞬間、蘭の香りに包まれる。
     それは蕩けたバニラアイスが病床にこぼれ落ちたように甘ったるく、胡蝶蘭の鱗粉で視界が遮られるかのように目がかすむ。
     嗅いではいけないと鼻を押さえたくとも本能がそれを求めてしまう。
     躰の中心部は生ぬるく何を咥え込まなければ正気でいられない、そのくせ末端は冷え切り誰かに包み込んで欲しいと泣き叫ぶ
     バラバラになってしまう前に自分を失わないために逃げなくてはと、蹌踉めきながらも踏み出す晋作の腕を誰かが掴んだ。
    「ようやく手に入れた、俺の晋作」
     巨漢を隠しきれないスーツを纏った男が底に立っていたがすぐと紅い毛並みの熊に変わった。
    「あ……」
     金色の瞳が晋作を射貫く。服越しに腕を摑まれだけなのに全身の細胞が戦慄く。
     縋り付きたいと躯を預ければ、彼の心臓の音が心地よい。
     躯を預けている男の顔を見ようと顔を上げれば、男はにっこりと笑っている。
     オートクチュールのスーツの肌触りよりも男の撫でる手の方が数倍も気持ちが良い。
     この男だ、そう思った瞬間晋作は男の躯に絡みついた。

     **
     番を見つけフェロモンや発情期に当てられた斑類がする行為は一つしかない。
     熊樫の凄まじい精力と蛇の目の淫靡な欲情を前に理性など役には立たず、気づけば晋作はベッドで組み敷かれて、破瓜された。
     今思えばよく初めて同士で怪我がなかったと感心すらしたが、悔しいがあの時はまだ長可は成長途中だったのでどうにか繋がれたのである。
     今だったら確実に死んでいたと、あれから三年が過ぎ、ソファーの上で頷きながら伸びた梅重色の髪で遊んでいる晋作の頭を長可が後ろから頭を撫でて、躰を包み込んできた。
     自分と同じ赤毛が顔を擽る。
     あの当時で既に重種特有の長身と筋肉質であったが思春期の少年の成長は凄まじくすくすくと背も彼の分身も成長したが、中身はいまだ未成年らしくこうして甘えたがる。
     擽るのは髪だけか晋作はつい揶揄いたくなった。
    「森君、ちゃんと明日の準備は出来たか、忘れ物はない」
    「森君」は僕だけの呼び名だと晋作はいつか織田の前で自分の独占力を見せつければ、お熱いことでと大笑いしていた。
    「年下扱いするんじゃねぇ、殺すぞ」
     達筆な文字からは想像が出来ないほど長可は若者らしい言葉遣いは乱暴ではあったが、晋作を好きなことは声色で分かる。
    「殺すならベッドの上で、なんてね……ごめん本当に冗談だから、僕、明日一限からなんだ」
     ぐいっと喉元が森の前に晒される。
     殺して欲しいのだろうと獰猛な瞳が晋作の脳を蕩かすが、ここは年上の威厳と父親との約束がある。
     諫められるのもあと何年持つか分からないなと考えていれば、意外にも長可はすんなりと納得した。
    「……それなら仕方がねぇ、週末きっちり殺すから覚悟しておけ、」
    「そういう所だぞ、森君」
     さらりとすごいことを口した長可が更に躰をすり寄せる。
     顔合わせだけだと何も用意していなかった晋作だったが結果的に良かったのかもしれない。あの日、躰に蟲がいると分かれば長可は間違いなく腹の蟲を殺していただろうし、そうでなくても箍が外れていたのだから、間違いなく孕んでいた。
     それでもまだこの行為が種付けだと疑っていなかったぞもぞとベッド上で「勿体ない」と口走った晋作に、長可が首を傾げていた。
     同じ弓道サークルにいる刑部が聞けば「同人誌の鉄板ネタ」というような誤解から始まる恋が始まった。
     長可は最初から晋作が欲しかったのだ。
     部屋の家具やアイテムの中で一際、目立つ「アラハバキ」、晋作が幼い頃に作ったロボット、これが二人が出逢うきっかけだったが、眠り姫のように暗示によって記憶を封印されていた晋作は初夜を迎えるまで思い出すことはなかった
     熊樫特有の執着心が強い長可に周囲が不安になり、いったん留学という形で晋作から物理的に距離を置かせた。
     その生活が思いのほか楽しかったようで中学のカリキュラムはそちらでこなした。
     それでも高校生らしく晋作と楽しく過ごしたいと日本の学校へ編入しようか考えていると、「スクールライフよりもキャンパスライフで同棲してみない」という信長の一声で留学を延長し、去年の秋に高校の資格を取得した。
     おかげで三年生になった現在でも「森、お酒のみに行かない」という大人の誘いに「まだ未成年」という彼渾身のギャグだと思われる事実を口にするハメになっている。
     運命の番であればお金は不要とその代わり二人で過ごす家のお金にしなさいと晋作の父は同棲を認めてた。
     そもそも一億という膨大な金額は、晋作と接触したら最後番ってしまうと、晋作を嫁にしたいと挨拶に来た長可に、「自分で稼げる大人になったら考えましょう」と返したからだ。
     その金額が年収一千万、斑類の重種であれば月収に近い数字だが、学生である長可がまっとうなアルバイトで稼げる金額ではない。
     ブリーリングをすれば一回で片付きそうだが晋作を愛している永吉は誰にも手を付けない。
     これで大学に通う間も接触は無理だろうと晋作が家から離れるのを阻止したつもりでいたが、そこは天下の織田が贔屓にする長可である。
     春まで時間はあると、貯金全部を投資や小遣い代わりに貰った土地を運営し、十倍の一億で晋作の父を黙らせた。
    「そういう所ってどういう意味だよ」
     むっとした表情で長可は晋作の首に腕を回す。
    「羽目を外して、単位を落としてみろ、僕が怒られる」
     ホテルで再会したし熱い抱擁だけでも納得させられたのに、それから三日間部屋に籠もりぱなしでセックスし続けた二人に、単位を落とさないように釘を刺された。
     あれほど親馬鹿だったくせに絆されたのか、押されたのか「年上の晋作がキチンとしなさい」と強く云われてしまった。
    「冷たてぇな、温めてやるから布団に行くぞ」
     ひんやりとした首筋を温めるように長可は優しく躯を包み込む。
    「……絶対に手出すなよ、」
     一緒に住んでいるマンションに寝室は一つしかない
     キチンと学業がこなせているのは長可の忍耐力と晋作の努力の賜物である。
     その忍耐も努力も休日には消えてしまうが、番と暮らしているのだ、信長の言葉を借りれば是非もなし、だ
    「あ、離れて寝ていても寒い寒いってすり寄ってくるのはお前だろ」
    「僕は蛇の目だからね、仕方がない湯たんぽがそう言うのだ寝てやろう」
    しゅるりと長可の躰に纏わり付くと晋作はベッドに連れて行くように命じる。
     熊は気に入ったモノを隠す習性があるのだから、ここは年上らしく攫われても良いのだろうと蛇の目で笑った
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