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    SakuraK_0414

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    SakuraK_0414

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    周防杏くん(@atori_tukune)とばったり出くわした南戸姉弟

    杏の花咲く「えー、うそ、お揃い?」
    「つか双子コーデ?」
    「好きに服着てきてかぶるなんて、あは」
    「ふふ、姉貴笑いすぎ……」
     夏を目前にした午後の繁華街、待ち合わせをしていた南戸姉弟が互いの格好を見てポカンとしてから互いの肩や背を叩きあいながら笑う。伏せた瞼の上で陽を反射してアイシャドウのラメがちらちら光る。
     狙ったわけでもないのに2人そろってトップスはゆったりとしたシルエットのチャイナシャツに、丸いレンズのカラーサングラス。いおりはピンク、いさなはグリーンのレンズ。ボトムスにはタイトミニのスカートを合わせ、対照的にいさなはゆったりとしたシルエットのパンツ。湿度が高いのが気になるようで、いおりは長く波打つ髪を三つ編みにして背にたらしている。その耳元を蓮を模したイヤリングが飾る。いさなの耳元で抽象的なデザインのピアスが笑う仕草に合わせてしゃらしゃらと涼しげな音でゆれた。
    「で、新しいイヤリング探すんだっけ?」
    「イベントに付けていけるあんまり負担にならない……あと可愛い感じの」
     弟の言になるほど、といおりは首を縦に振る。いさなは「海底庭園」という個人サークルで「鯨戸サウス」のハンドルネームで活動する同人作家だ。同人誌即売会にもコンスタントに出ているが、そういう場にもそれなりに着飾っていきたいらしい。
    「ちょうど私もネックレスの類が欲しかったのよね」
     にっこり笑った姉と示し合わせたようにいさなは目的地のアクセサリーショップに向かう。南戸姉弟が行きつけにしているのはセレクトショップやハンドメイド作家の作品を集めた系統の店。華やかな内装の店に入ると、奥の方にいた他の客がふと顔を上げた。青年だった。歳の頃はいさなと同じ、二十歳を少し過ぎたくらい。癖のある赤みがかった茶色い髪が揺れてその合間から花や小鳥をかたどった愛らしいピアスが覗く。その優しげな目と視線が合って、三者が異口同音に「あ」と呟いた。
    「南戸さん、ですよね」
    「周防さん? 鍛冶班の?」
     背の高い女とその連れの男に見覚えがあったのだろう。青年・周防杏が姉弟に歩み寄っておずおずと問いかけた。直接言葉を交わしたことはないが互いに面識はある。
     答えたのは弟のいさなで、軽く目を見張ってから自身の耳のあたりを指し示す。
    「可愛いのつけてるね」
    「あ……ありがと。いおりさんの付き添い?」
     その仕草を真似するようにして愛らしいピアスに指先を触れさせた周防杏ははにかんで姉のいおりに視線を移す。
    「んーん、自分の買いに来た。可愛いの欲しくてさ」
    「俺も何か欲しいなと思って買いに来たんだけど、迷っちゃって」
     優しげな青年の顔立ちが人柄をそのまま表したような穏やかな表情。そして思いついたとばかりにいさなに笑いかけた。
    「そうだ、選ぶの手伝ってくれた嬉しいな」
     その瞬間、パッといさなの顔がほころぶ。
    「じゃあ俺のも選ぶの手伝ってほしい! いま周防さんがつけてるみたいな雰囲気のが欲しくて」
     年も趣味も近い同性は珍しいのだろう。分かりやすく嬉しそうな表情をした弟を見下ろして姉は音もなく微笑する。そのいおりにも青年は柔らかく声をかける。
    「いおりさんもぜひ一緒に」
    「……勿論」
     幼気な子供のような表情をじっと見つめていおりはゆっくり頷いた。
     いさなと並んであれはどうだろう、これなら、と真剣に、けれど楽しそうな弟よりもひとつ年下の青年の横顔を見て南戸いおりは考え込まずにはいられない。
    (彼が鍛冶班って知って驚いたのよねぇ)
     他人から差し出されたものを受け取る時のひどく丁寧な手つき、優しげな手のひらのかたち。他者を気遣うために差し出されるその手。それが妙に目に焼き付いている。あの手が凶器を生み出すのか、と。
     侍課に入って3年、長らく剣から離れていた南戸いおりは無傷でいられなかった。侍課において、武器は他の命を傷つけ殺すために考え出されたもの、という大原則から離れられない。それを振るうものは等しくそれに傷つけられる。それだけでも覚悟が要った。ならば侍課の人間が己の命と身体を預け、その命運を左右しうる刀を打つ者の覚悟はいかほどか。
    (それでも、あの優しい手で作ると決めた? ……どんな覚悟で)
     それを思うといおりは慄きと敬意を覚える。目の前の優しそうな青年に。
     当の杏は、モダンな印象のピアスを耳にあてがいくすぐったそうに笑っている。
    「おお~、こういうのは自分だと選ばないなぁ。いさな君おしゃれだね。どうかな?」
    「似合ってる! これなら派手な色合いの服にも合うと思う」
    「派手……」
     周防杏がおっとりと首をひねると、いさなは少し離れたところに吊られていた服を指さす。
    「ああいう感じかな」
    「なるほど……。あ、いさなくんこれとか似合うんじゃないかな」
    「あ……かわいい!」
     華やいだ声で言って彼が差し出したのはクジラをモチーフにしたピアスだった。小さいが存在感のあるデザインで、それを選んだ彼のセンスの良さがうかがえた。いさなが目を輝かせて少し離れたところで年下たちを見守りつつネックレスを吟味していた姉を振り返った。
    「二人とも似合ってる」
     いおりはそう言って年下たちに笑いかける。何にしたって侍課という決して楽ではない場所に属する者には親しい者がいるに越したことはないのだ。
     揃ってレジに向かった二人はどうやら連絡先の交換をしたらしかった。ついでというわけでもないがいおりもそれに加わり、トークルームにスタンプを送る。
    「俺はこれから用事があるんで……。それじゃあまたね」
     ヒラヒラと手を振る杏を見送り、店の前で別れる。
     その日の夜、いさなは周防杏に選んでもらったピアスを枕元に置いて眠ったとか。
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    SakuraK_0414

    DOODLE365日いつでもバニーを書いてよろしい、と神は仰せになった。なってない。でも今年はウサギ年だし9月はお月見だしそうじゃなくてもバニーを書いて良い。ということで、以前書いたバニーの譲テツ也宮添えの続きです。バニー衣装着るのが恥ずかしくてへにゃへにゃになってる自分の魅力に無自覚な闇医者。
    ちなみにバニースーツ餅つき、というのも二次イラスト的には可愛らしさと色気とポップさがあって良いなと思う。
    You're Bunny.「いや……これは、キツいだろ」
     さすがに、とドクターTETSUこと真田徹郎は独り言ちてそこらへんに置いていたカーディガンを羽織った。誰も見てないとはいえ、さすがにいたたまれない。特注品のバカみたいに大きな衣装一式が自分の体にぴったり沿うように作られているのもいたたまれない。衣装一式の入っていた箱に同封されたパンフレットの中で凄艶に笑うバニースーツを纏った美青年の姿が目に入って、もっといたたまれなくなる。
    (今より30若ければ、とは思いはしねぇが……)
     海千山千、天下の闇医者ドクターテツは危ない橋を渡りもしたし、死にかけたこともある。人生における大概の苦難と規格外の苦難を大方乗り越え、もう並大抵のことでは動じることも無い。
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