Hand of Glory(ビーマ視点) 目を瞠るしか、出来なかった。
見る間に真っ赤に染まっていく芝生、よく熟した柘榴のように割れた顔よりも太い血管が通っている太腿を抑えることを優先したらしい大きな掌。けれどもそんなものでは圧迫止血の足しにもなりはしなくて、見える範囲の肌がどんどん青白くなってゆく。
しらじらと明けかかる夜と朝の境目に似た色をした瞳を赤に埋もれる前に見て、眼球は無事なのかとこの状態にも関わらずほんの少しだけ安堵して、それから右肩に衝撃を感じた。
「退け」
蹌踉めいて、それでも転ぶことは免れる。光を弾く白い髪が、暁の視線を遮った。
世界に音が戻ってくる。
試合終了のホイッスルの余韻、応援席で狂ったように打ち振られていた青と白の旗は、仰向けに倒れたままぴくりとも動かない男の様子を見て取ったのか、徐々に動きを止めて降ろされてゆく。
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