ff14光♂余輩 身を任せていたまどろみからふいに意識が引き上げられ目が覚めた。霞んだ視界に薄暗い部屋が見え、まだはっきりとしない意識の中ここはどこだろうとぼんやり考える。身動ぎをしようとして動けず、腰にまわった逞しい腕に気づいた。そこでようやく昨日の記憶がよみがえってきた。自分にとって大切な人に会いに来たのだ。
意図して大きく息を吸うと愛しい人のにおいがする。それだけのことで胸がいっぱいになる。朝からこんなにしあわせでいいのかと思いながら、体を起こすために彼の腕から抜け出そうともぞもぞと動く。
起こさないように、と慎重にしていたがすぐにその腕に力が入りさらに拘束された。
「……余輩の愛しいナーマよ、どこへいく」
「おはよう、マグナイ」
まだ眠そうな掠れた声が首のあたりで響く。起こしてごめんといいながら腰にまわった腕をそっとなでた。その際古傷のひとつに触れたのかぴくりと腕に力が入る。ぐり、と首のあたりに額がすりつけられた。
「勝手に余輩の前からいなくなることは、ゆるさぬ」
「大丈夫、ちょっと外にいくだけ」
「……何をするんだ」
「日の出をみたいんだ。……もしよければマグナイもいってくれる?」
そう問うと少しだけ腕の力が弱まり、やがてそっと外された。その隙にぐるりと体の向きを変え、マグナイと向き合う。
「いいだろう、余輩とともにこのアジムステップで最も美しい夜明けを迎えることを許そう」
「ありがとう」
「愛しいナーマの願いを聞けぬほど心の狭い男ではないからな」
そう言って微笑むマグナイにつられて微笑む。甘いなと思いながらもそれを煩わしく思わないのだから、自分も彼のことを相当好いているのだろう。まっすぐな気持ちを多少回り道をしながらもしっかり届けてくれる目の前の彼だからこそ好きなのだ。
溢れる愛しさに口元が緩む。それを隠すようにごり、と角を擦り合わせるとマグナイも目を細めながらそれに応えた。
「それじゃ行こう、マグナイ」
「ああ」
夜が明けてしまう、と二人で外に出る。アジムステップの朝は寒い。明けの玉座はただでさえ高いところにあるから夜明けの前の風は体を冷やすのだ。
自分の上着はマグナイが贈ってくれた、ここオロニル族のなかではマグナイしか身に付けていない黒だ。この『色』をもらったときに余輩のナーマは余輩の色を身にまとうことを許す、とか言っていたけれど。
「ふふっ」
「どうした」
「ううん、何でもない」
ただ単におそろいにしたかっただけなんじゃないかなって。