転夢 彼はいつも人に囲まれていた。いつも笑っていて、すごく可愛らしい笑い方をする人なんだなって。そして私はいつからか、その笑顔から目が離せなくなっていた。
今年から転入したから転入生、新入生。そういう風にみんな呼ぶけど、彼の名前を呼ぶのは一部の人に限られていた。だって、彼のことを呼ぶには転入生っていう肩書だけで足りてしまうんだもの。彼の名前を呼ぶのは彼の同級生とフィグ先生くらいだろうか。
別に彼自身が呼ぶなと言っている訳じゃないけれど、なんとなく呼べずにいた。しかも、私はその、彼のことをちょっといいなと思っているので。余計に呼ぶことなんてできそうもなかった。
そんな彼と思いがけず会話をすることになったのは図書室だった。
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