蜜月予行練習(sideS) カラメル状になるまで煮詰められたりんごは、フォークを刺そうとするだけで崩れてしまいそうなほど柔らかい。ひと口サイズに切り分けたタルトタタンをぱくりと頬張ると、ほろ苦くて甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がった。おいしくて幸せで自然と笑みがこぼれる。君とおそろいだね。
こんなにおいしいタルトタタンならひとりで食べてもおいしくいただけるのだろうけど、きっと物足りなさを感じたはずだ。味のうえでも、気持ちのうえでも、満たされなかったはずだ。こんなにおいしいタルトタタンを俺ひとりで食べるのは勿体ない、君にも食べてほしい――そう思ったはずだ。
だから、今日は君と一緒でよかった。
唇の端にヨーグルトソースがついていることに気づかないほど夢中になってタルトタタンをぱくつく君を見られてよかった。おいしいものを食べて幸せでたまらないというふうに目を輝かせる君を見られてよかった。
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