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    fuyukichi

    @fuyu_ha361

    腐った絵を描き貯めとく

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    fuyukichi

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    100日後にくっつくいちじろ60日目


    「二郎君、これ持って行って」

     PM.8:00
    二郎はノルマ分プラスアルファのケーキを売り切り、仕事を終えた。完了報告を兄へ入れていたところ、店長が二郎に箱を手渡した。二郎が数時間、外で販売していたケーキと同じ箱だ。

    「え!いいんすか!」
    「うん、ちょっと形寄っちゃってるやつなんだけど、それでもいいなら」
    「全然いい!やりィー!あざす!」

     うきうきでそれを受け取ると二郎は「クリスマス以外でも年中ヘルプ受け付けてるんで、萬屋ヤマダを今後ともよろしく」頭を下げ帰路に着いた。

    「さみぃ……!」

     流石はクリスマス前の土日。普段から人手の多いイケブクロだが、昨日と今日は信じられないくらいの人間が街へ繰り出している。カップルやら友達グループやらの群衆を掻い潜りながら二郎は最短ルートで自宅へ向かう。途中、通りかかった家電量販店の店頭でシャンメリーの特売をしているのを目撃して足を止める。何故なら、最近、一郎がハマっているアニメ絵柄のラッピングシャンメリーだったからだ。

    「買ってこ」

     二郎は瓶それを景気良く3本も買った。ひとり1本。まあ飲めるだろ。施設でも出た記憶がないし、あんまり飲んだことないけど。去年はコーラだったし、たまにはいいかもしれない。



     帰宅一番乗りは三郎だった。
    シャンメリーを見せると「そんないらないだろ…」と呆れられたが満更でもなさそうで、前に町内会のビンゴ大会で当たってずっと箱のまましまっていた、足のあるワイングラス4個セットを取り出してきて洗い出した。可愛いところあんじゃん、なんて苦笑いしながら風呂を沸かす二郎。

    「兄貴おそいな」
    「一兄は21時までだって言ってただろ」
    「あ、そうだっけ。じゃあ交代で風呂入っちまおうぜ。夕飯はレンチンするだけだし。つかお前もケーキ貰ってきたんか」
    「多分一兄も貰ってくるだろうから、明日までケーキ三昧だね」
    「ひとりワンホール……せめてチョコケーキ、ショートケーキ、チーズケーキとかバラバラなら嬉しいんだけどな」
    「贅沢言うなよ。クリスマスケーキなんて大抵ショートケーキなんだし、好意でもらってるんだし」
    「わァーってるよ」

     二人は口を動かしながらも風呂を沸かし、順番に入浴をテキパキ済ませ、食事の準備を進めた。そうしている間に一郎が帰宅。二人してリビングで出迎えると、兄はなんと両手にケーキを携えて苦笑いしていた。あんぐりと口を開ける弟達。

    「お前ら、もしかしてだけどケーキ貰った……よな?」
    「……ひとりワンホールと、三分の一ノルマですね」
    「ケーキって冷凍できねぇかな?」



     深夜、食事とついでに食後のケーキまで済ませた三人はそれぞれ部屋に落ち着いていた。ちなみにシャンメリーは一郎のテンションを上げ、写真撮影後、一本を三人で分け合って飲んだ。イヴとクリスマスにまた一本ずつ開けようという寸法だ。

     二郎は明日も学校だし、そろそろ寝るかと思っていたが、トイレのために廊下へ出ると兄の部屋から明かりが漏れていることに気づく。昨日も今日は三人とも非常にハードに動いていたが、イヴとクリスマス当日は平日で、二郎も三郎も学校だ。だが、兄は今日と同じくひとりでフル稼働するだろう。大丈夫だろうか。疲れもあるし、外での呼び込みで風邪とか、引かないかしら。二郎はふと心配になって声をかけようとした。しかし、ふと気まずい状況であることを思い出す。ここ二日はなんとなく忘れていたが。……いや、しかし、気まずかろうが何だろうが心配は心配だ。そして二郎は意を決してドアをノックした。

    「あー、兄貴、今ちょっといい?」

     すると、中からバタン、ドタドタ、と何かが落ちたりぶつかったりする音。え、大丈夫?と声をかけると、ゆっくりドアが開いた。しかし思っていた高さに兄の姿がなく、え、と視線を落とすと足元で蹲っている兄がいた。

    「え、どしたの」
    「……スネを、ぶつけた」
    「どこに……」
    「テーブル」
    「だ、大丈夫……?ごめんなんかビックリさせて」
    「いや、平気だ。どした?」

     痛みに歪んだ顔をしつつもなんとか立ち上がった一郎。

    「あー、あのさ、俺達も学校から帰ったら手伝うけど、兄貴、イヴとクリスマスは両方、ひとりで1日フル稼働……?」
    「ああ、その予定だ。何かあったか?」
    「いや、大丈夫かなって……俺、どうにか早く帰れないか先生に聞いてみようか?」
    「バーカ、学生の本分は勉強だろ。気持ちだけ受け取っとくから」

     ありがとな、と頭を撫でようとした一郎の手。しかし、ハッと頭に手を乗せる前に止まる。そして誤魔化すように手を離し、自身の頭をポリポリかいた。

    「二郎も今日は疲れただろ?ほんとありがとな」
    「ううん、どうってことないけど」
    「三郎も今日は疲れ果てて早めに寝ちまったし、お前も夜更かししないで寝ろよ」
    「うん、あの、兄貴」
    「ん?」
    「無理しないでね」

     心配そうに兄を見上げる二郎。一郎は「おう」と嬉しそうに頬を緩めたのだった。


    2024.12.22
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    nummyha

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    ひいさく/ 熱の時は素直になれるよねって話 🍅といる時の💊は八割程が怒って胃を痛めていることの方が多いい。それでも表情は豊かな気がする。昔からの知り合い、同級生だからと言えば仕方がないがオレの前の💊とは全然違う。🍅に対してほんの少しの嫉妬を滲ませる🌸は階段の手摺を掴みながらズルズルとその場に崩れ落ちた。朝から気怠い身体に痛む頭。人に頼る事が苦手な🌸は一人でこの場を乗り切ろうと身体に力をいれるも立つことが叶わず階段で一人蹲ったまま落ち着くのを待った。「🌸……か?」 どのくらいの間この場で蹲っていたのだろうか、そんな🌸を見付けた💊は声を掛け直ぐに傍に駆け寄った。「大丈夫……じゃねぇな。他のやつに心配かけるの嫌だろうが、運ぶぞ」 🌸にひと言そう告げればひょいっと横抱きで🌸の身体を軽々と抱き上げた。💊に抱えられた🌸は意識が朦朧としながらも必死に言葉を紡いだ。「……迷惑かけて……ご……めん」 🌸の言葉に瞳を大きく見開くも驚かせた張本人は既に意識はなくどうしたもんかなと眉根を下げた。意識がない🌸を保健室のベッドに優しく寝かせくしゃりと前髪を撫でれば閉じられていた瞳が薄らと開く「体調悪かったのに気づけなくて悪かったな」「なんで……お前が謝るんだよ」 「オレはお前の恋人だから気づけなかったオレにも落ち度はあるそれだけだ」 自分が何も話さなかったにも関わらず💊は🌸を責めた事は一度もない。そんな💊の優しさにじんわりと涙が滲んでしまえば控えめに袖口を掴み本音を吐き出した。「💊は忙しいから迷惑かけたくなかった……、あと…………その、🍅の前だとなんだかんだ💊は……たのしそうだな……っておもったりもした」 「あ〜〜……なんだ。まぁ、色々言いたいことはあるが忙しくても恋人がしんどい思いするのは違うだろ。それと🍅の件だけどよ。付き合いが長いっつーのもあるが楽しいわけじゃない。でも、🌸にはそう見えて辛い思いさせてたか。これからは気をつける 」「我儘ばっかりで困んねぇの?「恋人に我儘言われて迷惑だって思うやつはいねぇよ。ただ、オレはこの通り言葉にして伝えて貰わねぇと気づかないこともあるからそこだけは頼むわ」「……そっか……良かった 」 💊の想いを聞いた🌸は安心したのか表情を綻ばせ再度眠りについた。そんな🌸の頭部を優しく撫でつけ微笑む💊
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